ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 11-20 > Part 19 > ビー玉 2016/04/05 814 名前:1/5 投稿日:02/10/01 04:16 小さい頃、夏休みに1ヶ月ほど田舎の祖父母の所に預けられた事がある。 我侭いっぱいに育った俺は、近所の子供達に受け入れられるはずもなく、 いつも一人、河原で遊んでいた。 そんな俺にも友達ができた。 そいつも友達がいないようで、いつも一人だった。 そいつはいつでもにこにことしていて、俺の益体も無い自慢話や、偉そうな態度に 「うわー、君って凄いんだ~」とか、「わー、かっこいいなー」とかの賛辞を惜しまない。 俺もちょっと子分ができたようで、嬉しかった。 815 名前:2/5 投稿日:02/10/01 04:17 何にでもすぐ感心してしまうそいつは、俺が東京から持ってきたおもちゃに目を丸くしていた。 「今日は特別に貸してやるからな、好きなので遊べよ」 意外な事に、そいつが選んだのはビー玉だった。 「おいおい、ラジコンとか合体ロボとかあるんだからさ、それで遊ぼうぜ」 「うん…でも、これ、とってもきれいだよ…」 そう言ってそいつは、ビー玉を日にかざして、うっとりしていた。 ビー玉も買ってもらえないのだろうか。俺はそのことが哀れに思われた。 「…そんなに気にいったんなら、やろうか?それ」 「!!いいの?!ホント?ありがとう!大事にするよ!君って本当にいい人だね!」 ビー玉如きで…という思いはあったが、何となくいい事をしたような気がして、 俺はちょっぴり嬉しくなった。 816 名前:3/5 投稿日:02/10/01 04:19 数日後、そいつは変な事を言い出した。 「はぁ、ビー玉作るのって難しいねえ」 「何?」 「ほら、君がくれたやつだよ。君が作ったんだろ?」 ぐっとつまったが、さんざん偉そうな事を言っていたので、今更後へは引けず 「そうさ、俺が作ったのさ。まあ、ちょっとコツがいるかな」 「ボクが作ると最初は綺麗なのに、そのうち、ちっちゃくなっちゃうんだ。 ねぇ、コツを教えてくれないかなあ」 ???な、何か考えないと… 「そ、そうだな…全部教えちゃうとお前の為にならないから、ヒントだけな…え~と …そう、水分。水分をあたえないと。ま、言えるのはこれだけだな」 汗をかきながら俺が言うと、そいつは腕をくんで考え始めた。 「う~ん、ボク、君みたいに頭よくないから、難しいなあ。でも、後は自分で 考えてみるね!ありがとう!」 817 名前:4/5 投稿日:02/10/01 04:20 それからしばらくして、俺は東京に戻る事になった。 そいつにその事を告げると、はらはらと泣きじゃくった。 「せっかくいい友達が出来たのに…君がいなくなると、つまんないよ」 「まあ、そう泣くな。また来年来るからさ」 「…うん!淋しいけど、我慢するね!…あっ、そうだ、もうすぐあれ、出来そうなんだ。 明日君が出発するまでに作るから、お土産にあげるね」 「何?」 「イヤだなあ、ビー玉だよ!君のヒント難しいから、苦労しちゃったよ。だって、 川で洗うと中身が流れちゃうし…でもね、いい方法思いついたんだ!」 「ふ、ふ~ん。そうか。楽しみにしてるよ」 818 名前:5/5 投稿日:02/10/01 04:21 翌日。迎えにきた母と、東京に帰るべく畦道を歩いていると、そいつは走ってきた。 「はぁはぁ、間に合ってよかった…これ、約束のお土産…一番綺麗に出来たやつ 持ってきたんだ…こうやってるとね、ちっちゃくならないし、綺麗なままなんだ… じゃ、また来年来てね!きっとだよ!」 それだけ言うと、自分の口から何かをぽんっと吐き出し、俺の右手にそっと乗せた。 そして走り去った。 「こちらでできたお友達かしら?何をいただいたの?」 硬直している俺の右手の上にあるものを覗き込むと、母は絶叫した。 その翌年、俺は田舎に行かなかった。いや、それ以来一度も行っていない。 だから、そいつがどうなったのか全く知らない。 でも、俺の机の引出しには、大人になった今でもあの「お土産」が入っている。 干からびた緑色の猫の目玉が。 B! LINEへ送る - Part 19, 洒落怖