洒落怖超まとめ

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雪の話

   

538本当にあった怖い名無し sage New! 2008/04/03(木) 00:43:16 ID:6LjaIZO3O

身動きできない恐怖。死人の気持ちがわかる体験。
埋没体験。冬山で雪に埋められるあの感触。
雪面に縦穴を掘り、仲間に埋めてもらう。そのまま数分。永遠に続くかと思う数分。身動きできないまま、息苦しさだけが加速していく。
雪というのは不思議なもので、埋められている人間がどんなに叫んでも雪面には届かない。代わりに外の音は驚く程伝わってくる。
狂いたくなる程の無力感。雪崩に埋まりながら、息のある人間は、その最期にどれだけの絶望が心を満たしていくのだろう。
暗く冷たく重い牢獄。それが雪に埋まるということなんだ。
僕は駒ヶ岳でそれをやっていた。仲間が僕を埋め、雪の獄舎に身を委ねていた。
仲間の声が遠くから響く。闇の中で数だけを数える僕の耳に聞きなれない声が届く。
下から。
あり得ない方向。届くはずのない声。僕はもがく。雪の牢獄は僕を離さない。仲間に届くはずのない悲鳴をあげる。仲間の雑談が聞こえる。
そして下から少しずつ掘るぎこちない音。上下左右が僕の中で失われていく。
細く聞こえてくるかすれたうめき声。
「くるね。くるよね。くるね。くるよね。くるね。くるよね。くるね。」
気がついたら、僕は晴天の雪山で介抱されていた。


539本当にあった怖い名無し sage New! 2008/04/03(木) 01:01:03 ID:6LjaIZO3O

恥ずかしい話僕は失禁していた。仲間は時間通りに僕を掘り返し、気絶している僕にたまげた。
僕は仲間に体験を話したが、とりあってもらえなかった。
仲間は、その後数度埋没体験をしたが、変化は無かった。何時もの無力感だけが麻薬のように僕らを包んでいた。
初夏、雪が溶けてそこへ行った。正確な場所はわからなかったが、そばに小さな祠があった。かすれた古い文字は僕には読めなかった。
中には狂ったような笑顔の素朴で小さな地蔵様と、気絶して小便を垂れ流している僕の写真があった。
写真には赤い小さな字で、くるよね。って書いてあった。
僕はお参りをして、帰った。写真は燃やした。
初夏でも山は凄く寒かった。

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