- 43 名前:きょうの天気 投稿日:03/03/18 05:57
- 学生時代の友人を訊ねて部屋に泊まらせてもらった時の話。
俺は霊感とか全然無くて、霊とかそういうの何も見えないんだけど、
そいつは霊感ある奴で霊も結構見えるって言ってた。
俺はオカルト話自体は好きだから、一緒の大学に行ってた頃は
そいつの色んな体験が聞けて楽しかった。
そいつのいきつけの店で酒を呑んだ帰り、そいつが
なんだかつけられてる気がする、とか言い出した。
カサカサいう音はしたけど、風が吹いていたし、
俺は枯葉かなんかが立てる音だろうと思って気にしなかった。
そんときは霊が見える奴だってことは忘れてたから。
- 44 名前:きょうの天気 投稿日:03/03/18 05:57
- なんとなく気持ち悪いから、迂回して車通りのある大きい道を通る。
そんなに遠まわりでもなかったから、すぐに友人が住んでるビルに着いた。
そいつの部屋があるのは6階なんで、エレベーターに乗る。
ドアが閉まった後、なんか聞こえたような気がして友人を見た。
そいつもなにか気になる様子で、聞き耳を立てていた。
ウィィィィィンってエレベーターの駆動音に混じって、かすかに
カリカリ、カリカリ……って、なんか引っかくような音がしてたんだよ。
季節が夏なら、虫でも紛れ込んだのかと思ってしまうような
音だったけど、見渡してみてもそんな虫はいない。
- 45 名前:きょうの天気 投稿日:03/03/18 05:57
- その音は、どうも俺達が乗っているエレベーターの上から
聞こえてくるみたいだった。その時ふと思ったのが、
(まるでエレベーターの上に誰かがいて、指で引っかいてるような)
まだその時は、『馬鹿だな俺。嫌な想像しちまったなぁ』くらいの
気持ちでいたんだけど、そのまま二人ともなんとなく黙ってしまった。
引っかくような、その音だけがやけに耳について……
『早く着かないかな』って、階数表示を見ながら思ってた。
きっと俺の友人も同じ事を考えていたと思う。
6階の表示が点いて、ゥゥゥンって響きと軽い逆Gを感じたときは正直ほっとしたよ。
- 46 名前:きょうの天気 投稿日:03/03/18 05:57
- でも扉が開いたと思った、その時
ガンガンガンガンガンッ!
いきなり上の方で、鉄板を思いっきりぶったたく様な音がした。
友人も上を見て『ギョッとした』様子だった。
俺達はもういてもたってもいられなくなって、先を争うように
エレベーターの外に飛び出して、友人の部屋までダッシュ。
あいつも慌ててたんだろうけど、ガチャガチャ言わせるだけで
なかなか鍵が開かない。俺はそいつがドア開けるのを待つ間、
もどかしくてしょうがなかったよ。
俺はそいつの手元とドア、それにエレベーターのある方を順番に見ながらビクビクしてた。
で、扉が開くと中に駆け込んですぐに鍵を掛け直した。
- 48 名前:きょうの天気 投稿日:03/03/18 06:04
- 慌てて靴を脱いで、そいつの部屋の中まで直行。
「なぁ、なんだったんだアレ?」って聞くと、
「さぁな」ってつれない返事をしやがる。
でも俺は気になるからそのまま話しつづけた。
「まさか誰かエレベーターの点検員とかが居たんじゃ?」
「何言ってんだよ、こんな夜中に居るわけないだろ」
「助けを呼んでたのかも」
そしたらそいつ、突然
「んなわけねーよッ!!」って怒鳴ったんだ。
俺がびっくりして返事できないでいると、
なんかブツブツ言った後、
「……声かけてこなかったじゃないか。 おかしいだろ!?」
「え? あ、そか。 普通なら助けてくれとか言うよな……」
俺はそいつの迫力にしどろもどろになっちまって、そのままなんとなく話が途切れてしまった。
- 49 名前:きょうの天気 投稿日:03/03/18 06:04
- 音が無いと恐いから、見るわけでもなくTVをつけっぱなしにして
しばらく二人でぼーっとしてた。なんか放心状態。
そしたら、そいつがいきなり話し出した。
「いきなり怒鳴って悪かった」
「え、イヤ、良いって。 気にすんな」
驚いた事は確かだけど、別に俺は腹を立てたりはしてなかった。
さっきの、そいつの様子があんまりマジっぽかったから……
「……オマエ見えないんだもんな」
「え?」って、ワケがワカラン様子の俺にそいつが
ボソリとつぶやいたんだ。
「天井から血まみれの脚がぶら下がってたんだ」