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手袋

   

979 名前: 『手袋』1 2006/08/30(水) 00:02:40 ID:ouZ+ctOU0
前回の反省を生かし、百物語風にまとめなおしてみました。

(´・ω・`)さあ、百物語の時間だ。二つ目の怪談は…「手袋」。
無機質なゴム手袋を外さない転校生…終わりなき永遠の螺旋階段…
では…始めようか。

夏も終わって秋がやってきた。今日から二学期ということで、少年…仮にAくんとしよう。少年は、どことなく楽しげな足取りで学校へ向かった。
遅刻寸前で教室に飛び込む。席に着くなりチャイムが鳴り、Aくんはほっとした表情で担任が来るのを待った。
ほどなくして担任が教室に入ってきた…後ろに、一人の少年を引き連れて。
担「今日から、皆さんに新しい仲間が増えます。」
どうやら転校生のようだ。担任が簡単な紹介をして、少年に席へつくよう促した。
ふとAくんは、彼の手に目が行った。…妙に違和感があると思っていたら、彼は薄いゴム手袋をつけていたのである。
それについては何も説明がなされぬまま、朝のホームルームが始まった。

転校生は、どことなく地味な少年だった。あまり会話にも乗ってこない、物静かな少年。
多感な中学生の中にあっては、そんな少年は総じていじめにあいやすい。転校生も、その類に漏れなかった。
ある日の休み時間、本を読んでいたところを、いじめっ子のBとCに無理矢理立たされた。
B「おい!お前いつも何俺たちのことシカトしてんだよ!」
転「…」
C「黙ってんじゃねえよ!ていうか人と喋ってるときぐらい、その手袋外せよ!」
いじめっ子の一人であったCが、転校生の手袋を外そうと手袋を掴んだ。と、その刹那。
転「…やめろよ!」
いつもは大人しい転校生が、突然声を荒げた。場が静まり返り、Cも鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。
転校生はそのまま席に座り、何事もなかったかのように本を読み始めた。
Aくんは、再び気になってきた。何故転校生はあんな手袋をずっとつけているのだろう…と。

980 名前: 『手袋』2 2006/08/30(水) 00:03:29 ID:ouZ+ctOU0
その日の帰り道、Aくんは転校生に一緒に帰ろうと持ちかけた。最初は断られたものの、なんとか一緒に下校することに成功した。
A「その…転校してきたばっかりなのに…苛められたりして、大変だな。」
転「そうでもないよ。」
A「なんかあったら相談しろよ?」
転「…うん。」
帰り道、当たり障りのない会話をしていたものの、結局手袋のことは聞きそびれてしまった。
転「僕の家、ここだから…」
A「あ、ああ。そうなのか。じゃ、またな!」
その日から、二人はいつも一緒に下校することとなる。ただ、Aくんはいつも結局手袋のことを聞けぬままであった。

月日はゆっくりと流れ、Aくんと転校生の二人は段々と打ち解けていき、親友と呼べる仲になった。
気がつけば、聞けないままだった手袋のことなど、もはや忘れ去っているほどに。
やっとBやCもいじめに飽き、転校生にもぽつぽつと友達ができ始めた。その頃であった。
…修学旅行。中学校生活最大のイベントである、それの季節がやってきた。
偶然にも、くじびきで決めた班で、Aくんと転校生は同じ班になった。
目的地に向かうバスの中、隣通しで笑いながら喋っているとき、Aくんはふと思い出した。
A(そういえば、こいつの手袋の話…結局聞いてなかったな。まあ、いいけど。)
バスは、旅館に着いた。

観光の疲れもあって、風呂から上がってすぐに寝息を立て始める班員たち。転校生についてもそれは同じであった。
ただAくんは、ふとした悪戯心で…転校生の手袋を外そうと考えていた。
A(…もう寝たよな?…よーっし…)
Aくんは、そっと転校生に近づく。そして布団をめくり、やはり寝ている間も付けたままだった手袋にそっと手を伸ばす。
そして…躊躇いなく、それを外した。
A「うわっ!!」
…Aくんは、思わず悲鳴を上げていた。手袋の内側には…見るも痛々しい"痣"があったのだ。
その悲鳴に気付いたのか、転校生はゆっくりと目を開いた。そして…ガバッと飛び起き、外された手袋を見た。

981 名前: 『手袋』3 2006/08/30(水) 00:04:24 ID:ouZ+ctOU0
Aくんは、謝ろうとしたのだが…転校生がそれを制した。
転「…触っちゃったんだね。」
Aくんは、もう一度謝ろうと口を開いたが…今度は声が出なかった。
…転校生が、己の首を突然両手で掴んだ。そして…ゆっくりと絞め始めたのだ。
転「もう、ダメだよ。僕が痣を触ってしまった人も、僕の目の前で死んでしまった。」
ゆっくりと、その手に力がこもっていくことがわかる。ギリギリ…と音が聞こえてくる。
転「自分の意思なのか、何か得体の知れない者の意思なのか…わからないけど。」
そこで少年の台詞は途切れた。もはや声が出ないのだろう。Aくんは、目の前の少年を助けることもできずに…がたがたと震えていた。
そのうち少年は目を閉じ、ばたりと床に崩れ落ちた。放心状態のAくんは、少年から目をそらすこともせず…ただただ眼を見開いていた。

ところで、まだAくんは気付いていない。自分の右手の甲、丸く浮き上がった不気味な痣に…

(´・ω・`)その後のAくんの行方を知る者はいない…精神病院に入ったという噂もあるが、真偽の程は…
ただ一つだけ言えることは…彼もまた、"手袋"をはめているであろうこと。
不用意に他者の秘密を暴かないように…待ち受ける結末は…"死"そのものかもしれないのだから…

さっきのより短くしましたが、わかりにくくなってしまったでしょうか?では、終わります。

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