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ハッキング

   

542本当にあった怖い名無し sage 2009/10/08(木) 17:21:37 ID:ILEDbse9O

俺のバイト先の同僚で、自分自身のことは棚に上げて、悪口を言うような人間がいた。
屁理屈ばっかこねる面倒臭い奴だった。
夏の終わり頃に、その同僚は口数が減り、沈んだ顔で勤務するようになった。季節の変わり目で体調を崩したのか、と俺は思ったんだが話を聞くに違うようだった。
「ハッキングされた」
彼の趣味はネットで、色んな掲示板を巡っていたらしい。その際にハッキングされて、監視を受けるようになったと言っていた。ネットで調べた対応策を講じても無駄だったらしい。
「メール攻撃だけじゃない。俺が行くサイト全てに奴がいて、俺に向けて書き込みをしてくるんだ」
俺はそのメールを見せて貰ったが、記号や文字が不規則に羅列されているのみだった。俺はどうせ彼の悪戯だと思って話半分に聞いていた。
それから数日が過ぎた辺りで彼が俺に話しかけてきた。
「原因を見つけた」
そう言った彼は俺に、プリントアウトされた変な画像を見せてきた。黒い背景に紫色の球体が浮かんでいる絵。
「絵の創作スレッドでこの画像をアップした奴を貶した時期と、ハッキングを受けた時期が重なるんだ」
そう話す彼の顔がみるみる青くなっていった。
「そして、この画像をダウンロード

543本当にあった怖い名無し sage 2009/10/08(木) 17:22:32 ID:ILEDbse9O

俺は彼に、自業自得だ、とだけ言った。彼は気が滅入っていたのか素直に頷いた。
その後、彼はPCを初期化すると同時にネットを解約したと言ったきり、この話題を持ち出すことは無かった。
そして数週間後、彼はバイトに来なくなった。店長は何度も彼に連絡したが、応答が無かったらしい。無断退職はよくあることだったので、店長は特に気にすることなく、穴を埋めるために募集をかけるだけだった。
俺はというと、ハッキングの件もあって少し彼が気になっていた。俺は店長から、様子を見てくるという名目で彼の住所を聞き、仕事帰りに彼の家に立ち寄った。
アパートの二階に位置していた彼の部屋からは明かりが漏れていた。俺は何度か呼び鈴を押し、ドアを叩いたが彼は出て来なかった。嫌な予感がしたのでドアノブに手をかけると、それは回った。
俺は恐る恐る中に入ったが、目の前の光景に絶句して後退りしてしまった。
部屋は紫色と黒で埋め尽くされていた。
ペンキで描かれた無数の紫色の円形の上に黒がぶちまけられていた。部屋の中央部にはPCが置いてあり、アイコンからタスクバーに至るまで全てが紫の円と黒で構成されているのが見えた。
部屋に散らばっているコピー用紙にも紫と黒が、彼の手によって描かれていた。彼は部屋の隅で突っ伏していた。彼の皮膚も紫色で黒ずんでいて、とても生きているようには見えなかった。
彼は死に際も絵を描いていたようで、手元にはペンと紙があった。だが、最後に描いた絵には何故か紫の球体が描かれていなかった。黒く塗りつぶされただけに見えるその絵に、彼が何を描いたのかは解らない。

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