洒落怖超まとめ

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エレベーター

   

462 本当にあった怖い名無し sage 2005/04/18(月) 23:39:45 ID:8RznvW5n0
俺の通ってた大学の研究棟にあるエレベーターはやたら古くて、しかも整備がなってなかった。
電灯はいつから換えてないのか、細かく明滅を繰り返してて目が悪くなりそうだった。
8階まである押しボタンは、タバコを押し付けられたらしくて、歪にとけてた。
エレベーターの壁も落書きだらけ。
下ネタ単語を書いただけの奴もあれば、昔懐かしい相合傘や罵倒の言葉もあった。
入って正面には大きな姿見が付いていたけど、茶色く変色していて誰も使わなかったなぁ。
しかもエレベーター内は、どこかのアホが小便でもしたのか知らないが目茶苦茶臭かった。
だからこのエレベーターを使うのは1階から8階に行く時とか、
重い荷物を運ぶ時だけってのが、暗黙のルールみたいになってたんだわ。
知らない一年生なんかが乗るのを見ると、と心の中で「あ~あ、ご愁傷様」なんて思ったもんだったよ。
俺は大学時代は理工系の物質についてを勉強してて、卒業研究も物質系統だった。
何も知らない奴が物資研究、なんて聞くとカッコいいと感じるらしい(俺の友人の場合は)が、
実際は機械任せで物凄く時間ばかり掛かり、しかも目を離せないと言うのが現状のキツイ研究だ。
その時は金属を特別な顕微鏡で観察するために、丸い金属塊を板状に切る作業をしなければならなかった。
それは件のエレベーターで8階に行ったうえで、8時間ほど掛かる作業だったから俺は急性鬱になったね。
俺は体育会系と言う訳でもないけど、体力は結構あるほうだったんだ。
だから臭いエレベーターで行くよりも軽い運動がてらダッシュで8階まで上った。
気分をリフレッシュしないと8時間もやってられないからっつー理由もあったけど。
そもそも、研究棟8階に訪れる人は少ない。
8階はその金属カッターのある部屋を除いて、ほとんどが物置部屋と化してるからだ。
事実、その時だって俺以外には人の気配なんて全然無かったね。

463 本当にあった怖い名無し sage 2005/04/18(月) 23:40:28 ID:8RznvW5n0
まぁ、ともかく金属加工を済ませるべく俺は金属カッターの部屋に入った。
金属カッターにプログラム入力をしたら、あとはただ見張ってりゃいいだけだった。
いいだけなんだけど、さっき書いたようにそれが8時間も掛かる。
プログラムを終えた時にはもう6時廻ってたから、終わるのは単純計算で夜中の2時頃になる訳だ。
完璧に終電終わってて、徹夜確定コースだった。
友達を呼ぼうかとも思ったんだけど、そう言う時に限って全員早上がり。
かくして俺の一人徹夜我慢大会が始まった訳だ。
金属カッターはプログラムさえすれば何もしないでもいいんだが、
もしもの時の安全対策に長時間離れるのは禁止されている。
逆を言えば離れなきゃ何してたっていいっつー事。
俺は早速、事前に持ち込んでおいた漫画を読みふけったよ。
まぁ夜食(コンビニ弁当)食ったり、携帯いじったり、また漫画の続き読んだり。
そんなこんなで、ようやっと作業終了を告げる機械音がなってくれた。
時計を確認したら、予想時間よりチョットだけ遅くて2時10分過ぎ。
どうせ大学で寝る事を決めてた俺には、10分遅かろうが速かろうが大差ない事だったけどね。
金属カッターを停止、掃除してその日の全工程が終了。
どうせ寝るなら良い場所で寝たいと思った俺は、仮眠室に向かうべくエレベーターに乗りこんだ。
もう1回携帯の時計を見たら2時30分で、掃除に手間取っちまったなぁと思ったよ。
それから、相変わらずの電灯の明滅と酷い悪臭に気持ち悪くなりながら1階ボタンを押したんだ。
さっき書かなかったけど、エレベーターの扉はガラス張りで向こう側が見えるようになってる。
例によって薄汚れててあんまし見えないんだけどね。

464 本当にあった怖い名無し sage 2005/04/18(月) 23:41:50 ID:8RznvW5n0
独特の音を立てながらエレベーターがゆっくり下り始めた。
7階6階と階が変わるたびに、窓越しに廊下が見える。
8階だけじゃなくて、この棟全体でも俺しか居ないのかもしれないと思った。
廊下は真っ暗で、人の気配もやっぱ全然しなかったから。
そんなことを思いながらエレベーターは動いてく。
んで5階を通り過ぎて4階にきた時、妙な事が起こった。
エレベーターが止まって、ドアが開いたんだ。
もちろん人は居ない。
もしかして近くに居るのかと思って、顔を出して周りを見ても誰も居ない。
怪訝に思いながらドアを閉めると、エレベーターが下降を始めた。
そんで、俺はボンヤリとエレベーター扉のガラスを見ていた。
あーやっぱ誰も居ない、真っ暗だなぁとか思いながらね。
夜のエレベーターのガラスは、外が暗いせいでまるで鏡みたいになっている。
そしてふと気付いたんだ。
誓って言う。
間違いなく誰も居ないエレベーターに乗り込んで、間違いなく誰も乗ってこなかった。
けど、ガラス鏡の中に、確かにボサボサ頭の長い髪の女が、後ろを向いて立ってたんだ。
俺は振り返る事も、動く事も出来ずにただ1階が来るのを待ってたよ。
その日は無理言って友人の家に転がり込んだ。
翌日、この事を話したけど全然信じてもらえなかった。
その時友人に言われた事を、今もはっきり覚えてる。

「だってあのエレベーター、1ヶ月前から故障中で動かないだろ」

俺があの時に見た女は何だったのか、
俺があの時乗ったエレベーターは何だったのか。
今も分からない。

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