出ていく親父
383 とろ ◆F1BlU8YIys sage 04/12/08 22:40:59 ID:jmcCT1ux
そんなに珍しい話じゃないが、俺には父親がいない。
と言っても、顔も覚えてないってわけじゃない。出ていく所を母親と一緒に見守ってたのが最後。5歳の頃だったと思う。
玄関に立っている俺と母には目もくれず、ただ背中を向けて黙々と靴のひもを結ぶ父。
出ていく時も、こちらを向くことはおろか声さえ発しなかった。
当時俺は5歳。普段父が出ていく所を滅多に見ない俺は母に聞いた。
「ねぇ、パパ何で出てったの?」
…母は泣いてた。もう誰もいない玄関を見つめながら。
そして確かにこう言った。
「あの人はね…、人殺しなのよ…」
あの母の言葉が今でも頭に焼き付いて離れない。