洒落怖超まとめ

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アイスクリームのサービス

   

これは私の父が若い頃に友達から聞いた話です。

 昭和××年4月9日、斉藤一家は父親の仕事の都合で九州のとある団地へ引越しをした。
新しく生活することになる団地でのご近所挨拶も済ませ、
5歳になる息子の洋介を母親である春子は幼稚園バスへ送った。
3ヶ月もすると新居生活にも慣れ、月日はもうすぐ8月を迎えようとする真夏日と
なっていた。

 ちょうど幼稚園も夏休みに入り、洋介は毎日友達と公園へ行ったり、せみ取りをしたりして遊んでいた。
ある日春子は洋介と一緒に公園へ行くと、
公園のそばをバスが通る。そのバスはバスの中で子供を乗せながらアイスクリームを無料で食べさせてくれるサービスをしているそうだ。
ご近所の
奥様達とおしゃべりを楽しんでいた春子は、ちょうどいいから洋介をバスに預けることにした。
洋介やその友達数人もバスに乗り、バスは子供達を
乗せ街中へと走っていった。数時間後、おしゃべりも終わり先に家に帰っていた春子のもとに、おいしそうにアイスクリームを口にくわえながら洋介
が帰ってきた。バスが家まで送ってきてくれたそうだ。それから次の日も、また次の日も洋介はそのアイスクリームバスへ乗りに遊びへ出かけては、
アイスクリームを口にくわえながら帰ってくる日が続いた。
そんなにバスが楽しいのと春子が聞くと、洋介はアイスクリームがおいしいんだと答えた。
よほどおいしいアイスなのだろう。アイスは無料だし、子供の世話を代わりにしてもらった上毎日ちゃんと家まで送り届けてくれるそのバスを便利に
思い、春子はなんの疑問も持たなかった。しかしそれが良くなかったのだろう。
そんなある日、洋介の友達の母親(恵子)が春子のもとへ相談にやっ
てきた。事情を聞くと、アイスクリームバスから帰った子供の様子がおかしいらしい。
夕飯も食べずに毎日毎日アイスクリームばかり食べているのだと
いう。そういえば最近自分の息子もアイスばかり食べていることを思い出した。続く
次の日の朝、恵子が子供を起こそうとするとなぜか子供の姿がない。不安になった恵子は誘拐にでもあったのかと思い、春子や近所の母親達に相談し
たり警察に捜索願いを出した。子供がいたはずの子供部屋は夏場の湿気のせいなのか、大量の水がこぼれたかのように濡れていた以外なんの形跡もなく。
結局それから恵子の子供が見つかることはなかった。それからというもの恵子は悲しみのあまり引きこもってしまった。
しかし子供の失踪事件はそれだけ
では終わらず、その後も近所で数人の子供が行方不明になる事件が相次いだ。
春子が近所で聞いた話だと、失踪した子供は皆例のアイスクリームバスで
毎日遊んでいた子供だったそうだ。怖くなった春子は息子の洋介にあのバスに乗ることをやめさせようとした、しかし洋介はそんなことは聞かず、隙を見て
バスへと乗ってはアイスクリームをほおばりながら帰ってくる。バスの運転手に最近の失踪事件のことを聞くが、運転手は自分達とその事件は無関係だと
主張し、警察もなんの手がかりもなかったためか、バスのサービスをやめさせようとはしなかった。
夏休みも終わりを迎えようとしている頃、とうとう我慢の限界に達した春子は洋介がバスに乗った後でそのバスの中を覗き込んだ。
するとバスの中には大量
のアイスクリームが並べられており、子供達がおいしそうにアイスを食べているのだが、おどろいたことにそのアイスクリームは子供用にしてはサイズがとても
大きく直径一メートルぐらいはあるだろうか、それをみんなでかぶりついているのだ。
恐ろしくなった春子は無理やりバスをとめ、運転手に子供達をおろすよう
に伝えるが、運転手は耳を傾けずに無視してバスを走らせてしまった。また次の日、洋介が友達を家につれてきて仲良く遊んでいる。
今日はバスもこないらしく
安心して春子は買い物へと出かけた。買い物を済ませ帰宅すると、洋介の子供部屋が大量の水がこぼれたかのようにぬれている。
そのそばで洋介は友達とよりそ
いながら座っている。まるでアイスクリームでも食べるかのようにお互いの体をなめながら・・・・
 しだいに異臭が部屋一面に匂いだし、それとともにみるみる息子の体が溶けてゆく、それでも洋介はなめることをやめずになめつづける。
なぜか春子は金縛りに
でもあったかのように動けなくなり、そのありえない光景を見ていることしか出来なかった。
気がついた頃には友達も洋介もアイスクリームのように溶けて消えて
いたそうだ・・・・

 それからはあのアイスクリームバスもやってこなくなり、あのバスの行方は誰にも分からない。

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