ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 21-30 > Part 25 > 天国からの放送 2016/04/16 70 名前:さたな 投稿日:03/01/30 09:23 聞いた話である。 そのカセットテープは、ある日、突然郵便や宅配便で送られて 来るそうだ。 もちろん、差出人の名前なんかない。 テープ自体はどこででも手に入る安物なのだが、小さなカード が同封されている。 内容はだいたい次の通りだ。 「これは、天国からの放送を録音したテープです。空中にはたく さんの放送電波が飛び回っていて、その中には天国からの放送も まじっていますが、ふつうの状態では受信できません。私たちは その、天国からの放送を録音することに成功しました。くりかえし 聞いてください。かならず天国からの声が聞こえます」 71 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/30 09:23 昔に流行った不幸の手紙モドキかと思い、たいていの人はばかばか しく思ってこのテープを捨ててしまう。 そうでない人も部屋の片隅に投げだし、ホコリまみれにしてそのまま 忘れてしまう。 好奇心に負けて、あるいは趣味のよくないジョークのつもりで、実際 にこのテープを聴く人は、ほんのわずかだ。 テープには、最初なんにも入ってはいない。 それでもがまんして聴いていると、そのうちかすかに雑音が 響いてくる。 そうしてだんだん、その雑音が大きくなってくる。 “ザーッ”とか“ブーン”とか“キーン” といった、ただのノイズだ。 聴力検査のときに聞こえてくるアレだと思えばいい。 そのノイズは、えんえんと続く。 ・・・・何十分も。 いくらがまん強い人間でも、このあたりでSTOPのボタンを押すこと になる。 72 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/30 09:24 「なーんだ、やっぱりハッタリか」 「クズテープじゃない、こんなの」 というのが、おおかたの感想だろう。 もっともだ。 今度こそゴミ箱に放り込む人もいるだろう。 ところがである。 ここからが本筋なのだが、このテープを一度聴いた人間は、また 聴きたくなるらしいのだ。 何の内容も、価値もない、ノイズしか入っていないクズテープをだ。 どうしてそんなガラクタにひかれるのか、実のところ本人にもわからない。 (もう一度アレを聴いてみるか・・・) 73 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/30 09:24 そんな考えが頭の中でどうしようもなくふくらんで、再び手をのばす のである。 もちろん、この時点でテープが手許に残っていれば、の話だ。 そうすると奇妙なことに、最初ほどノイズが気にならなくなる。 それどころかノイズがなんとなくある種のリズムを含んでいて、聴 いていると気持ちがいいような気さえしてくる。 そのうえ、なんだか、ノイズのあいだに、いろいろな音がまじって いるように思えてくるのである。 それは、正体のわからない動物が、うなるようなものだったりする。 男女の会話がとぎれとぎれに聞こえてくる気もするが、はっきりしない。 「もう、間に合わないよ」とか 「だめだよ」とか言っているようだが、 何が間に合わなくて、何がだめなのか、さっぱりわからない。 やがてそれは、遠くで怒鳴っている声や、けたたましい笑い声、金切 り声としか言い様のない絶叫、 74 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/30 09:25 「イヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒ・・・・」 といったいやらしいふくみ笑いなどを何の脈絡もなくまじえると、 とうとつにとぎれてしまう。 あとはまたノイズだ。 大部分の人は気味が悪くなって、テープを今度こそ手放してしまう。 残ったほんの少しの人だけが、まるでとりつかれたようにテープを 聴き続けることになる。 もう、友達にも家族にも相談せず・・・・何度も、何度もだ。 テープのノイズは、聴けば聴くほど心地よくなってゆく。 そのかわり、ノイズのあいだの声はしだいにはっきりしてくるという。 そんなある日、声はとうとつに聴き手に向かって言うのだ。 はっきりと。そうして、ウンともスンとも言わなくなるのだ。 ノイズだらけの、ただのクズテープに戻ってしまうのだ。 75 名前:終り 投稿日:03/01/30 09:26 いったい、何を言うのだろう? 聞くところによると、それは八桁の秒数であるらしい。 それが何を意味しているかは、自由に解釈してもらうしかないのだが。 いずれにしてもそれは、いくら長くても八桁以上になることはなくて、 とにかく、よく“当たる”そうである。 ・・・・八桁の秒数がいかに短い時間であるかは、これを日数に換算 すれば一目瞭然だろう。 あくまでも聞いた話ではあるが。 B! LINEへ送る - Part 25, 洒落怖