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サンカクシ

   

8022019/08/15(木) 15:15:11.39ID:99rJl6UD0

盆休みで時間ができたので小中学生時代の嫌な出来事を綴ってみます
口止めされていたわけではないけど、他言していい事とは思えなかったので今まで人に話したことはありません
が、流れた年月も長く、この辺で吐き出して少しでも気持ちが軽くなればという思いもあります
ここなら本当か嘘かも分からない場で丁度良いですし
自分の為の覚え書きを兼ねていますので、思い出せるだけ出来るだけ詳しく書きました
無駄に長いと感じたら申し訳ないです
人名はもちろん仮名、自分の名は裕ということにします
昭和の話です
電話は固定電話のみ、その他時代の状況を含み置き下さい
また、言葉遣いは適当な仮方言みたいな感じで地域を濁します

8042019/08/15(木) 15:19:23.79ID:99rJl6UD0

小6の夏休み、初めて慶太に出会った。
その日俺は一人で近所の小川に出掛け、ザリガニ捕りに夢中になっていた。
住んでいたのは地方の町で当時はまだまだ自然も豊か、ザリガニ捕りはメジャーな娯楽の一つだった。
慶太も一人で釣りに来た様子で、俺の後に川に入ってきたが見かけない顔。
話しかけると近所に住む同学年と分かった。
地元の同学年の子をなぜ知らなかったかというと、実は不思議でも何でもない。
俺の家は市と市の境界付近にあり、道路一本隔てた向こう側は隣の市で学区が違ったのだ。

慶太とはすぐに意気投合し、その日のうちに彼の家に遊びに行く仲となった。
家には慶太の祖母と姉がいた。姉は茜といい、2こ上だが気さくで朗らか、活発な可愛らしい人。
すぐに俺は気安く茜ちゃんと呼ぶようになった。
交流が深まるにつれ段々知るようになったことだが、慶太の家は在日韓国人一家だった。
慶太・茜ちゃん・母方の祖母、他には母親がいるだけの4人家族。父親不在の事情は知らない。
祖母はしばらく前まで韓国の田舎でまじない師のようなことをやっていたという。
娘を頼って日本に移り住んだわけだが、日本語は普通に話せていた。そういう世代なのだろう。
まじない師というだけあって色々と奇妙な道具や衣装を持っていたのには興味を惹かれた。
やたら大きな扇、神妙な鈴、面妖なデザインの笠、禍々しい壺、お札の数々。
この祖母のことを俺は気軽にばあちゃんと呼び、向こうも俺のことを裕ちゃんと呼んで可愛がってくれた。
母親は夜の仕事をしているらしく、日曜に遊びに行っても日中はずっと寝ている。
代わりに家事を受け持っているのが茜ちゃんで、美味しい手料理を何度も御馳走になった。


8052019/08/15(木) 15:20:55.63ID:99rJl6UD0

茜ちゃんの思い出は沢山ある。
女だてらに(それも中学生)俺と慶太の虫捕りに付いて来てはしゃいだり、禁じられていた渓谷での遊泳を3人でやったり。
茜ちゃんがいきなり下着姿になって水に飛び込んだ時はドギマギして、正直仄かな恋心が芽生えた。
慶太が俺の家に遊びに来ることももちろん多かったが、それに茜ちゃんが同伴してくることが度々あった。
俺の親にはちょっと変わった子達という印象を与えていたようだ。
一人っ子の俺は仲の良い姉弟が羨ましかった。

この翌年、俺と慶太が中学生になった年の梅雨、茜ちゃんは病を得て入院した。


8062019/08/15(木) 15:22:12.21ID:99rJl6UD0

茜ちゃんの入院は本当に突然だった。何の予兆もなかった。
病名は聞いていない。あるいは聞いていても当時の俺の頭には入らない名称で忘れてしまったのかもしれない。
見舞いに行くと茜ちゃんは「受験生なのに勉強遅れる、大ピンチ!」と歎いてみせた。
そして、ホントはサボれてありがたいけどね、と笑って舌を出した。
その時点では俺も事態をさほど深刻には捉えていなかった。
が、入院が長引くにつれ不安は徐々に増していく。
結局、夏休みを茜ちゃんはずっと病院で過ごすこととなった。
病室では見舞いに来た茜ちゃんの同級生と遭遇することも多い。
見舞いの品の数々、千羽鶴や寄せ書き、手作りの何やら諸々、それらから茜ちゃんは学校でも人気があることが察せられた。

秋。見舞いの面会時間が終わり、茜ちゃんの同級生グループと帰るタイミングが一緒になったことがある。
病室を出た途端、その中の一人が声を殺して泣き始めた。それを見て状況は想像以上に悪いのではないかと血の気が引いた。
とは言え、冬になっても茜ちゃんにやつれ果てた、痩せ細ったというような見た目の変化は特に感じられなかった。
しかし、笑顔から生気が消えた。
周りに気を遣って無理に笑顔を作っているような痛々しさがあるのだ。
更に見舞いに行っても茜ちゃんに会えないことも増えてきた。
慶太にどうなっているのか本当のことを教えてくれと頼んだ。
慶太は自分も知らないんだと俯くばかりだった。

そんなどんよりと息苦しい日々を重ねていたので、茜ちゃんが退院するとの慶太からの報せは青天の霹靂だった。
嬉しくて叫びながら飛び跳ねた経験はその時しかない。


8072019/08/15(木) 15:23:51.28ID:99rJl6UD0

茜ちゃんの退院の時期はクリスマス前とのことだった。
家でクリスマスを一緒を過ごせる! 
クリスマスプレゼントと退院祝いを兼ねたすんごい贈り物をしよう!
でも何を贈ればそれほどに喜んでくれるか、頭を捻っても良い知恵が浮かばない。
もたもたしているうちにもうクリスマスの前の週になっていた。
そうだ、慶太に相談しようと思っていると、週末土曜日、折りよく向こうから電話が掛かってきた。
明日うちに来ないか?
行くよと二つ返事で了解した。
実はこの頃になると俺と慶太の互いの家の行き来は極端に少なくなっていた。
むしろ病室で顔を合わせることの方が多いくらいだった。

翌日曜日、慶太の家を訪れ呼び鈴を押すとばあちゃんが出てきた。
暗い顔をしていたが俺と気付くと微笑み、居間に通してくれた。
慶太は私の遣いで出掛けてるから戻るまで待ってなさいと言う。
出されたジュースを飲みながら、傍に座ったばあちゃんに問われるままに中学生活のことなど話す。
話が途切れたタイミングで俺は、茜ちゃん退院決まって良かったね、と話を振った。
気になるのはその件だ。
ばあちゃんの顔が曇った。俯いて押し黙る。何か考え込んでいるようだ。
俺は焦って次に口にする台詞を必死に考え始めた。
おもむろにばあちゃんが顔を上げ、言った。
頼みがある。
妙な迫力に気圧されながら、僕にできることなら、と俺は返した。
裕ちゃんにしかできんことや。
ここまで言ってばあちゃんの言葉はまた途切れ、顔を歪める。
次に言うべき不吉な言葉を何とか喉から押し出そうと葛藤しているようにも見える。
口を開く。
「茜を女にしてやって欲しい」


8082019/08/15(木) 15:25:31.32ID:99rJl6UD0

ど、ど、ど、どういう意味?
思い切り噛みながら俺は聞いた。
ばあちゃんの言葉の意味が分からないわけではなかった。
が、聞き間違いかもしれない。俺の解釈が違っている恐れもある。
そう思うしかないほど、ばあちゃんが口にしたのは非日常的な台詞なのだ。
その俺の問いに対するばあちゃんの答えは、回答としてはズレた内容だった。

茜はもう死ぬ。

目眩を覚えた。吐き気すらして、貧血を起こしたことを悟った。
ばあちゃんはもう淀むことなく、淡々と一方的に語り始めた。

茜の退院は一時帰宅でしかない。最後のクリスマスを家で過ごせるようにとな。
病院に戻ったらもう家には帰ってこれん。だからこれが最後の機会になる。
家におるのはクリスマスを挟んだ一週間だけや。
・・・茜はな、生娘のまま死んだらサンカクシんなるんよ。
そうなったら永遠に続く地獄の苦しみや。早く男を知るしかない。
だが、できるもんがおらん。
親戚付き合いはないし、信頼できる男の知人もおらん。
だからといって人となりも分からん相手に任せるわけにはいかんやろ?
もう裕ちゃんしか頼める相手がおらんのや。
やってくれるな?

でも、でも茜ちゃんの気持ちもあるし・・・。子供だし・・・。
俺は混乱の極みにいた。
ばあちゃんの声のトーンが跳ね上がる。
茜を地獄に堕としてもええのか!
俺は反射的に立ち上がり、玄関に向かって駆け出していた。
ばあちゃんに狂気めいたものを感じ、いたたまれなくなっていた。
無理です!
それだけ言い残して俺は家を飛び出した。


8092019/08/15(木) 15:27:29.76ID:99rJl6UD0

ばあちゃんの言葉の中にあったサンカクシ、これが俺は気になった。
だが、今に至るも意味はよく分からない。
サンカクシ=山隠しで、神隠しのようなことかとも考えた。
しかし、それでは後に慶太に聞くことになった話とは齟齬を生じる。
そもそも混乱していたし、サンカクシではなく別の言葉がそう聞こえただけかもしれない。
結局、自分の中で結論は出ないままだ。

話を戻す。
思いがけない成り行きになって気まずかったものの、俺は茜ちゃんには会いたかった。
自力で何とかプレゼントの用意もしていた。
それでクリスマスの日、意を決して慶太の家に電話を掛けた。
電話に出たのは慶太だったのでホッとした。が、様子がおかしい。
涙声? それに気付くと同時に慶太は呟くように言った。
昨日の夜、姉ちゃん死んだ。

俺がどれだけショックを受けたかはくどくなるので書かない。
お通夜でも葬儀でも慶太とは言葉を交わすことはなかった。
慶太はうなだれたまま小さくなっており、言葉を掛けられる雰囲気ではなかったのだ。
そして、そのまま俺と慶太との交友は途絶えた。
元々学校が違うので連絡を取り合っていないと消息も分からなくなる。
近くに住んではいるが、慶太宅方面は慶太の家に行くのでなければ何の用事もない、古い住宅街が広がるだけの地。
それに行動範囲が違うのか、たまたまどこかで行き会うということもなかった。
そうして慶太の顔を一度も見ることがないまま2年近くが過ぎた。


8102019/08/15(木) 15:28:51.24ID:99rJl6UD0

秋の夕方、受験勉強に倦んだ俺は小川の傍に佇んでぼんやりと水の流れを眺めていた。
随分長くそうしていたように思うが、ふと人の気配を感じて振り向いた。
そこにやけに背が高く伸びた慶太がいた。
慶太も面食らった表情をしていたが、ゆっくりと歩いてきて俺の横に並んだ。
久し振り。同時に声を発した。
そういえばお前と初めて会ったのここだったよな。
俺が言うと慶太は微笑み、近況を聞いてきた。
それからしばらくは取り留めもなく受験の愚痴など言い合った。
会話が途切れた時。慶太はなぜか深呼吸をして、そして言った。
姉ちゃんのこと、すまなかったな。

そんなこと、と俺が言いかけると手を挙げて遮り慶太は続けた。
ばあちゃんに変なこと頼まれたろ?
知っていたのか、と妙に気恥ずかしくなった。
俺、ばあちゃんに頼まれてお前のこと呼んだけど、頼み事のことは聞かされてなかった。
慶太はそう言って、申し訳ないという風に俺に向かって手を合わせ軽く頭を下げる。
俺は迷っていた。
茜ちゃんの件で色々聞きたいことはある。しかし・・・。

あれからあったこと、話してもいいか?
思いがけず慶太の方からその言葉が出て来た。


ここからは慶太に聞いた話になる。


8112019/08/15(木) 15:30:09.02ID:99rJl6UD0

茜ちゃんが帰宅する前夜、慶太はばあちゃんの部屋に呼ばれた。
ばあちゃんは改まった様子で慶太に告げた。
お前はやらねばならんことがある、と。
俺が聞かされたような話をこの時慶太も初めて聞いたらしい。
姉の余命がもうあまり長くないこと。
何としても姉を女にして救済しなければならないこと。
ばあちゃんは迷信深い、そんなことに意味はないと慶太は抵抗した。
が、ばあちゃんは激怒した。

うちの血筋の女は初潮を迎えた後に生娘のまま死ぬと化け物に変じて害をなす。
それは本人にとっても久遠の苦しみとなるし、襲われた方も大変なことになる。
昔は家の女が初潮を迎えたら親族の誰かがすぐに破瓜して禍根を断ったものだが、今はそういう時代ではない。
その為打つ手が遅れ、こんな事態になってしまった。
時間がない。頼める相手がおらん。
裕ちゃんにも断られてしもうた。
お前が茜を女にするんや。死後の苦悶から救い出すんや。
クリスマスイブの夜、覚悟を決めてばあちゃんの言う通りにせい。
細かいことは何も心配せんでええ。

逆らうことが許される空気ではなかった。
慶太は自殺を考えるほど悩んだという。


茜ちゃんが帰ってきた。
自宅でも横になっている時間が長い生活だったが、それでも茜ちゃんは嬉しそうだった。
茜ちゃんの入院後はばあちゃんが食事を作っていたが、それを手伝ってはしゃぐ。
入院前に作りかけていた戦車のプラモデルを完成させる。
懐かしの品々を持ち出してきてその思い出を語る。
また、壁の古い落書きをじっと見詰めて涙ぐんでいることもあった。
慶太がアルバムを引っ張り出してくると、二人で写真の一枚一枚に手書きのキャプションを付ける作業に没頭した。


8122019/08/15(木) 15:32:54.69ID:99rJl6UD0

クリスマスイブの当日、家の中は暖房が効き過ぎて暑いくらいだった。
夕食は豪華で、仕事を休んだ母親も参加して立派な家族パーティーといった趣。
茜ちゃんは食べられるものが限られたが、工夫を凝らして見た目華やかに盛り付けられた皿に目を丸くした。
やればできる母親の技だった。
食事の後はゲームなどに興じ、やがて茜ちゃんはいつものように早めに寝室へと連れて行かれた。
サンタさん来てくれるかなぁ、と振り返り悪戯っぽく笑う。

深夜、慶太はばあちゃんの部屋にいた。
全裸にされ、浴衣だけ羽織らせられた。帯はない。
酒を飲まされる。濃く立ち込める香の匂いに頭がぼうっとしてくる。
意識しないうちにぺニスは勃起していた。
やがてばあちゃんに立つように言われた。が、うまく立ち上がれない。
母親が入ってきて、ばあちゃんと二人で慶太の両脇を支え部屋を出た。
そのまま3人で家の中を進み、茜ちゃんの寝室へと向かう。
部屋の扉を開けると、ここにも香が炊かれている。
茜ちゃんは部屋の真ん中に据えられたベッドの、掛け布団の上に寝ていた。
全裸で扉の方に脚を向け、仰向けの格好で。それでも薬を飲まされているのか、静かに寝息を立てている。
慶太はベッドの上に押し上げられた。後ろからするりと浴衣を脱がされる。
母親とばあちゃんがベッドの左右へ移動し、茜ちゃんの両脚を持った。躊躇いなく開く。
慶太は背中を押され、前のめりになった。ばあちゃんが性器に手を添え導く。


813102019/08/15(木) 15:34:16.00ID:99rJl6UD0

いつの間にか慶太は、姉の中にいた。
少し時間が飛んでいるような錯覚を覚えた。
熱い未知の感触が慶太を包み込み、もう訳が分からなくなった。
気が付くと激しく腰を動かしている。
絶頂に達する間際、姉の顔を見た。目を見開いていた。
姉の唇が微かに動く。・・・酷いよ、そう一言漏らして姉はまたゆっくりと瞼を閉じた。
それと同時に慶太は精を吐き出していた。気力尽き果て、そのまま倒れて姉の胸の中に顔を埋める。
ようやった、とばあちゃんの声が聞こえた。

しばらくそのままでいた慶太は違和感を覚えた。
姉の胸が動いていない。鼓動の音が聞こえない。
火照った身体が一気に冷えていくのを感じた。
姉の鼻に掌を当てる。呼吸をしていない。

茜ちゃんは既に亡くなっていた。


814112019/08/15(木) 15:35:32.60ID:99rJl6UD0

以上の話を慶太は不自然なほど詳しく細かなところまで語った。
やはり思い切り誰かに吐き出したかったのかもしれない。
その相手としては確かに俺が適任だろう。
俺は話を聞いて充分打ちのめされていたし、色々と思うところもあったが、とりあえず慶太に掛けるべき言葉を探した。
しかし、それが見つからない。どう反応すればいいのか分からない。
二人とも無言の時間がしばらく続いた。
ようやく慶太が口を開いた。
・・・姉ちゃんがな、出て来たんだよ。

初七日の法要後。
慶太が寝ていると息が苦しくなって目を覚ました。
見ると茜ちゃんが胸の上に跨がって無表情に見下ろしている。
身体は一切動かない。力むことはできる金縛りとは違い、全ての力が抜けてどうにもならない感覚だという。
茜ちゃんは何事か呟いている。
耳を傍立てると、何であんなことしたの何であんなことしたの何であんなことしたの・・・・・・と、
ただそれだけをなぜか甘く囁くように繰り返していた。
胸が締め付けられる思いで長時間それを聞いているうちにいつの間にか眠りに落ち、気が付くと朝。
夢か、と思った。
だが、毎日というわけではないが、それが何度も繰り返された。
悩み、慶太はばあちゃんに相談した。
するとばあちゃんは目を剥き、そんなわけあるか! と怒鳴った。
茜は成仏しとる! ちゃんと御先祖様のところへ行っておる!
あまりの剣幕に慶太はやっぱり夢を見たんだねと引き下がるしかなかった。
ただ、ばあちゃんはそれを機に急激に呆けていったという。今では施設に入っている。
そして。
茜ちゃんの出現は今も続いている、と慶太は言った。


8152019/08/15(木) 15:36:59.60ID:99rJl6UD0

俺は震えが止まらなくなっていた。
怖いから、というのではなく何とも表現し辛い感情でそうなっていた。
何か声を掛けなくてはならない。
俺が選んだ台詞は凡庸なものだった。
「それは罪の意識が見せる幻だよ」
でもお前は何も悪くない、どうにもならないことだったんだから、と続けた。
「俺の意識・・・」
慶太は力無く微笑んだ。
「そうかもな」
だから姉ちゃん、裸で出てくるんかな。
だから姉ちゃん、自分であそこ開いて見せるんかな。
俺の方に向き直り独り言のように呟く慶太の瞳は、何も見ていないと感じさせるほど光を失っていた。
病んでいる、と思った。
突然くるりと背を向け、慶太は歩き出した。
「ありがとう」背を向けたままそう言った。
「姉ちゃんが出て来た日、俺いつも夢精しとる」
それが最後の台詞だった。


その後慶太とは会うことも連絡を取ることもなかった。
慶太は恐らく中学卒業を機に引っ越したと思われ、高1の春に思い切って慶太宅を訪ねた時には空き家になっていた。
転載元:https://mao.5ch.net/test/read.cgi/occult/1561192635/

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