洒落怖超まとめ

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帰り道

   

890 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/04/26 00:54
僕が小さかった時、両親と何処かへ出掛けて帰る時の事でした。
何故か、その時何処へ行って来た帰りなのか覚えておらず、今は父が他界し
母は元気ですが、僕は一人暮しをして居る事から、その事を聞く機会を逸してしまいました。
本題に戻りますが、その日は丁度ゴールデンウィークの終りで、帰宅の途に
着く車で家へと急く心とは裏腹に、車は遅々として進みませんでした。
父が苛立たしげに「ちっ」と舌打ちした事と、その時フロントガラスにぽた
ぽたと雨が一滴二滴当たった事だけは、18年経った今でもその光景だけが、
切り取られた断片であるかのように、はっきりと鮮明に脳裏に焼き付いています。

どういうやり取りがあったのか分かりませんが、どうやら混雑している国道
を避け、未舗装の裏道を通る事になったようでした。
僕は疲れてうとうととして来たときに、がたん、がたんと揺れる振動とがし
ゅ、がしゅという定期的な音を立て続けるワイパーの音で目覚めた時は既に、
真っ暗な山道のようなところを走っていて、眠る前には前後に沢山あった車
が一台も見当たらない事に、子供心ながら不思議な気持ちと共に…心細かった事も覚えています。

891 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/04/26 00:55
その道を走り続け、どのくらい経ったかは分かりません。
ただ、後ろから覗き見た母と父の表情が少々強張っていた事と、車内のぴり
ぴりとした雰囲気を僕は察し、母に「眠い」と言いました。
母はただ一言。

「目を瞑っていなさい」

とだけ言いました。
何時もは明るく朗らかな母の声が微かに震え、父は睨み付けるような表情で雨の帳の向うを凝視していました。
此処で、両親と色々なやり取りがあったと思うのですが、残念ながら良く覚えていません。
眠かったのと、ぴりぴりした雰囲気が嫌で、僕は結局後部座席に身を投げだし、ぎゅっと目を瞑りましたが眠れません。
雨の音に混じり、「やばいな」「どうしよう○○さん(父の名です。)、どう
しよう」「南無阿弥陀仏」等々の両親の話が耳に入りました。
目を開けようとすると、どうして分かったのか父が「寝なさい!」と強い口
調で僕に言い、僕は仕方が無いので目を瞑り眠った振りをしていました。

何だか、凄く時間が経った気がしたのですが、同じ道を延々と走り続けてい
たような気がして、両親にばれないように、薄目を開け、フロントガラスの
先のヘッドライトに照らされている木々に目を向けた時。
そこに髪の毛が長い、女性が立っていました。
虫の知らせでしょうか。
その女性の事を幽霊というか、言ってはいけないものと直感していたのが今でも不思議です。

892 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/04/26 00:55
真っ青になり、震える手でハンドルを握りながらも、父は只管に道を走り続けました。
数分くらい走った時、前方に白いものが見えました。
それは、数分前に見た女性、その同じ人が同じように雨に濡れ、こちらの車を瞬きもせぬまま、見つめていました。
そして、行けども行けども、その女性は車の先を越すかのように、何度も何度も同じ姿で立ち尽くしています。

僕は我慢出来なくなり、目を開けて母に抱き付きました。
確か、酷く泣いた覚えがあります。
僕が泣き付いたのと期を一にして、前方に立つ女性がとても優しい笑みを浮かべました。
父がその時、何を思ったのかは今はしる由もありません。
ただ、突然急ブレーキをかけた事、そして車の先にぽっかりと奈落のような
崖が黒々としたその口を開けていました。
「橋梁工事中」確か、大意はこんなような標識が立っていたのと、その奈落
の下から河のように水が流れる音が聞こえていました。
これだけですが、後は何も覚えていません。
その女性はふっと消える瞬間、父を何故か指差して責めるような表情を浮か
べている光景が、覚えている最後の光景です。

父はその後、3年経って交通事故で他界しました。

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