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さっちゃん

   

736本当にあった怖い名無し2019/10/01(火) 04:32:44.39ID:hMXn9B9+0

俺がよく行ってた、あまりたちのよくない一杯飲み屋に、
「サッちゃん」って呼ばれてる人が来てたのよ。
その人は男で60代、頭が禿げて小柄で、
ガラの悪い常連の中では言葉少なく、いつもにこにこしてたな。
しゃべるときは誰に対してもていねいな口調で、
けど、バカにされてる雰囲気でもなかった。

週に2、3回はそこに来てたが、つまみはいつも関東炊き。
銚子 数本飲んで、10時過ぎには帰っていく。
彫物があるんで堅気ではねえんだろうが、人のいいオッサンて感じだった。
その人があるとき「また山田さんが来るようになった」ってぼそっと言った。
俺は隣りにいたが、意味わからないんで黙って顔を見ると、
サッちゃんは「ほら」と言って上着を脱ぎ、シャツをずり下げて首を見せた。


737本当にあった怖い名無し2019/10/01(火) 04:33:47.53ID:hMXn9B9+0

すると、両肩の彫物の上の首のまわりぐるっとが、赤くアザになってたのよ。
「ひでえな、アレルギーかなんかか?」そう聞いたら。
「いや、夜中に山田さんが首絞めてくるんで」続けて、
「今晩も来るのかなあ、・・・嫌だなあ」って言い残して帰ってった。

サッちゃんは次の日も来て、また俺の隣に座ると、
「山田さんがなあ、どんだけ謝っても許しちゃくれねんだよ。困ったな、
 ああ、嫌だ嫌だ。俺も覚悟決めにゃあかんかなあ。気がのらないなあ」
って言いながら、上着をはだけて見せたのよ。
したら、内ポケットに白い木鞘が見えて、ドス呑んでるんだってわかった。

俺が「おいおい、危ねえなあ」と冗談めかして言うと、
低い声で「お前に何がわかる!」って吐き捨て、
急に立ち上がって、飲み食いせずに帰ってった。
そんときは、普段と違う、なんとも言えない迫力があったんだよ。


738本当にあった怖い名無し2019/10/01(火) 04:35:18.23ID:hMXn9B9+0

その翌日から、サッちゃんは飲み屋に来なくなって、
10日ほどして、死んだって噂が聞こえてきた。それも自分で頸動脈を切り、
部屋の天井まで血が飛んで、それは酷いありさまだったらしい。
でな、マスターに前の話を少ししたら、
元ヤクザで若頭までいったマスターは半笑いで、
「あの人、なんでサッちゃんって呼ばれてたか知ってるか?」

こう聞いてきたんで、「名前に幸(サチ)がつくんじゃねえのか?」
そしたら、マスターはますます笑って「それな、サッちゃんってのは
 殺人者の略だよ。若い頃に一人殺して、長くムショに入ってたんだ。
 だから、殺ちゃん」 「ええ!? 誰 殺したんだよ?」
「ああ、飯場の元締めで、そういや、たしか山田って言ったなあ」
こう答えやがったのよ。


転載元:https://mao.5ch.net/test/read.cgi/occult/1566820423/

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