洒落怖超まとめ

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いつもいる客

   

34 sage 2005/08/05(金) 18:06:17 ID:NPlffHBPO

あるビジュアルロックバンドの話。
そのバンドは全国ツアー中だった。LIVEの途中、メンバーが客を挑発すると誰もが激しくヘドバンをして盛り上がっていた。
そんな中、一際激しく頭を振っている客に若干霊感があるギターのAが気付いた。最前列の一番左端…。
ビジュアルバンドなだけあって派手な格好の客がほとんでなのに、その女性は地味な格好で髪もただ黒く長いだけのもの。
ヘドバンの最中は勿論のこと、曲が終わるとピタリと止まり俯いたまま動かないので顔は見えない。
Aの中では妙に目立ってはいたがその日のLIVEをやり遂げテンションも高くなっていたのでAはすぐに忘れた。
だがその女性は次のLIVEもその次のLIVEも来ていた。場所は同じ最前列左端。
各地を飛び回りながらのツアーでいつも同じ場所のチケットを取るなんて出来るのか?と思い他のメンバー3人に彼女に気付いているか聞いたが3人とも演奏に夢中だから分からないと言う。
そして最終日、やはり彼女は同じ場所にいた。ヘドバンで髪がバシバシ当たっている隣の客は気にしてないのか気付いてないのか、どちらにしろ変化はなかった。
霊感のあるAはもしかすると彼女は霊かと感じ始めていたがあまりにハッキリ見えているので見た目には普通の人間と区別できなかった。
曲を終え衣装変えで少し時間が空いた時に、Aはステージの端からコッソリ彼女の様子を伺った。すると彼女はその間も激しくヘドバンをしていた…。

35 sage 2005/08/05(金) 18:07:52 ID:NPlffHBPO

曲も無いのに1人で狂ったように頭を振っているその異常な光景に他の客が誰一人見向きもしないことからAはやはり霊だと確信し、ならばと演奏に集中して、ついに最後の曲が始まった。
曲が佳境に差し掛かった時に定位置に戻ると、彼女はほぼ正面に位置していて嫌でも目に入るので下を向いて演奏を続けた。
すると突然、目の前に人の足が見えた。赤黒い血を纏ったような色、左足の小指が無い…。明らかに奴だとAは思った。ついさっきまで客席に居たのに…。
恐怖に襲われながらも演奏しつつ、ひたすら「来るな!消えろ!」と念じているとフッと足が消えたので、ホッと安心して顔を上げると彼女の血だらけの顔が逆さ吊りの状態でそこにあった。
Aは驚いて声を挙げそうになるより先に彼女の口が開き、「どうして?」と一言言うと消え、その瞬間、真上にあった機材が落下しAに直撃し、全身血まみれで倒れた状態で、Aは意識が途絶える直前に孤立した自分の左足の小指を見た。

 - Part 106, 洒落怖