洒落怖超まとめ

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りんごの味

   

564 sage 2007/12/03(月) 13:55:57 ID:bf7jyCk30

前に霊感主婦の話を書いた者です。
これも彼女の体験。ほのぼのというか、どこか哀しいというか、
そういう話です。

彼女の子が二歳になる少し前、ベビーカーで散歩をしていると
いつも同じ家の前に立っているお婆さんがいたそうだ。
晴れた日はよくそこでひなたぼっこ?をしていたりして
数回見かけていて「こんにちわ」と挨拶しつつ少しずつ立ち話を
するようになった頃、そのお婆さんから
「家の中からリンゴ取ってくるからちょっと待っててね」と言われ、
大きなリンゴを二つ貰ったそうだ。
彼女の子が「ありがとう」と言うと、「良い子だねえ。おばあちゃんて
呼んでみて」と。言われたとおりに「おばーたん」と言われ、大喜びの
お婆さんだったそうだ。

数日後、お礼をしようと頂き物の伊予柑のお裾分けを持っていったが、
インターホンが外されている。玄関も鍵がかかっていたが、
「もしかして、家の中で倒れてるのかも!」と思い、「入りますよー!」
と庭へ回ってみた。


565 sage 2007/12/03(月) 13:56:33 ID:bf7jyCk30

すると、雨戸が開いているが中はもぬけの殻。
誰かが住んでいるという気配がない。
そういえば表札もかかってないし、ポストもよく見たら
ガムテープで口をしめてある。
「もしかして、具合が悪くなってお子さんが引き取ったのかも・・・」
と思ったそうだが、どこか釈然としなかったそうだ。
「住んでいた気配がまるでない」と思ったから。

すると、不審者と思われたwのか、向かいの家の人が出てきて
「どうされたんですか?」と聞かれたそうで。
「この前子供にリンゴをいただいてね、お礼に来たんですけど
何かあったんですか?」と彼女が聞くと、向かいの人は少しだけ変な顔をして。
「ここはもう二年空き家ですよ」と言ったそう。
「えええ? 嘘でしょう? わたしがリンゴを貰ったのって、ついこの前
ですよ、この家の中から持ってきて、家族で食べたんですよ。」
そこまで言うと、その向かいの人は「たまにあるんですよ、そういうこと」
としか言ってくれなかったそうだ。

566 sage 2007/12/03(月) 13:57:07 ID:bf7jyCk30

近所でも通りを挟んで自治会が違うため、自宅のそばの人に聞いても
よくわからなかったそうだが、「二年以上空き家だった」「一人暮らしの
お婆さんがいた」というのは本当らしい。
彼女の夫も、「あそこは空き家だよ」と言い、「だってリンゴ貰ったって
言ったじゃない」と言ったら、「新しい住人が入ったのかと思ったんだよ」と。

「何回も挨拶して、子供が七人もいて、戦後で育てるのも大変だったとか
少しだけお話ししていたあのお婆ちゃんが、幽霊とはとても思えない。」
そう彼女は言う。
「そもそも、幽霊だったらあのリンゴは何?ね、訳わかんないでしょ?」
ていうか、そこそこ霊感持ちなのに全く違和感を感じなかったそうだ。
彼女の子供は凄く愛嬌があって可愛らしく、つい何かあげたくなっちゃう
ような赤ちゃんだったから、お婆さんもつい、出てきてしまったのだろうか?
(ちなみに、今は「毎日かあさん」を笑えないような子供に成長している)

ちなみにリンゴの味ですが。消えることもなく美味しくいただいたそうだ。
「今まであんなに美味しいリンゴを食べたことがないってくらい、美味だった。
みつもたっぷり入ってたし本当に美味しかったよ」と彼女曰く。

その後、一度も会うことは無いらしい。
空き家はまだ残っている。


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