本家
302本当にあった怖い名無し sage 2007/08/03(金) 17:01:15 ID:7LXXYI4Q0
高校入学まもなくのこと。
国語の授業中に苗字の話になった。
「苗字で出身地がだいたいわかる」とか
「明治以前、どんな仕事をしていたかが苗字によってわかることもある」とかそんな話を先生がしていた。
俺の苗字はきわめて安易につけられたようなもので、その地域によくあるものだ。(仮に「ジャクソン」とする。日本の苗字使うと問題ありそうだからコレでw)
俺は入学したてにもかかわらず、なぜかその先生と仲がよかった。そのため、先生がふざけて俺の苗字をバカにしたのよ。
「ジャクソンなんて、ほんと安易なつけ方だよなぁ。しかもここいらはジャクソンだらけじゃねーかw」
明らかに先生がふざけているのがわかったので、俺もふざけて
「何言ってるんですか。ジャクソンは昔からある由緒正しい姓ですよw。しかもうちはジャクソンの中のジャクソン、いわばジャクソンの本家ですよw」
教室にいた誰もが笑ってた。みんな冗談だってわかっていたから。
303本当にあった怖い名無し sage 2007/08/03(金) 17:02:55 ID:7LXXYI4Q0
その授業があった次の日のこと。家に帰ったら、母親が怪訝な顔をして聞いてきた。
「あんた、学校で何か変なこと言った?」
「いや、特に言ってないけど…」
「あんたのクラスに同じ苗字の子いる?」
「あ~、いるな。それがどうかしたの?」
「その子の母親から電話があったのよ。
『御宅はジャクソンの本家なんですか?
お子さんが学校で言っていたそうなんですが、』って」
「マジで?…。国語の授業中に苗字の話になったんで、
ふざけて言ったけど…」
「冗談でもそういうことを言うのはやめなさい。
その子の母親が『我々はジャクソンの本家を探してます。
冗談だとは思ったんですが、もしやと思って電話してみました。
もし、本家の情報をお持ちでしたら教えてください』
って言ってきたのよ。ちょっと怖いんだけど」
「……わかった。冗談でもやめとく。しかし、世の中にはいろんな人がいるもんだねぇ」
同じクラスのジャクソン君は、とっても真面目な感じ(というか暗~い感じ)のヤツで、仲良しグループも違ったので、まったく話をしたことがない。といっても、わざわざ親に電話をかけさせるなんて、おかしいだろ。国語の授業の後、直接俺に聞けばいいのに。
母親とふたり、なんともいや~な気分になったのを覚えている。
このことは友達には言わないでおいた。次の日、学校でジャクソン君に会ったが、俺も向こうもお互いに何もなかったかのように振舞った。
305本当にあった怖い名無し sage 2007/08/03(金) 17:04:48 ID:7LXXYI4Q0
さらに一月ぐらいたった時のこと。相変わらず俺は彼を避けていたが、ジャクソン君にもぽつぽつ友達ができたようだ。
その友達がジャクソン君にある質問をした。
「なあ、なんでジャクソンはそんな変な髪形してるの? 誰にあこがれてるの? 何を目指しているわけ?w」
ジャクソンは見事な七三分け、いや八二分けといったほうがいい髪形をしている。
それだけならさほど変でもないのだが(七三分けの高校生ってあまりいないけどね)、
両サイドと後頭部を思いっきり刈り上げている。「ツーブロック」って言うの?そんな感じだ。しかも、ポマードで髪をペッタリとなでつけている。
もし漫画「オメガトライブ」を知っているなら、梶秋一を思い出してほしい。あるいは芸人の鳥肌実をググってくれ。
「なぜ変な髪形をしているのか?」これは誰もがずっと思っていたことだった。
ただ、ジャクソン君はなんとも危ない暗いヤツだったので、誰も聞かなかったのだ。
306本当にあった怖い名無し sage 2007/08/03(金) 17:05:40 ID:7LXXYI4Q0
教室にいた者、みながジャクソン君の答えを待っていた。そっぽを向いて興味がないふりをしつつ。
「何でそんな変な髪形なの?」
そう聞かれた瞬間、ジャクソン君はそれまで見せたことがないほどの勢いで
「取り消せ! その言葉を取り消せ! 変だと!? この髪型が変だと!? ふざけるな!
この髪型はジャクソン家に代々伝わる由緒正しい髪型だぞ!
ジャクソン家を継ぐ者は誰もがみなこの髪型にするんだ! さあ、今すぐその言葉、取り消せ!!」
ジャクソン君は鬼のような表情で、とても冗談とは思えなかった。質問したやつは真っ青な顔で謝罪した。
それ以降、ジャクソン君に話しかけるものはいなくなった。
俺は「うちがジャクソンの本家」などと冗談を飛ばしたことがどれほどヤバイことか理解した。
背筋が少しずつ冷たくなっていった。
その後は卒業まで特に何も起こらなかったが、ジャクソン君には絶対に近寄らなかった。
念のため言っておくが、うちのジャクソン家にはそんな髪型を継ぐ風習はない。
終わり