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あの日

   

138 本当にあった怖い名無し 2005/08/30(火) 15:59:09 ID:WPHfLINj0

「あの日」以前も以降も、お化け的な物は一切見たこともなく、
できれば今後も見たくは無いのだが、10年以上経った今も
怖い話というと鮮明に思い出す「あの日」のことを語ろうかなと思う。

呪いとか人が死ぬといった類ではないので、今ひとつパンチがないと
感じられる方も多いかと思うが、これは、「霊の存在を、なんとなくは
信じてるけど、自分の目で見ない限りはなんだかなあ」と思っていた
青春の日の俺が、それを目の当たりにするまでの体験を余すところなく
再現した真実である。

できるだけ読みやすく簡潔化するよう心がけたいが、「どこそこで、
こんなモノを見ました」というよりも、そこに至る過程の方が自身の
体験としては怖かったので、かなりの長編になるかもしれないが、
興味のある方は、めげずにお付合い頂きたい。

それでは、ご覧いただこう。(続)
140 138 2005/08/30(火) 16:18:34 ID:WPHfLINj0

・判り易いよう、以降名前を「轟さん」とする。
・話の内容から3部作にしようと思う。
「登場人物」
東京のとある4流大学のとある部活のつまらない4人の仲間達。
部活の内容とは関係なく、夜メンバーが集まると「怖いとこ巡り」
と称して色々な近郊スポットを探索して、いつしか「心霊研究会」
と自らを呼ぶようになった。

・俺 怖い所に行って、結局何もなく帰ってくるのが好きなビビリ
K子の話では霊に強い体質らしい。(意味不明)
・K子  同級生。霊感があるらしく、気配を感じたり、たまに
見えたりするらしい
・Zさん 先輩。見た事はないが、気配を感じたり、不思議な
体験を多数したことがあるという
・H   先輩。K子の彼。霊感があると言っているが、いつもK子に
話を合わせてるだけっぽい。胡散臭い奴

143 轟さん 2005/08/30(火) 16:34:46 ID:WPHfLINj0

第1部 「序章~第1回 等々○不○」
行く先のネタに枯渇して、活動休止中だった研究会だったが
俺がTVの特集で等々○不○で夜、白い着物の女性の霊が現れる
という情報を入手し、早速、突撃することに。この日は特別に
当時の俺の彼女も参戦し、計5人で行くことになった。

住宅街の家の切れ間にひっそりと、そこへの入り口は明滅する
街灯の中に浮かび上がっていた。そこから闇へ続く長い下り階段。

雰囲気だけで相当恐ろしいので、階段を1歩下りる度に空気が
重くなる感じ。恐怖という自己暗示がそうさせているのだと
自分に言い聞かす。

階段を下ると渓谷沿いの細い遊歩道が続く。道の先には、ぽつぽつと
街灯が辺りを照らしている。その灯りを頼りに我々は先に進んだ。

途中、右に入る小道があり、我々は、先ず、目的の直進ではなく、
右手の小道に入ることにした。(続)
146 轟さん 2005/08/30(火) 16:48:02 ID:WPHfLINj0

右手の小道は林の中に続いていて、石畳の道になっていた。その石畳の道が
直角左に折れる。先頭の俺が左に折れ、後に続くZさんが角に差し掛かった
瞬間、

「やべー、ここに境界線がある」

と言った。K子も「ほんとだね、こっから向こうはいっぱいいるね」
と言う。慌てて2人を先に行かせて「見えるの、何か?」と聞く俺。
「見えないけど、感じがする。子供かな、これは」とK子。
そして、「ああ、これがあるからだ」とKさんが言った先には
「稚児木像」という等身大くらいの小さい子供の木像が、祠の中に
鎮座していた。これを見る前に子供と言ったK子の言葉と合致した事が
怖かったが、俺は、鈍感なので、その周りに集まる子供の霊というのは
感じる事もなかった。そして、本線(遊歩道)に戻るべく、我々は
引き返した。(続)

147 轟さん 2005/08/30(火) 16:59:28 ID:WPHfLINj0

本線に戻り、視線の先には滝が落ち、その下に数体の地蔵が
並んでいる。

「あそこにいるねー」

とZさん。「こっち見てるー」とK子。相変わらず俺にはわからない。
さらに歩を進めると、橋があり、その先に長い上り階段。
俺が橋を渡ろうとすると、Hが「ちょっと待った。行かない方がいい」
という。すると彼女が「頭痛くなってきた」と言う。
せっかくここまで来てという俺の気持ちを遮るように、皆が
今日は帰ろうと言う。仕方なく、その日は断念し車に戻ると
彼女が「戻る途中、子供のバイバイって声が聞こえた」と言うが
気のせいだろと言い聞かせたが、俺自身、今まで行った中で
ここが一番怖いなとおもった。
そして、後日、ここで遭遇することになるとは、この時誰も
思わなかっただろう・・・・ 第1部完

150 轟さん 2005/08/30(火) 17:29:37 ID:WPHfLINj0

第2部「出逢い~緑ヶ○霊園」
それから半年も経っただろうか、4人は川崎の墓地へ行った。
墓地脇の池に嵌って亡くなった子供の慰霊碑があり、なかなか怖いと
いう情報だった。

着いてみると、そこには1台のタチの悪そうな車が止めてあり、
案の定、慰霊碑の前にはヤンキーな方達4人がたむろっていた。
俺は怖いのだが、Zさんは「なんか見えたー?」と友達のように
声を掛けながら近寄って行く。するとヤンキーAが、「見えないけど
やっぱいるね、さ○し君(嵌った子の名前)」という。

驚くことに、初対面のヤンキーもZさんもK子も、慰霊碑の裏の
木の陰から、こっちを覗く子がいるという話で一致していた。
「君、霊感あるねー」とZさん、ヤンキー達と意気投合し、
お互い知ってるスポットの情報交換をした。そこで我々は、
多摩川挟んですぐの、例の等々○不○を紹介した。(続)

151 轟さん 2005/08/30(火) 17:31:20 ID:WPHfLINj0

さらに「車座になって呼んでみようぜ」と慰霊碑の前で4流大生と
ヤンキーの計8人で車座になって目を閉じた。
「うわ、俺の後ろにきたな」とZさん。ヤンキーA「ほんとだ、
今、いるね」俺、マジで怖かったけど、勇気を出して、恐る恐る
正面に座っているZさんの方を見た。しかし何も見えない。
すると、俺から見てZさんの右方向のAとK子がほぼ同時に
「今、ここだ」と言う。やはり、見えない。

突然、ゾクっと身震いがきた。「うわ、寒気した」と俺が言うと
右隣のヤンキーBが「俺も、今でしょ?」と言う。
するとZさん

「だってお前らの後ろにいるもん」

今まで、研究会の仲間を疑っていた訳ではないんだが、見も知らずの
ヤンキー達と言ってることが次々と合致する為、なにかこの日は
違うなと、肌で感じていた。ヤンキー達は、教えた等々○に行くと
言うので、帰り道だし、案内してやるというZさんの提案で
我々は再び彼の地に行くことに・・・・。
そして人生最初の体験をすることになる。
第2部 完

155 轟さん 2005/08/30(火) 18:28:50 ID:WPHfLINj0

「最終章 第2回等々○不○~俺は自分に言い聞かす、錯覚だと」

あの入り口は相変わらず明滅する街灯の元、ひっそりと浮かび
上がっていた。「俺ら1回来たから、先歩きなよ」とZさん。
ヤンキー4人の後、階段を降りる。ズンズン空気と肩が重くなる。
自己暗示とは言え、ほんとにここは怖い。

例の右に入る道だ。「先ずそこ右」Sさん先を歩くヤンキーに
指示を飛ばす。4流大が道に入った時、ヤンキーAがこう叫ぶ。

「ここに境界線がある」

泣きそうなくらい怖かった。実際、俺は何も感じない。TVだったら
絶対やらせだと思うだろう。しかし、あえて何の前情報も与えず
先行させた、数時間前に会ったばかりの人間が半年近く前に
Zさんの言った言葉を1字1句違えず、同じ場所で叫んだのだ。
(続)

156 轟さん 2005/08/30(火) 18:30:26 ID:WPHfLINj0

そして、滝の下。またしてもAが「なんか、こっち見てるね」
「君、いいねー」と喜ぶZさん。
もう、このあたりから、恐怖を超越して、達観というか、例えば
リンゴを見て、みんながそれをリンゴと言うのが当たり前のように
この人達には、それが当たり前の世界なんだと思うようになった。

そして、橋の手前に来て、橋の先にある階段を見上げた時だった。
みんな「あっ」とか絶叫というより、声が漏れるという感じ
だったと思う。誰一人大声は出さなかったと思う。
俺は声すら出なかった。

ついに来るべくして来たか。という、あれだけ恐れていたものを
実際に見たのに、とても冷静に受け入れてる自分がいたことを
鮮明に覚えている。
(続)

158 轟さん 2005/08/30(火) 18:33:48 ID:WPHfLINj0

しばらく呆気にとられた後、認めたくないという相反する気持ちが
湧いてきた。そう、月明かりの影なんだと強引に自分に
言い聞かせて。しかし、月が作り出した陰影にしては、それは
あまりにも具体的な形をしていた。

俺は「なにが、見えるの?」と嘯いた。俺以外の7人が
「なんでわかんねーんだよ」「女がいるだろう」みたいに
言った気がする。(女?ビンゴだよ)恐らく、俺に見えてるモノが
他の7人にも差異なく見えているのだ。
俺「もしかして、階段の真中あたり?座ってるよねえ?」
皆「そうそう」
俺「白い着物みたいなの着てるよねえ?」
皆「それだって!」
俺「顔はないっていうか、見えない?」
皆「みえないよ」
俺「左の髪だけ、肩の前にダラーンと」
皆「だから、そうだよ!」

それは、あまりにもステレオタイプな姿をしていた。
顔はのっぺらぼうというより、朧で見えないという感じ。
質感は無く、パンチしたら(する訳ないが)すり抜けるような
ふうだった。しかし、俺は認めたくなかった。

159 轟さん 2005/08/30(火) 18:35:01 ID:WPHfLINj0

やっと最終回

「あれは月の影だ」絶対違うと、俺以外の7人。
「そんなに言うなら、お前行ってこい!」とZさん。
「いいですよ」と独りで橋を渡り、階段を登った。
今考えると、もう、この時点で普通じゃないな。
ソレを見ないよう、下を向きながら階段を登る。距離感は
わからない。下からは、皆の戻れ、とか止めろの声。
ある1段を登ったら、もう足が動かない。行きたいと思うけど
次の1歩がどうしても踏み出せない。それは金縛りとかじゃなく
外的要因ではなく、自分の恐怖の限界というか、本能か精神か
とにかく、自分がストップをかけた感覚だった。証拠に逃げ帰る
下りはスムースに足が動いた。皆の元にもどると
ヤンキーAが突然泣き出した。赤髪のヤンキーが。
数時間一緒にいたが、シンナー臭いということもなかったから
素なのだろう。涙を流しながら「なんか、かわいそうに
なってきた」それは異様な光景だった。そして、とても冷静に
「もう帰ろう」とK子が言い、来た道を引き返す。
俺とK子が最後尾。「なあ、1人じゃ怖いから、一緒に振り返ら
ない?」と俺が言って、2人で振り返った。
すると、月の影は、今度はまるで我々の返りを見届けるように
立っているかのように見えた。

今までの人生であんなモノを見たのは初めてだ。
人に話す時は霊を見たと言っているのだが、俺は今でもあれは
8人の恐怖心が月の陰影をそう見せたのだと言い聞かせている。

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