洒落怖超まとめ

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トランク

   

819本当にあった怖い名無し2022/02/27(日) 22:13:31.37ID:A/xPbO5S0
ゼミの先輩(Aとしておこう)から聞いた話。(長文なので連投します)
Aが二年生だった年の夏休み、サークルの仲間と所謂心霊スポットに行くことになった。
Aの友人でオカルトに興味のあった、高校のころからの同級生(Bとしておこう)が言い出したもので、A、B、サークルの先輩C、A・B・C共通の友人Dの合計4人でBの実家近くにある心霊スポットに行ってみようという話になった。
そのスポットは山の中腹にあるトンネルで、白か灰色のセダンで行くと霊が見えるとか、人魂が見えるとか言われていた。
Aは当時灰色のセダンに乗っていたので、Aが運転することとなった。
4人は夜9時過ぎにAのアパートに集合、運転席にA、助手席にB、後部座席にCとDが乗り込んだ。

例のトンネルへと向かう途中、Aはコンビニに立ち寄り、眠気覚ましのエナジードリンクを人数分と、「とある検証」のために一番安い煙草を買った。峠の入り口につく頃には日付が変わり、翌日が平日ということもあってAたちの車以外誰もいなかった。
峠道をAたちの車が上っていく。今のところなんともなさそうだ。車内は静寂に包まれたまま、例のトンネルが見えてくる。トンネルに車が入り、ちょうど真ん中あたりに来たところで、Bは車を止めるようAに指示すると、勇み足で車を降りた。A・C・DもBに続いて車を降りる。そのトンネルは、なんてことのない、コンクリートで覆われたトンネルだった。
Aはコンビニで買った安煙草をポケットから取り出し、火をつけた。以前怪談本に乗っていた「煙草の煙が風もないのにたなびいたら人ならざる者がそこにいる証拠」という記述を検証しようとしたのだ。
果たして煙はまっすぐに上った。
「なんてことはない。やっぱり噂はうわさでしかない。霊はいない。」Aがそう断言すると
B・Cは悔しそうな顔を浮かべ、Dは安堵したような表情を浮かべた。
「びびって損したじゃあないか。」
「まあただのうわさだしな。」
口々に感想を述べる。
「まぁ度胸試しにはなったよな。」Bがそう言って車に乗り込むと、残りの3人も車に乗り込んだ。

820本当にあった怖い名無し2022/02/27(日) 22:14:09.03ID:A/xPbO5S0
車はトンネルを抜け、タイヤチェーンを巻けるよう広くなった路肩でUターンすると、再びトンネルを通って坂を下っていった。
トンネルを抜けて30秒ほどしたころ、急にハンドルが重くなった。パンクでもしたのだろうか。いや、パンクならハンドルがどちらか片方にとられるはずだ。
Aはほか3人の許可をとると、山のふもとにあるキャンプ場の駐車場に車を止めた。峠の街灯はオレンジ色で暗く、キャンプ場の自販機の明かりが最も明るい光なのだ。Aは車を止めると、四隅のタイヤを確認する。やはりパンクはしていない。
ただ、前輪に対して後輪がやけに低くなっていることに気づいた。後部座席のC・Dは特に太っているわけでもなく、トランクの中にはスペアタイヤしか入っていない。AはB・C・Dに車を降りてもらい後輪が沈んでいる事を確認してもらう。3人とも沈んでいると言い、Aが確認のためにトランクを開ける。中からは、茶色い水があふれだしてきた。

「・・・おかしい。」4人がトランクを凝視していると、金属の臭いがたちこめてきた。
「血だ。」
Dが泣きそうになりながらつぶやく。
自販機の光に照らされた茶色い水は、赤黒く、強烈な臭いを放つ。Bが立ち尽くすA・C・Dを尻目にキャンプ場の蛇口をひねり、つないであったホースをトランクに向ける。ボディーの血痕は洗い流せたものの、トランクの中からは血があふれだす。
「もう埒が明かない。」そう言ってBはトランクを閉めて運転席に乗り込む。3人も狼狽して乗り込む。Bが運転する車は、峠と猛スピードで下り、市街地まで走り続けた。

Bは24時間営業のディスカウントストアに車を止めた。駐車場にある街灯の真下、再び車を降りてトランクを開ける。
「噓だろ。」一人でつぶやく。A・C・Dも車を降りてBのいる車の後方へと向かう。
トランクの中はスペアタイヤがあるだけで、濡れた形跡すらなかった。

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