ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 41-50 > Part 40 > 湯船から 2016/05/02 855 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/06/10 01:32 あれはまだ、私がその小さな会社に入ったばかりの頃のできごとでした。 従業員は全部で10人ぐらいの家族的な雰囲気の、なかなか良い会社でした。 ある日、慰安旅行で温泉にいきました。平日にわざわざ会社を休業してやって 来たかいがあって、我々の他には数人しか泊まり客はいないので、まるで貸し切りのようす。 おきまりの宴会も終わり、旅館のバーで先輩たちと飲んでいましたが、 当時若かった私は、飲みすぎたためか眠くなってしまい。 「すみません、僕は先にやすませてもらいます。」 そう言って席を立ちました 「まだ、早いよもう少し付き合えよ。」「もっと飲んでいけよ。」 そんな声を無視して部屋に戻りました。ふとんは敷いてありましたが、 だれもいません。しかし睡魔には勝てず眠ってしまいました。 しばらくして目を覚ますと、夜中の二時ごろでした。何人か寝ていましたが、 まだ、出かけている人もいるらしく、空きふとんもいくつかありました。 また寝ようとしましたが、目が冴えて眠れません。どうするか、 そうだ、風呂に行こうと思いました。 タオルを手にして旅館の明るい廊下を歩いていきました。旅館の人に会ったので 尋ねました。 「まだ、お風呂開いていますよね。」「はい、24時間あいています。」 再び廊下を進み、風呂場に着きました。脱衣所で浴衣を脱いでタオルを持って 湯船の方のとびらを開けました。誰もいない事を期待していましたが、手前に 並んでいるシャワーと蛇口のある場所に、太ったおじさんが髭を剃っていました。 かるく会釈をしてすこし離れた、入り口のすぐ側のところで身体を洗ってから、 風呂に入りました。 851 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/06/10 01:30 他には誰もいないので、のびのびとつかっていました。シャンプーもしようと 湯船からあがりました。シャワーのところまで行き、椅子に腰掛けた時、 なにげなく、おじさんを見るとまだ髭を剃っている。ずいぶん丁寧だな。 そう思い、視線をおじさんの目の前の鏡に移すと、その中に妙なものが見えました。 湯船の端に黒いものがある。うしろを振り向くと湯船には何もありません。 また、鏡を見ると、湯船から両手が這うように出ている、黒いのは頭のようです。 顔は見えません、あわてて湯船を見ても誰もいません。鏡をのぞくと、 右手を前に出し身体をズズズとひきずる。次に左手を前してまたズズズと身体をひきずり、 少しずつおじさんに近づいていきます。湯船を見ても、何もありません。 そのうえ鏡の中のそれは右手に何かを握っています。カミソリです、丁度床屋さんで使うような。 それを手に握り、ズル、ズルとおじさんににじり寄ります。 しかし、おじさんには、見えてないのか、平気で髭を剃り続けています。湯船を見ても誰もいません。 無我夢中で立ち上がり、脱衣所に戻りとびらを思いっきり閉めました。 間もなく、おじさんの悲鳴が聞こえるはずだ。いそいで逃げろ、心の声が叫ぶ。 あったまっているはずの身体には鳥肌がたっています。 しかし、何の音もしない、早く逃げなくては、あぶないぞ、大変だぞ、しかし、静寂。 何故か、とびらを開けてみたい、そんな誘惑がしました。走って逃げろ、心の声がします。 手がとびらにかかっています。そして、手にちからが入り、ガラリと音をたてて開けました。 誰もいません、おじさんも、得体の知れない、あの物体も。 今度こそ、浴衣を必死にはおって、自分の部屋に戻りました。 その後、その会社は辞めて現在はちがう仕事をしています。結婚し、妻から、 「温泉に行きましょう。」と言われても、その時はいいよと言っても、何だかんだ、理由をつけ 絶対にどこの温泉にも行きません。この話も今まで誰にも話した事はありません。 B! LINEへ送る - Part 40, 洒落怖