距離が5mを切ったあたりのことだ。
しゃがんでいた人影がゆらりと立ち上がり、
俺のクルマの進行方向にふらふら飛び出してきた。
ブレーキでは絶対に間に合わない。
「うおおー!!」
俺は叫びながら咄嗟に右に急ハンドルを切った。
ある程度徐行して注意していた事もあって、
なんとか間一髪それを回避することができた。
まず安堵と同時に怒りが込み上げる。
「酔っ払いか?」俺は運転しながらバックミラーでたった今やり過ごした
人影を探すが、走ってきた路上には誰もいない・・・・・。
そして数瞬が過ぎ、冷静に状況を振りかえれる精神となったとき、
俺は頭から冷水をぶっかけられたように全身が総毛立つのを感じた。
「おい、今の見たか!」
助手席のいとこに話し掛けても、彼も震えて首を振ってうずくまっているだけだ。