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黒い物体

   

50本当にあった怖い名無し 2007/08/02(木) 02:25:41 ID:n8n+HtTt0

1:
初めまして。
早速 体験談を載せますが、これは今年の三月頃に書いて、記録していたものです。


 ふと、大学に入ってから気付いた事があった。
 大学の講義やバイト、或いは友人との約束もない休日というのは、案外と暇なものである。 高校時代は部活や塾などで時間を取られることが多かったからか、それは余計に感じることだった。 最近では、それにかこつけて昼前まで寝る堕落ぶりを見せている。
 そんな偶の休日、私は散々読み返した小説を読んでいた。 ぱらぱらと何気なく頁を捲り、
「展開は当然知っているし、飽きてきたなあ」などと欠伸を噛み殺していると、なにやら
視界の隅っこで黒い物体が動いているのに気付いた。
 襖に張り付いているようなのだが、それが妙な動き方で、少し動いては止まり、また動
き始めるといった虫のような奴だった。心なしか、その黒い物体の周囲が蠢いているようにも見える。
 だが正直な話、虫とは考えたくない。ゴキブリ等ならば、どんなに綺麗な家庭にも居る
ものだが、さすがにここまで堂々としていないだろう。それにもし虫であるならば大きさが異常だ。 目算(とは言え、横目で見ているから不確かだが)で、15cmほどはあるのだから、もし虫であったら私も大暴れするしかない。
 しかしこのままでは埒が明かない。「虫じゃあ、ありませんように」などと、完全に怖
気付きながらも、ぱっとそちらを振り返ったのだが、
(何もいないじゃないか)
 と、肩透かしを食らってしまった。先ほどまでは確かに居たように思えた「黒い物体」
は、その影も形も残していなかった。すこし穴の開いた襖が閉じられているだけである。
あまりにも唐突な喪失であって、気持ち悪かったが、追求しても矢張り怖いので、私は特
に何事もなかったかのように別の本を読み始めた。わざとらしく、「次はこっちでも読む
かなあ」と声をあげたのも、今思えば可笑しなことである。

51本当にあった怖い名無し 2007/08/02(木) 02:26:40 ID:n8n+HtTt0

2:

 それから30分ほど経ってか、黙々と頁をめくっていると、先の黒い物体がまたも視界
の隅に現れたのだ。やはり虫のように蠢き、確かな存在感がある。
 今度はすぐさま振り返ったが、やはり何も居ない。それがその日だけでも3回はあったと記憶している。
 目の具合か、それとも頭でもおかしくなったのか。前者ならば不安だけですむが、正直、
この手の話はまず後者を疑われるものだ。それに精神的なものだろうから、外傷判断も付かない。 幸いなことに、目の方はコンタクトの定期検査で、眼科の診断を受ける機会があ
ったのだが、さしたる問題は無かった。ならば残る可能性は後者なのだが、それは考えないようにしようと思う。 鼬ごっこになるのは目に見えているのだ。
 そうして何日か過ごしている内に、やはり襖に黒い物体が蠢くことが時々だがあった。
もう前ほどに気にしなくなり、「またか」程度に流せるようになった。
 しかしそれが逆に災いした。先日気付いたのだが、冷静に横目で観察してみると、その
黒い物体が、虫ではなく「髪」のような気がしてきたのである。
 横目で襖を見てはいけない。私の部屋のタブーである。


以上です。
最近は、それほど見かけないのでホッとしています。

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