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がのげ

   

367浄水器1@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:06:28.95ID:5E0XTllK0

ごめんなさい。物凄い長文になりました。

自分は、オカルトは信じないわけではないけれど、信じている者に言わせると「オカルト否定派」。信じていない者に言わせると「オカルト信者」と言われるような、ものの考え方を持っているタイプ。
不思議なことが起きても、考えられる全ての可能性というものを考えてから、「勘違い」か「不思議なこと」の決着をつけるようにしている。オカルト半信奉者とか、オカルト半アンチなどと思っている。
そんな自分の、どう考えても「不思議」な体験。

15年前だろうか。日韓ワールドカップを少し過ぎた頃だと記憶している。
恥ずかしながら、その頃の自分はマルチにはまっていた。どんなマルチか、巧く言えないが、浄水器を売り捌いていた。浄水器というと、あの有名なところを思いつく人が多いかと思うが、そんな有名な組織ではなかった。販売するものも、ほんと浄水器だけ。


368浄水器2@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:09:09.02ID:5E0XTllK0

友人と二人で始め、友人と組んで個人宅や、会社事務所に飛び込営業みをしていた。
今では、足を洗って、健全に会社勤めをしているが、最近普及しているウォーターサーバー
を目にすると、時々その頃を思い出すこともある。

大体の家が、浄水器の販売だと名乗るとドアも開けずに門前払いだったが、それでも順調
に売れていた。自分で設定した、販売ノルマを着々とクリアし、どのくらいの大金が舞い込
むのか、どんな使い道にしようか、どんな高級車を買おうか、捕らぬ狸の何とやらな日々を
過ごしていた。

さて、不思議な話に入る。
自分の住まいは、地方も地方。とんでもない田舎。第一次産業や第二次産業が主であり、
ホワイトカラーなんて町役場で働く人間くらいなもの。
その日は、友人とともに、隣町の養豚業を営む人物(A)の家に飛び込んだ。

豚舎に隣接する、一階が事務所、二階が住居という建物。養豚を営むAがおり、当たり障
りのない会話を進める。
当たり障りのない会話から、家族構成は、A、その妻、娘が2人、Aの両親であることが
わかった。
そんな、当たり障りのない会話から、本題(浄水器の話し)へと運ぶつもりだったが、話
しの内容はAの悩み相談となっていたことを記憶している。


369浄水器3@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:10:51.87ID:5E0XTllK0

悩み相談の中身だが、主人の父親は永らく老人ホームに入居しているが、最近は認知症が
強くなってきており、言動もだが、暴力的行動や、厳重な施設の夜間警備を潜り抜けての、
昼夜問わない徘徊行為が増えてきたこと。
Aの妻は体調を崩し入院が続き、先日退院してきたばかりとのことだったが、入退院を繰
り返すスパンが短く、一年のうちにかなりの回数、入退院を繰り返している。そして、原
因もはっきりとはわからない、謎の体調不良とのことだった。
そして、二人いる娘(この時に娘の年齢について、Aは話してくれたかもしれないが、私
が今は記憶していない)のうち、一人の娘が「体を売って補導され」て「あまり、学校に
行かなくなった」こと。
そういった、家族トラブルが、仕事や近所づきあい(消防団も自治会も、参加しないわけ
にはいかないような田舎である)にも影響し、最近は自分もまいっているのだという。

この話の途中、お茶を出してくれた、Aの母親も同席した。Aの母親は、息子の話を補足
するように、悩み相談とも、誰かに聞いてほしい身の上話ともいえるような話しをしてい
た。
自分も友人も、うんうんと聞いていただけだった気がする。しかし、ひと通りAの話しが
終わったところで、自分と友人は、
「水が悪いんじゃないか?商売も数十年来続いているし、土地が悪いということはなか
ろうが、水は流れも変わるし、溜まれば、その中に悪いものも溜め込むというし…。」
などと、アンチオカルトな部分のある自分だが、霊感商法よろしく、浄水器の話しに強引
に切り替えようとしていた。


370浄水器4@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:12:04.15ID:5E0XTllK0

だが、そんな自分たちよりも、Aの母親は一枚上手というか、何というか、
「自分たちも、そう思っている部分はあり、今度、知り合いから紹介してもらった拝み屋
を頼んである。家が上手くいっていない原因が、不可思議な何かのせいだと思っているわ
けではないが、そういったお祓いをすることによって、自分達の気が楽になるかもしれな
いし、あまり金の掛からない拝み屋を頼んである。」
と言い出した。しかし、あまりに、この親子のペースで話が続いては、自分と友人は、こ
こに何をしに来たのかわからなくなる。自分は、トークテクニックなどあったもんじゃな
しに、強引に浄水器の説明をしたと記憶している。最終的に、Aからも名刺を頂戴し、
「お祓いが終わったら、自宅用と事務所用。大型のものが安価ならば、豚舎にも浄水器を
置いてもいいかもしれない。」
と前向きな返答をもらい、その日は終わることとなった。

その、養豚業者への往訪から一日二日ほどして、Aから電話連絡があった。
「今度××日に、拝み屋に来てもらうことになった。ああいう話をしたこともあるし、ど
うせなら、あんたも同席しないか?俺が、あんなことを話したばかりに、あなたにも悪い
ものがうつっているかもしれないし。」
一瞬、(おいおい、縁起でもないな…)と思ったが、その頃は、浄水器マルチを本業とし
ており、暇が多かったこと。それと、オカルトに対して「半信奉者」だったこともあり、
(自分にも悪いものがうつっていたら嫌だな…)という、ちょっとした恐怖心と験担ぎで、
同席させてもらうことにした。
友人は、本業というか会社勤めもしていたが、ちょうどその日が休みであることと、そう
いった「お祓い」は、テレビの心霊特集番組くらいでしか見たことがなく、貴重な体験だ
から、ぜひとも同席するとのことだった。


371浄水器4@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:12:56.45ID:5E0XTllK0

その日がどんな天気だったかなどは記憶もしていない。たしか、友人が自分の家に来て、
そこから自分の車一台で、Aの家を目指した。Aの自宅兼事務所に到着したのは昼頃だっ
たと記憶している。
その日、Aの自宅兼事務所には、A、Aの妻、Aの母親、Aが雇っている男性(B)、自
分と友人が集まり、自分達から10分ほど遅れて拝み屋が到着した。
拝み屋は、還暦前後の女性で、自分の住む農村のどこにでもいるような「オバチャン」だ
った。夫?なのか、家族に見える男性に送迎され、拝み屋と、大きな荷物(祭壇や八足な
ど)を車から降ろしたら、どこかへ行ってしまった。

いよいよ、お祓いが始まる。孔雀王だとか、テレビで見るような、いかにもといった結界
を準備する拝み屋。お祓いは、自宅兼事務所の一階奥にある座敷のような畳の部屋で行わ
れることになっていた。商売繁盛の神棚がったが、神棚があるから、その部屋になったの
かはわからない。
「この前、電話で話した神饌ものは用意してあるか?出してくれ?」
といった会話で、Aの妻とAの母親が、台所と事務所を行ったり来たりする。お祓いの間
は、A家族は当然ながら参加するが、家族ではないBは、出荷の近い豚も居り、運送会社
から連絡が入るかもしれないからと、お祓いが行われる畳の部屋から、二部屋隣となる事
務所で電話番をすることになった。自分と友人は、
「あなたたちも従業員?」
と、尋ねられたが、
「取引先の人だ。ついつい、今回の話しをしたものだから、悪いものがうつってたら申し
訳ないと思って、俺が呼んで、わざわざ来てもらったんだ。」
と、代わってAが答えてくれた。拝み屋は、愛嬌のある「おばちゃん」の笑顔で
「ああ、そういうこと。うつったりするようなものじゃないけれど、まぁ、せっかく来て
もらったんなら、Aさん達と一緒に座りなさい。」
と言ってくれた。


372浄水器6@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:14:09.75ID:5E0XTllK0

拝み屋は、巫女さんのような格好をするわけでもなく、よく商店街を歩いていそうな、お
ばちゃんの普段着といった格好のまま、アクセサリーだけを外して、紙垂の取り付けられ
た大きな榊の枝を振り、祝詞を上げ始めた。
神道がベースになっているお祓いであり、儀式中はほとんど平身低頭の姿勢だったが、部
屋を見渡しても、祭壇のご神体が動くわけでもない。篝火の炎が激しく揺れるわけでもな
い。家族の誰かがトランス状態になるわけでもない。結界と祭壇こそ、テレビで見るよう
なものだったが、テレビでよく見るような、お祓いの最中に不思議な出来事が起きるなど
ということはなかった。

途中、微かに電話の音が聞こえ、その後にBが儀式中の部屋に、こっそりとやってきてA
に耳打ちをしていたが、Aは
「後で電話するからと言っておいてくれ」
とBに言い、儀式は続いた。お祓いに参加した者が低頭する中、その頭上で一人一人を祓
い、儀式は終わった。

たしか、拝み屋は、出されたお茶をすすり、Aの母親に拝み屋を紹介した共通の知人の話
しなどをし、その辺によくいる「おばちゃん」の笑顔で、
「憑きものとか、狐とかそういうのじゃないと思うから、これでもう大丈夫だし、あとは、
みなさんの気の持ちようですから。」
と、迎えに来た車に乗って帰っていった。たしか、帰りの際は、自分と友人も、その車に
祭壇や八足を積み込むのを手伝った憶えがある。

とにかく、拝み屋の笑顔から佇まいまで、胡散臭さなどなく、A家族もお祓いの始まる前
よりも、明るい顔で拝み屋を見送ったのを記憶している。
霊能者もマルチ勧誘も、胡散臭いものとしてカテゴライズされるが、何だか自分達だけ胡
散臭い存在だなぁ、と、心が痛んだのを記憶している。最終的には、こういった心の痛み
から、浄水器売りを卒業したわけだが。


373浄水器7@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:15:21.36ID:5E0XTllK0

拝み屋を見送った後、従業員のBが
「Aさん、電話電話!」
と思い出したように口を開き、Aも、はっと思い出したように、Aの母親に
「そうだ、そうだ。さっき、拝んでもらってる時に仲町(なかまち 地名)から、電話が
あったそうだ。」
と話した。仲町というのは、Aの母親の実家であるらしい。Aの家族は、Aの母親の旧姓
や兄弟の名前で呼ぶのではなく「仲町」という地名で、隣の隣の町にあるAの母親の実家
のことを呼んでいた。
Aの母親は
「おや?何かあったかな?」
「電話は、オヤジさん(Aの母親の弟)か、息子の○○さん(Aの母親の甥、つまりAの
従兄弟)かはわからなかったが、『がのげ、四つ持ってきてけろ』って言ってたんですよ。」
と、Bが言うと、Aの母親は少し大きな声で、
「バカ言うな!そんな悪ふざけみたいなことで電話してきたのか?」
と、少し興奮気味で、冗談にもほどがあるとか、本気でそんなことを電話してきたのか、
などと家族同士で言っていた。

自分と友人は、(今日は浄水器の話しはできないかな)というのは、雰囲気で感じていた
ので、お互いに目配せをしてAの家を後にした。その後は、車の中で、
「契約は難しいかな?」
「いや、今日はもう、話せるタイミングではなかったし、仕方がない。日を置いて電話し
てみるわ。」
といった会話をして、その日は、自分の家でゲームをしたり、食事をした後に解散となっ
た。


374浄水器8@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:16:33.04ID:5E0XTllK0

Aに浄水器の件を話すのは、日を置いてと思っていながら一ヶ月近く経ったある日、たま
たまA宅の近くを通ったので、立ち寄ってみた。

Aは、
「忘れていたわけではなかったが、お祓いの効果なのか何なのか、お祓いの後から忙しく
なったので、連絡できずにいたのだ。」
と、説明してくれた。具体的には、Aの父親が精神病院から老人ホームに戻れたこと。A
の妻の病気もはっきりとし、簡単な手術をし、今後の入院の予定がなくなったこと。娘の
スキャンダルだが、娘の通う学校でもっと大きなスキャンダル(地方紙に掲載されるよう
な)があり、学校内の興味が娘ではないところに移ったため、学校に行くようになったと
のことだった。自分が聞かされた、悩みの種は軒並み解決したといったところだった。


375浄水器9@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:18:04.06ID:5E0XTllK0

「ただな…」
と、Aが語った後日談というのが不思議なこと。

お祓いの後。拝み屋が帰り、自分と友人が帰り。Aは、Bに促されたのもあり、Aの母親
の実家「仲町」に電話をしたのだそうだ。夕方くらいに電話をしたが、誰も出ない。その
後、何度か電話をし、夜の7時ぐらいに、やっとAの母親の甥であり、自分の従兄弟にあ
たる人物に電話がつながったのだという。
「昼間は申し訳なかった。取り込み中で電話を替われなかった。」
「ん?うん、どうした?」
「いや、昼間、電話をくれただろう。俺じゃなくて、母親に替わるか?」
「昼間の電話ってなんだ?」
「電話してきたんじゃないのか?俺も、ちょっと取り込み中で、うちの人夫が電話に出た
んだが。」
「いやいや、今日は昼間から山に入ってて、さっき帰ってきたばかりで、電話なんて掛け
られないぞ。」
「あれ?そうしたら、お前の親父さん(Aの母親の弟)かな?『がのげ』だか『まろげ』
っていうのを『四つ』用意してほしいって言われたんだが…」
「はぁ?バカ言え。なんでそんなこと言わなきゃならないんだ。お前、ふざけてるのか?」
「いやいや、ちょっと待て。母親も『がのげ持ってこいなんて、そんな電話する人間がど
こにいるんだ』って、興奮してたが、『がのげ』って何のことだよ?」


376浄水器10@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:20:20.10ID:5E0XTllK0

「いや、お前の地域でも言うだろ…『がのげ』つったら『がんおげ』、『棺桶』のことよ。
しかも、大昔の、仏様を屈んで入れる丸桶のことを、こっちのほう…うちの親父ぐらいの
年の人たちは『がのげ』とか『まろげ』(まるおけ が転訛した?)って言うんだよ。」
Aも、それには驚いて(それで、母親もそんなバカな頼みごと電話があるわけがない)と
興奮していたのかと思ったそうだ。Aは
「そうしたら、電話してきたのは親父さんでもないか…?」
と、尋ねると
「あ、○○さん(Aの母親)から聞いてなかったかな…、うちの親父この前から総合病院
に入院してるんだよ。それで、俺と妻が山仕事に行ったら、家には母親しかいないんだよ。」
と帰ってきたとのこと。Aは、それは失礼なことを、と謝りつつも、(おかしいなぁ。B
も間違えたり、変なこと言う人間じゃないしなぁ)と思ったそう。
その後、AとA母親で話したそうだが、丸い棺桶はもうAの母親(当時で70歳くらい?)
が、自分の祖母の葬儀の時に見た切りで、『がのげ』『まろげ』という言葉を使うのは、地
元の高齢者でも、ほとんどいないのではないか。また『四つ持ってこい』というのは、A
の母親の兄弟が4人兄弟なので、少し気味の悪いものを感じるといったことを話したそ
うだ。

そこで、拝み屋に再度お祓いを頼もうかと、拝み屋に電話をしたそうだが、拝み屋曰く
「多分だけどね、それは、お宅に憑いていたものが、祓われたくなくて、苦し紛れにした
イタズラだから。気にしなくていいですよ。○○さん(Aの母親)の実家を名乗ってたか
らといって、○○さんに何か憑いていたわけでもないですよ。」
と、軽やかに諭されたと。実際のところ、先に述べたように、家庭環境も良いほうに向か
っており、不思議な電話の後に何かが起きたりしたこともないそう。
最終的にAには、ウン十万円の浄水器を4台も購入してもらったので、お祓いに参加し
たことも含め、15年前と言えど記憶には残っている。友人は、お祓い後日談を「怖い」
と言いつつも、「抜け駆けしてA宅を訪問しやがってズルい、おごれ」と言われたりもした。


377浄水器11@無断転載は禁止2017/08/21(月) 22:21:13.34ID:5E0XTllK0

自分は今は、マルチからも足を洗い、住まいも変わり、家族を持ち、真っ当な仕事をして
いる。

なぜ、この幽霊も何も出てこない、不思議な電話だけの話しをここに書いたかというと、
この目のお盆で、実家に帰省した際に、Aの豚舎の近くを通って思い出したこと。そして、
一緒にマルチをしていた友人と飲みに行ったときに、A宅での不思議な話を思い出し、酒
の肴にしようとしたところ、友人がこの件を全く憶えていないという、新たな不思議に遭
遇してしまったからだ。
一緒に浄水器を売ってたあの頃のことは、黒歴史だよなぁ、お互い嫁さんには話せないよ
なぁ、という話では盛り上がったのだが、養豚業者Aを訪ねたことも、その後浄水器4台
成約になったことも、お祓いに参加したことも、お祓いの後日談がちょっと不思議だった
よなと話しても、友人は養豚業者Aのことは、まるで記憶にないという。
「隣町の、ここを通っていくと豚舎があるじゃん」
というと
「そこはわかる。その豚舎の先にある川で、春先に大きなヤマメを釣ったばかりだし。」
といった塩梅だった。

オチらしいオチもなく、これだけ長い話になってしまい、申し訳ない。
お盆の帰省から、自宅に戻ってきた今は、よくある「怖い体験や、つらい体験の記憶を、
無意識のうちに封じ込めてしまう」というやつなのかなぁとは、思っているが…。

転載元:https://mao.5ch.net/test/read.cgi/occult/1497936493/

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