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黒い影

   

29本当にあった怖い名無し sage 2008/04/28(月) 04:41:40 ID:QsKbORkdO

スレ違いかもですが書きます。

私、物心付いた時から、人には見えないものが見えます。いや、幽霊とかじゃないと思うのですが、
「怒りの感情」を抱いた時にそれは見えます。
初めて見たのは幼稚園の年長組の時。
友達のAとお菓子の取り合いで喧嘩して泣かされた時、悔しさと悲しみとAに対する怒りで泣いたとき、涙で滲んだ視界に「それ」は見えました。
Aの背後に全身真っ黒で、大きな影のような、しかし輪郭は朧気で。
以来、「それ」は喧嘩や先生、親にきつく怒られたりしたときに等に頻繁に見るようになりだしました。
しかし、当時は「それ」が何なのか、全く理解もせず、他の人にも当然見えているものだと思っていました。


230本当にあった怖い名無し sage 2008/04/28(月) 04:50:11 ID:QsKbORkdO

そして、小3になり、私は親の離婚で、関西から関東に引っ越ししました。
新しい小学校で私は関西弁が原因で時折、クラスメイトからからかわれるようになりました。 しかし、当時の私は家庭の事情もあり、学校ではあまり、社交性もよくなく、友達も出来なかったので、次第にイヂメの標的になりました。
初めは言葉づかいをからかわれる程度でしたが、次第に教科書に落書きされたり、文具を隠されたり・・・
それでも当時の私は何故か腹を立てず、毎日学校に行きました。
私は母親に育てて貰っていたので、母には心配をかけたくなかったので、もちろん、母や先生にも相談しませんでした。

231本当にあった怖い名無し sage 2008/04/28(月) 05:03:50 ID:QsKbORkdO

そんな陰湿なイヂメを毎日学校で受け、家に帰っても寝る時間まで母は仕事で帰ってこない為、私は自分の生きる意味を毎日考えていました。
小さいながらに「死」を考えて、自分で自分の首を絞めたり、タオルできつく首を縛ったりばかりしていました。結局は死ぬことも出来ず、毎日家に帰っては一人で泣いていました。

ある日、学校の遠足で動物園に行きました。少し遠いとこだったのでバスでいきました。
友達のいない私は一番後ろの補助席でした。
動物園について、私は一人で行動していました。
そして、お腹が空いてきたので人気の無い場所を探し、一人で弁当を食べようとしたときに、事件は起きました。
母が早朝に作ってくれた弁当が鞄の中にないのです。私は焦り、バスの中に落としたのか?と思い、走って戻りました。
しかしバスの中にもありません。
とりあえず自分が歩いた場所を必死で探していると、クラスメイトの数人がニヤニヤしながら寄ってきて、「あそこのゴミ箱に宝物あったぞ!」
と話して来ました。

232本当にあった怖い名無し sage 2008/04/28(月) 05:12:39 ID:QsKbORkdO

嫌な予感がしました。そいつの指差す方向のゴミ箱に走り寄り、中を覗くと、私の弁当が中身をひっくり返されてグチャグチャに捨てられていました。
私は呆然としていましたが、朝早くから作ってくれた母の事を思うと、申し訳なく思い、涙がポロポロこぼれました。
その姿を見て、クラスメイトは笑いながら
「バカぢゃね?」
等と言っていました。
それを聞いたとき、私の中で何かが変わりました。
そいつに対して『ブチ殺してやる』という感情が、今まで味わったことの無い程の怒りの感情が芽生えました。
私はゆっくり振り向き、バカ笑いしていたAを睨みました。
Aはまだ私を見てわらっていました。

260本当にあった怖い名無し 2008/04/28(月) 18:25:10 ID:QsKbORkdO >>232
続き

私は怒りで頭の中が真っ白になった。ただただAに対する憎悪の気持ちが押さえきれないほどに溢れてきた。
ジッとAを睨み続けた。
Aは悪びれもなく
「こいつ、睨んでんの?キモ!」
と笑っていた。
それを聞き、私は怒りの感情がコントロール出来ず、次第に手足がプルプルと震え出した。
その時、
Aの背後に黒い煙・・・モヤのようなものがモクモクと出てきた。
私にとっては久し振りに見た黒いそれ。
黒いそれは瞬く間に人の形になり、Aの背後にピッタリついていた。
しかし、Aはともかく、Aの回りにいるクラスメイトも、それの事を全く気にしていない…いや、見えていないようだった。

兎にも角にも、私は怒りが収まらず、気がつけばA目掛けて全力で走っていた。奇声を発しながら。


264本当にあった怖い名無し 2008/04/28(月) 20:46:45 ID:QsKbORkdO

私は無我夢中でAに掴みかかり、そのままもつれ合いながら倒れた。 Aは面食らっていたが、Aの回りにいたクラスメイトがすぐさま私を蹴ったり髪を掴んで、Aから引き離そうとした。
その場にいた皆は発狂した私を珍獣を見るようにな目で、楽しむかのように薄ら笑いを浮かべ、暴行してきた。
私はただただ、必死にAを掴んでいた。Aは
「離せよ、キメーんだよ!クズ!」等、ワメきながら私の手を必死に剥がそうとしていた。

私は皆に揉みくちゃにされながらAを睨んだ。
Aは少しひきつった表情をしていた。
それよりも驚いたのは、このような状況でも「黒い影」はAの背後に、まとわりつくように見えていた。

265本当にあった怖い名無し sage 2008/04/28(月) 21:14:13 ID:QsKbORkdO

「おい!」
その時、騒ぎを聞き付けた教師が私たちの輪に駆け寄ってきた。
みんなは一目散に散り散りに走って逃げていった。
取り残された私は教師に
「こんなとこで暴れるな!何してたんだ!」と一喝された。
当時の私は幼いながらに教師に『イヂメ』られているということを悟られるのがとても恥に思い、下唇を噛み締め
「すいません…」とだけ言い、その場を去った。
遠くに走り逃げているAの後ろ姿が見えた。
依然、Aの背中には『黒いそれ』がまるでAに覆い被さるように絡み付いていた。
私はAの後ろ姿を見つめながら、強く、強く
『くそ!Aめ!あんな奴死んじまえばいいのに!』と思った。

その瞬間、Aの背後にまとわりつく『黒いそれ』が人形のようになり、両腕、両脚をAに絡み付けているように見えた。

267本当にあった怖い名無し sage 2008/04/28(月) 21:32:44 ID:QsKbORkdO

私は腹が減ったまま一人で人気の無い広場で、じっと集合時間が来るのを待った。。。

15時。自由行動終了の時間。私は一人、トボトボとバスへ歩きだした。
バスの近くまで来たとき、背後からドタドタドタと、慌ただしい足音が聞こえた。
振り向くとAと一緒に行動していたBとC(先程、私を暴行していたメンバー)が血相を変えてバスへ走って行った。
Bは半べそで「先生、ちょときて!Aが!」
Cも「早く、やばいよ!先生!」と、何やら取り乱していた。
先生はBにCに連れられ、動物園に走って行った。

俺はバスに乗り込んだ。


それから5分程して、今度は先生が血相を変えてバスに戻ってきた。背中には号泣しているAをおぶっていた。
Aが号泣している訳はすぐに分かった。
Aの右脛に直径10センチ程の傷があり、凄い勢いで血が流れていた。
先生は、他の教員に「救急車!救急車!」と軽くテンパっていた。
バスの中は皆、Aの様子、怪我具合を見、ざわざわしだした。
私は号泣するAを見てニヤリと笑ってしまった。

その時、Aの背中には『黒いそれ』は見えなかった。

268本当にあった怖い名無し sage 2008/04/28(月) 21:51:41 ID:QsKbORkdO

その日、先生とAは救急車で近くの病院に行き、私たち残り生徒は予定どうり学校に戻った。
バスの中はAの話題もちきりだったので、Aがふざけて金網フェンスによじ登り、足を滑らせ、落ちた足場が悪く、石で脛を打ち、パックリ割れた、と言うことが分かった。

家に帰り、私は『やった!』と心から喜んだ。自分でも、人の不幸を喜んではダメだと分かっていても、ついつい顔がにやけた。
腹が減っているのも忘れ、ベットに寝転がり、ニヤつきながらゴロゴロしていると、いつの間にか眠りに落ちた。

不思議な夢を見た。

私が立っていると、私に向き合うように『黒いそれ』が現れた。
『黒いそれ』はゆっくりと人の形になった。
しかし、煙?霧?のような質感?の為、性別や表情は全くわからない。
しかし、なぜか私の心は安堵感で満たされていく…

『黒いそれ』もじぃーっとこちらを覗き込むように私に顔を近づけてきた。

私は物心ついた時から『黒いそれ』を見てきたからか、自然と「これからも仲良くしようね。」と話した。
『黒いそれ』はスーッっと姿を消した。


目が覚めた。時計を見ると,まだ夜の10時だった。
なぜか鮮明に夢の事を覚えていた。


私はこのときはまだ『黒いそれ』の恐ろしさに気づいてなかった。

295本当にあった怖い名無し sage 2008/04/29(火) 18:00:00 ID:h1WHIN2sO >>268 つづき


明くる朝、私はいつもどうり学校へ通学していた。
昨日の夢の事はまだ鮮明に覚えていた。

校門近くに差し掛かると、「パチッ!」
と後頭部に衝撃が走った。ビックリして振り向くと、Bが立っていて、私の驚いた表情を見るなり、
「バァーカ!」と憎たらしい顔で言い放ち、走って行った。
私は、はぁ、、、また憂鬱な1日が始まる。。。
と思い、学校に入った。

始業ホームルームが始まり、先生が昨日のAの怪我の経緯と症状を説明しだした。 Aは右脛を8針縫ったらしい。いい気味だ。
2、3日休むらしい。
永遠に来なければいいのに。

そして授業が始まった。
一時限目、二時限目が過ぎ、3時限目の体育の時間。私の一番嫌いな学科だ。
私は決して運動音痴ではないが、体育の時間が一番嫌いだった。
理由は、教師の目が生徒全体に行きにくい、教師の目の死角をついて、私にちょっかいを出してくる輩がいるからだ。

297本当にあった怖い名無し sage 2008/04/29(火) 18:34:23 ID:h1WHIN2sO

今日の体育はサッカーだった。
試合形式だ。
私はいつものように、隅に立ち、じっとしている。
しかし、必ずといっていいほど、私の元に皆、ボールを蹴り、奪い合うふりをして、私の足を蹴ったり、肘打ちしてきたり、肩からタックルを入れてきたり・・・
『公開処刑』だ。

さっそく私の元にボールが転がってきた。
一応、授業なので避けるわけにもいかない。過去にボールから離れ、教師に怒鳴られた経験がある。
私は渋々、ボールを蹴ろうとした、その時、間髪入れずにBが体当たりしてきた。私は無様にグランドに転がった。
クラスメイトがクスクスと笑っている。
教師に至っては「ナイスプレイ!」などと、バカげた事をホザきやがる。
こいつらはクズだ。
狂ってやがる。
私はゆっくり立ち上がり再び、その場に立ち尽くした。

しばらくして再び私の元にボールが転がってくる。
我先にとばかりに皆が目の色を変え、私目掛けて全力で走ってくる。
今度はTが思い切り私のミゾオチ辺りに肘打ちを入れてきた。
私は呼吸困難になり、その場にうずくまる。
馬鹿教師は「早く立て!取り返せ!ボールはまだ生きてるぞ!」と。どこを見てやがるんだ。

私がなかなか起き上がれない様子を見て、さらに教師は「ボーッと突っ立ってるからだろ!早く立て!」と叫ぶ。
その時、私の側でBが
「一生寝てろよ、クズ虫」と小声で言ってきた。

私はクソッと思い、Bに視線をやった。
そこには『黒い影』がいた。

298本当にあった怖い名無し sage 2008/04/29(火) 18:51:09 ID:h1WHIN2sO

私は『黒い影』をじっと 見た。Bの背後にうっすらと見える。
Bが再び私に小声で「見てくんなよ!次は顔面に蹴り!」と。
私は何を、と思いBを睨んだ。すると、先までうっすらしていた『黒い影』が濃くなりだした。
私はしばらくBの背後の『黒い影』を見入っていた。その時、『ドン!』と体に衝撃が走り、私は顔面から転がった。
「邪魔だ!蛆!」
見上げると半笑いのTがいた。
教師は「だから言ってるだろ!ボールから目を離すな!」

私は顎から頬にかけて擦りむいた。腕で拭くと、うっすら血が付いた。
それを見たTが「うわっ、汚ねーっ!死ね!」と言ってきた。
私はTの足元にあるボールをガムシャラに奪いに行った。
すかさず、皆が集まってき、ボールの奪い合いをするふりをして、ガツガツ私の足を蹴ってくる。
止めにTが教師から見えない角度で私の太股にヒザゲリを入れた。


302本当にあった怖い名無し 2008/04/29(火) 19:10:41 ID:h1WHIN2sO

私は激痛に耐えられず、足を抱え、倒れた。
追い討ちをかけるようにTが私の顔に唾を吐いた。
回りの皆はクスクス笑い、そのまま私を放置で試合続行。
私は
『なんで俺だけこんな目に・・』
と歯をくいしばり、Tの後ろ姿を睨んだ。するとB同様、Tの背後に『黒い影』が現れ、みるみる間に濃くなり、人の形になり、やがてその人の形はTの両肩に腕を絡めているように見えてきた。

Tの側にいたBの影は消えていた。

私はボールの動きに注意しつつ、『黒い影』に抱きつかれたTを見ていた。

その時、

誰かが蹴り放ったシュートボールがTの顔面に直撃!
Tは「グァ!」っと顔面を両手で覆い倒れ込んだ。

皆がTに駆け寄った。
誰かが「うわっ!」と声を上げた。
私は少し離れた所から覗き込むと、Tが両手で顔面を覆っているが、その両手の指の隙間からおびただしい量の血が流れていた。

教師が駆け寄り「見せてみろ!」と、Tの手を強引に引き剥がした。
Tを見て、皆が一瞬静まりかえった。
それは異常な血の量にではなく、鼻が異様に曲がっていたからだ。
依然としてTは「ウガァ!」と奇声を出し、涙と血をボロボロ溢していた。

その時、Tの背後には『黒い影』は見えなかった。


317本当にあった怖い名無し sage 2008/04/29(火) 22:14:35 ID:h1WHIN2sO

先生は慌ててTを担ぎ上げ、保健室へ走り出した。
皆は
「あれはやばいだろ?」
「鼻がおかしくなかった?」
など、青ざめていた。

そんな中、私は、Tの鼻の事ではなく、『黒い影』の事を考えていた。
昨日のAと同じ・・・
黒い影が見え、その後、その影が憑いていた人物は怪我をする…

それに自分が腹を立てた相手を見ると『黒い影』が現れる…

私は半信半疑ながら、一人興奮した。
これは凄い…
凄い力を私は手に入れた…
片っ端から私をイヂメた奴等に復讐が出来る…

これは神様が私に与えてくれた力なのか…

私は選ばれし人間なのか…

この日をきっかけに『私』は『私』でなくなった。


結局、Tは即、病院に搬送され、しばらく学校に来なくなる。鼻骨骨折だった。

318本当にあった怖い名無し 2008/04/29(火) 22:24:43 ID:h1WHIN2sO

その日は3限目以降、休み時間になる度、Tの話題で持ちきりだった。
私は一人、授業中も休み時間も、ある実験をしていた。
『黒い影』を好きに出せるかを試していた。
が、やはり本当に怒りを感じた瞬間にしか出ないのか,全く見えない。
過去の事を思い出しても、全くダメなようだ。
とりあえず、今日から家に帰って色々試してみよう…
と、ウキウキした気分だった。
俺を今まで散々イヂメて来た奴等、倍以上にして怨みを晴らしてやる・・・
そんな思いを抱きながら下校した。

341本当にあった怖い名無し sage 2008/04/30(水) 04:22:26 ID:w0jYEHn6O

家に着き、自室で色々と試した。
イヂメられた事を思い出したり、大声を出して怒ってみたり・・
しかし、やはり『黒い影』は見えない。
「おい!いないの?出てきてよ!」と呼び掛けもしたが、やはりダメだ。
私はベッドに仰向けに寝て、昨日のAの事、きょうのTの事を思い出した。

「クックック…」自然と笑ってしまった。あいつらの苦悶の表情…実に愉快。
次は誰を痛め付けるか…
私はニヤけながら目を閉じた…


寝たわけではない。意識はある。横になり、目を閉じただけ。

目を閉じた瞼の裏に『黒い影』が見える。

慌てて目を開けた。
そこには何もない。普通に天井が見える。
もう一度目を閉じた。力が入り、ギュッと強く閉じた。
やはり『黒い影』がいる。
言葉では表現しにくいのだが、目を閉じたら普通は瞼で視界がさえぎられ、何も見えない(暗くなる)はずだが。
目を閉じた真っ暗な瞼の裏に(真っ暗な中に)まばたきしている眼球が2つ見えるのだ。
何度も試した。目を開ければ何もない。普通に自室の景色。日常の空間。
しかし目をギュッと閉じれば、一面の黒い闇の中に眼球が2つ見えるのだ。
かなりリアルに、しかもその眼球はまばたきも普通にしていて、私をじっと見つめている。
何故か私にはその眼球が『黒い影』だと思えた。

342本当にあった怖い名無し sage 2008/04/30(水) 04:39:08 ID:w0jYEHn6O

私は目をギュッと閉じたまま、その眼球に、心の中で話しかけた。
「あなたは影?」
「今日はアリガとな。」

しかし、その眼球はまばたきをしてるだけ。何のリアクションもなく、ただただ、こちらをじーっと見ているだけだった。

ギュッっと目を閉じるのに疲れて目を開けた。
やはり夢でも何でもない。現実に、目を閉じれば『黒い影』がいる。

『黒い影』を見たい!という強い気持ちが、私の中にそれを宿したのか、
それとも、イヂメられっこの私を助ける為に、あちらから私に宿ったのか…

その時は、そんなことはどうでも良かった。私は唯一仲間、最強の友達が出来た!程度にしか考えてなかった。

この頃からか、私の精神は少しずつ病んでいった・・

343本当にあった怖い名無し sage 2008/04/30(水) 05:02:54 ID:w0jYEHn6O

その日を境に、私は少しずつ変わりつつあった。

次の日、いつものように通学中にクラスメイトBが背後から頭を「パンッ!」と平手打ちし、笑いながら走って行った。
私は瞬時にBを追い掛け、飛び蹴りをした。Bは不様に地面にこけた。
私は間髪いれずにBに馬乗りになり、両手でBの髪を掴み、何度か地面に叩きつけた。狂ったように。

そこでフッと我に返った。Bは泣きわめいていた。

私はキレたのか?
いや、自分自身がした事は当たり前だが判っている。しかし、何かしら客観的な感覚だった。

回りを見ると他の生徒の視線が集中していた。
私は慌てて立ち上がり、学校へ走った。
少し足が震えているのが自分でもわかった。

学校へ着き、席に着いた。私より後に入ってくる奴等がジロジロ私を見てくる。
恐らく私の先ほどの喧嘩の噂がすでに広まっているのであろう。
私は『どうしよう、ぜったいにイヂメがエスカレートする』と思い、心臓がドキドキしだした。

机に顔を伏せ、目をギュッと閉じた。
『黒い影』の眼球はまばたきしていた。
私は心の中でその眼球に『どうしよう、仕返しされるよ、助けて!』と言った。
もちろん、その『眼球』は何も言わない。ただただ、瞬きしながら私を見ているだけだった。

357本当にあった怖い名無し sage 2008/04/30(水) 14:52:29 ID:w0jYEHn6O

私が机に伏せていると、
「はい、席に着けー。」と先生の声がした。私は喧嘩の事がばれているんではないかと、焦りながら顔を上げた。
しかし、先生は淡々と今日の授業の流れを説明し、出欠をとりだした。
チラリと後方のBの席を見ると、そこには目を真っ赤に腫らしたBが座っていた。
Bと一瞬、目が合ったが、慌ててそらした。しかし、Bは大した怪我もしてないみたいで少し安心した。
いや、Bが怪我をしようが死のうが、どーでもいいが、私が怪我をさせたとなると、私の母にまで迷惑をかけることになる。それだけは避けたい。

始業ミーティングが終わり、一時間目の授業が始まった。

そして、一時間目の授業が終わりかけたとき、後ろの席の奴に肩を叩かれた。
振り向くと、小さな紙切れを渡された。
『回し紙』だ。

開いてみると、差出人はわからないが
『今日の放課後、兜山に来い』
と書かれてあった。
背筋が冷たくなった。

なぜか頭に【集団リンチ】という言葉が浮かんだ。


それから、放課後までの授業は全く頭に入らなかった。生きた心地もしなかった。
何をされるのか?
先生に言うべきか?
授業が終われば逃げるように帰るべきか?

そんなことばかり考えていた。
それにいつもと違い、クラスメイトの視線が私の動向を常に監視しているように感じた。

381本当にあった怖い名無し sage 2008/04/30(水) 22:26:46 ID:w0jYEHn6O

ついにその日の授業はすべて終わった。終礼も終わり、皆がゾロゾロと教室から出ていく。
私はしばらく座っていたが、先生に「おい。どした?帰らないのか?」と言われ、「いえ、さよなら!」と慌てて席を立った。

廊下にでて、靴箱まで、ずっと考えていた。何をされるのだろう・・何人いるのだろう…
胃が痛かった。
私が靴箱に着いたときには、すでに誰も居なかった。私は自分のスニーカーに履き替えると「!」
何やら靴に入っている。
靴を脱いで、それを出してみると、ピンク色の小さく丁寧に畳まれた紙が入っていた。
表に『◯◯君へ』と可愛い丸文字で私の名が書かれていた。
とりあえず開けてみると、『兜山、逃げずに来てね♪』
とだけ書かれてあった。
極限までメンタルを潰されそうだった。

386本当にあった怖い名無し sage 2008/04/30(水) 22:39:53 ID:w0jYEHn6O

『兜山』
学校の真裏にある山で、学校で使う為の水の貯水池がある。
五分ほど登ればちょっとした広場があるが、そこに行くまでが獣道しかない為、一部の子供しか寄り付かない。


私はこちらに引っ越してきてから一度も中に入ったことは無かった。未知の領域である。
それが更に私の不安感を煽る。
それに、山中だから泣いても喚いても、誰も助けてくれない。

しかし、精神的に追い込まれた私は行くしかなかった。
重い足取りでトボトボと山の麓までいった。

まだ昼過ぎなのに、麓から見える山中は、生い茂った木々でやや薄暗い。

私は固く目をつぶった。
まぶたの裏には『黒い影の眼球』が、やはり瞬きしている。
私は心の中で何度も復唱した『お願いします、助けて下さい!』と。
しかし、眼球はいつものように、瞬きするだけだった。

390本当にあった怖い名無し sage 2008/04/30(水) 22:53:26 ID:w0jYEHn6O

私は山へ踏み込んだ。入り口こそ少しまともな一本道があるももの、すぐに道は無くなり、まるで雑木林だ。
しかし、一部、真新しい獣道がある。恐らく数十分前に誰かが通ったであろう痕跡が残っている。
私はそこを通って山を登り始めた。

私が草木や枯れ葉を踏む音だけが響いている。とても静寂な山だ。
今から何が始まるのか・・・
しばらくして広場に出た。
恐る恐る周りを見渡すが誰もいない。
どこかに隠れているのか?
その時、肩に鈍い痛みを感じた。『ゴロッ、』
足元に拳大の石が転がる。
振り向いたがやはり誰もいない…

『ボクっ』次は脹ら脛に痛みが走った。やはり投石だった。
よく耳を澄ますと、どこからか『クスクス…』と笑い声がする。


468本当にあった怖い名無し sage New! 2008/05/02(金) 20:07:10 ID:zfeiIrwIO >>390 つづき

私は石をぶつけられた『痛み』よりも『目に見えない誰か』からの攻撃に恐怖し、足が震えだした。
泣きそうになった。
すると、前方の茂みからガサガサと音がし、中からゾロゾロとクラスメイトが7人出てきた。
その中にはBもいた。やはり今朝の報復だ。
7人はケラケラ笑いながら歩み寄ってきた。
「朝はありがとな!」と言いながら、Bは私の脛を蹴ってきた。
「痛っ!」私がしゃがみ込むと、Bは私の髪を鷲掴みにし、「こいつだよ、、」と笑った。
後ろの茂みからガサガサ音がした。髪を捕まれながら振り向くと、上級生らしき奴が三人立っていた。

そのうちの一人が「このチビか?」と近づいてきた。

469本当にあった怖い名無し sage New! 2008/05/02(金) 20:08:42 ID:zfeiIrwIO Bが「そーだよ、兄さん!こいつに朝、メチャクチャされたんだ!」と言い、私の髪を掴んでいた手を離した。
Bの兄はさらに私に近づいてきた。私は取り敢えず立ち上がった、その時、Bの兄は私の両肩を思い切り突き飛ばした。
私は顔面から地べたに、ヘッドスライディングのように転倒した。
Bの兄は「調子乗ってんぢゃねーぞチビぃ!」と、吐き捨てた。
さらにB兄は倒れている私の頭を踏みつけた。
それまでは痛み、恐怖があったが、その行為で私の心に『屈辱感』がわいてきた。
気がつけば私の目から涙が溢れていた。なぜ私がこんな目に逢わなければならないのか?
その姿を見て、Bをはじめ、クラスメイトは指を差し笑っていた。
それを見た瞬間、今朝のように頭の中が真っ白になった。

470本当にあった怖い名無し sage New! 2008/05/02(金) 20:09:51 ID:zfeiIrwIO

私は後頭部を踏みつけられたまま思い切り立ち上がった。自分でも驚くように、両腕、両足に力が入っていた。
B兄はバランスを崩し、転けそうになったが、踏みとどまり、「お前ぇ!」と、すぐさま両手で私の胸ぐらを掴んできた。
私は何も考えず、いや、無意識に、両手の親指をB兄の目に入れていた。
「うわっ!!」
慌ててB兄は胸ぐらから手を離し、両手で目を覆った。私は自分自身の行動に驚いていた。
驚いていたのも束の間、私は足元に落ちていた拳大の石を拾い上げ、B兄頭を思い切り殴りつけた。
鈍い音と同時に、漫画のようにピュっと血が出た飛散した。
「痛ぁーぁ!!」
B兄は今度は両手で頭を抱えながらしゃがみこんだ。
私は呆然とした。
いや、しかし、体が勝手に動く。右手に石を強く握りながら私の両足はB兄に向かい、進んでいる。

471本当にあった怖い名無し sage New! 2008/05/02(金) 20:11:26 ID:zfeiIrwIO

私は意味がわからなかった。まるで夢を見ているようだ。自分の意識はハッキリあるのに、体はまるで他人。勝手に動いている。
しかし、目に指を入れた感触、石の感触、殴った感触はリアルにある。
しかも私の表情は
『笑っている』
私は全く笑っていないのだが、頬の筋肉の感触で、私は今、ニヤァっと笑っているのが分かる。
私の体がB兄に近づき、石を握った右手が大きく上がった瞬間、残った2人の上級生が私に抱きついてきて
「もうやめろ!やりすぎだろ!お前!」
と叫んだ。
「黙れ!!」
少しシャがれた罵声が聞こえた。中年女性の声。
さらにその女性の大声は
「貴様らぁぁぁ、許さん!!」と怒り狂った様子だった。
いや、何かおかしい…
どこにも女性はいないのに、間近から聞こえた…
いや、その声は、私の口から発せられていた。 (未完)

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