洒落怖超まとめ

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思い出の彼女

   

8その1 2008/02/08(金) 13:24:58 ID:dWJYwYNk0

俺が大学三年の三月だった頃。
ある日、バイトが終わり、帰り際に携帯を見ると、着信が一件あることに気付いた。
発信者は、中学時代クラスメイトだった女の子。
折り返し電話をかけると、「久しぶりに話したいことがある。今から会えないか?」とのこと。
時刻は九時半をまわったところで、こちらとしては特に断る理由がない。
何より、昔俺は彼女の事が好きだったのだから……。
運良く、そのバイト先から彼女の家までは100mも離れていない。
適当に近場で落ち合い、すぐ近くの居酒屋に入って話をした。

彼女は短大を卒業し、立派な社会人として歩んでいること。
四月からは異動で関西の方へ行くこと。
そして、異動する前に、こうして地元の友人と昔を懐かしみながら飲み交わしているらしい。
俺は昔話ついでに、中学時代に彼女の事が好きだったことを伝えた。
もっとも、その事は彼女も気付いていたらしい。
いずれにせよ、その時彼女は別の男と付き合っていたのだから俺の入り込む余地などなかったのだ。
それに、俺には大学で知り合った恋人ができていたのだ。
色恋沙汰でも、昔の事はこうやって笑いあえるものだと実感した。

話は変わりに変わり、幽霊がいるかいないかという議論になった。
根っからの理系肌だった俺は、幽霊の存在を一括否定。
一方、彼女は霊感があるらしく、幽霊の存在を強固に主張。
俺は、今までTV等で見てきたものは、全て現在の科学力で実現可能なのだから、幽霊がいる証拠にはならないと主張し
「実際にこの目で見せてもらわないと、検証の余地はないけどね……」
と言ったところで、彼女の心に火をつけた。
「じゃあ、見せてあげるから行こう!」
という事で、俺達は心霊スポットへ行くことになった。

9その2 2008/02/08(金) 13:25:19 ID:dWJYwYNk0

地元は九州の福岡。
心霊スポットとして超有名な犬○峠へ行くには車で30分もかからない場所に住んでいる。
俺は彼女の車の助手席に乗り、運転する彼女と適当に会話を交わしていた。
俺は結構酒が入っていたせいか(ちなみに、彼女は下戸なので飲んでない)、往き道なんか全く覚えていない。
とりあえず、気付いたらラブホテルの入り口に居たことだけは確かだ。
あれ? 犬○に行くんじゃないのか……? などと思っていると、彼女はさっさと車から出てホテルの中へ入っていく。
俺も車の中に残っていてもしょうがないので、彼女についていくしかない。
彼女は勝手に部屋を決めて、俺を半ば強引に部屋に入れ、ベッドに放り投げる。
「じゃあ、先にシャワー浴びるね」
とだけ言い残し、彼女はバスルームへと入っていく。
よくわからんが、そういうことだろうと、ニブイ俺でも何となく頷けた。
要は、適当な相手を見繕って、幽霊を見せると言うことを口実に連れ出して、情事にふける。
中学時代に彼女に好意を寄せていた俺が相手ならば、後々悪いことにはなるまい。
昔は大人しそうな雰囲気だったが、今となってはギャルっぽくなってるし。
そういう考えなのだろうと思っていた。

俺は一緒にバスルームに入ろうかとも一瞬思ったが、大人しくテレビをみていることにする。
しばらくすると、彼女が勢いよくバスルームからでてきた。
何事かと振り向き、彼女の方を確認する。
彼女は体もろくに拭いておらず、バスタオルで体をくるんだ状態で、そのままの勢いで俺にしがみついてきた。
当然、状況を把握できずに焦る俺。
彼女は、顔を伏せたまま、部屋とバスルームを繋ぐ扉の方を指さして小さな声で
「あそこに……赤い服を着た女の子が……」
と言った。
俺は指を指す方を見るも、笑いながら
「そうやって、幽霊がいるいる、って思ってるから見えるんだよ。気でも紛れれば見えなくなるよ」
と言い、TVの音量を上げ、彼女の体をシーツで拭いてあげたり、頭を撫でてあげる。

俺は、あの時のセリフを震えずに言えていたのか、自信はない。
だって、確かにその扉の陰には、赤い服を着た女の子がいたのだから。

158と9の後日談 2008/02/08(金) 14:07:52 ID:dWJYwYNk0

彼女の頭を撫でていると、しばらくして彼女は寝てしまった。
何度かチラ見して幽霊の姿を確認するも、幽霊自身に動く気配はない。
幽霊の子の髪は長く、目が隠れており、口元は若干笑っているようにも見受けられる。
タオルか何かの見間違いかと思ったが、やはり何度見ても人の形にしか見えない。
確認しようと幽霊の方へ向かいたかったが、体を動かして彼女を起こしてしまうのも気が引ける。
何せ、「幽霊なんかいない」発言をした手前、確認してやっぱり幽霊だったら立つ瀬がない。
まぁ、俺自身若干怖いのもあったんだが。

そうこうしていると、うつらうつらしてきて、結局俺も座ったまま寝てしまった。
彼女に起こされたのが、朝の六時頃。
その頃には、幽霊の姿は消えて無くなっていた。
その扉周辺を確認するも、やはり人間に見えそうな物がどこにも無い。
彼女はホテルを出る前にやるかどうか尋ねてきたが、俺は断った。
昨夜のノリだったら、酔った勢いでやっていただろうが、
朝になって醒めたらやっぱり現恋人に申し訳が立たない気持ちが出てくる。

帰りの車の中、実は俺にも見えていた事を彼女に伝えた。
彼女は元彼(それこそ、中学時代に付き合っていた男)とあのホテルに入り、幽霊を目撃したのが最初だったとの事。
その時、男は逃げだし、それが原因で(他にも要因はあるみたいだったが)別れたらしい。
あの時の彼氏が、○○君(俺)だったら……みたいな思わせぶりなセリフも吐かれたが、今となってはどうしようもない。

結局、彼女とはそれ以後会っていない。
おそらく、関西の方で新しい彼氏でも作ってるとは思うが……。

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