洒落怖超まとめ

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戦友の部屋で

   

戦時中の話ですが、海軍の軍人さんが戦死した友人の家を訪ねた時のこと。
故人の家族と色々生前の話で盛り上がり、是非泊まっていってほしいということになりました。
旅館をとっていたのですが、是非にということなので甘えることになったそうです。
案内されたのは戦友の部屋でした。

 夜中ふと目を覚ますと、体が動きません。
おかしいな、と思い体の各部を動かしてみたところ、首だけが動きました。
首を回してみると、部屋の隅に人影がありました。
暗闇の中に、白無垢を着た若い女性が座っているのです。
しかも、布団がもう一組敷いてあるのです。

 声をかけようとしましたが声が出ません。
うつむいているので彼女の表情もよく分からないのです。
それでも、自分の方をじっと見つめているのは分かります。

 なんとか体を動かそう、声を出そうと頑張っているうちに、疲れたのかまた眠ってしまいました。

 翌朝目覚めると女性はおらず、敷いてあった布団はきれいに畳まれていました。
起き出して家人にそのことを告げると、布団は一組しか敷いていないとのことでした。
部屋に戻って布団を見せ、女性の話をしました。
すると家族は蒼ざめて、戦友に許婚がいたことを話してくれました。
二人は出征直前に結婚するはずでしたが、戦友は
「どうせ死に行く身が、未亡人を残すだけだ」
と祝言前日に家を出てそのまま従軍したのだそうです。
 残された女性は元々体が弱かったこともあり、ショックで病がちになり、程なく死んだのだ、とのことでした。
そして、遺言により、白無垢を着せられ、戦友の写真を抱いて葬られたとのことでした。

同じ海軍の軍服だったから、あなたの側にいて息子の面影を偲ぼうとしたのでしょうか、と家人は言ったそうです。

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