洒落怖超まとめ

厳選じゃない、完全網羅のまとめサイトを目指しています

トンネル

   

660 トンネル 1/3 sage 2005/08/23(火) 05:09:37 ID:g9oL9ruw0

長文すんません。
かつて勤めていた職場のバイトの女の子から聞いた話しです。

ある日、そのバイトの女の子(Mちゃん)とその彼氏(A男)、
Mちゃんの女友達(Cちゃん)とその彼氏(B男)で
「おばけトンネルに行こう」という話しになりました。
集合場所は両親と同居するMちゃん宅です。
そこにA男はクルマを置き、B男のクルマ1台で現地に向かうことにしました。
運転はB男。助手席にCちゃん。後席右側にA男。後席左側にMちゃんです。
目指す「おばけトンネル」はそれほど遠くはなかったと言います。
ほどなく、彼女ら4人は目指すトンネルにつきました。
それらしい雰囲気があったためか、彼女らはトンネルの手前でクルマを一度止めます。
「ねえ、やっぱり止めない?」と助手席のCちゃんが言いました。
ちょっとヤンキーなA男は「もうビビってるのか」と笑い飛ばし、
竹を割ったような性格のMちゃんは「なんか感じるとか?」と一笑します。
「そういうんじゃないけど、なんかヤバい感じがするんだよねえ」
「で、どうすんだB男」とA男が後席から急かします。
いつもなら饒舌なB男ですがこの時はなぜか無口でした。
「これ通り抜けなきゃ来た意味ねえだろうが」とA男がさらに笑います。
この一言が車内の空気を決めました。
「だよね。よし! GO!」とMちゃんがB男の肩を叩きました。
クルマが前進し始めます。他の車両は通る気配すらしません。

661 トンネル 2/3 sage 2005/08/23(火) 05:10:15 ID:g9oL9ruw0

「おい! このトンネルってこんなに長いのか?」
A男が気づきました。
トンネルに入ってからずいぶんと時間がかかっているように感じました。
「関越トンネルより長いくらいに思えた」とMちゃんは表現しています。
「おい! B男! 早く抜けろよ!」と痺れを切らしたA男が怒鳴ります。
しかし、その前から助手席のCちゃんはなぜかすすり泣き始め、
B男は押し黙ったままで返事もありません。
「ねえ、どうしたの? 早く出ようよ! ホントにヤバいって」
Mちゃんが運転席の肩を揺さぶりました。B男の肩が震えていました。
「違う!」
突然B男が叫びました。
「うおおお! おどかすんじゃねえ! 何だ! いきなり!」
A男が運転席のヘッドレストをぶっ叩きます。
「進まねえんだよ!
さっきからアクセル、ベタ踏みしてんのに、前に進まねえんだよ!」
B男がA男以上の声で怒鳴ります。
「見ろよ! もう1速なんだよ!」
覗くとシフトレバーはたしかに1速に入っていました。
「なのにぜんぜん加速しねえんだよ!」

662 トンネル 3/3 sage 2005/08/23(火) 05:10:52 ID:g9oL9ruw0

Cちゃんがついに声を出して泣き始めました。
不思議なことに、1速でアクセルをベタ踏みしているのに、
走り屋仕様の太いマフラーからはいつものデカい排気音が聞こえてきません。
男たちの怒鳴り声の中、Mちゃんも泣き始めてしまいます。
車内が大混乱したままほんの数km/hという速度でクルマが前へと進んでいきます。
ですが、白い靄に包まれたようになぜかトンネルの出口がまったく見えません。
さらにあれだけ騒然としていた車内の音も消えていきます。
と、その時、

バシッ!

突然、大音量の破裂音がトンネル内に響き渡りました。
クルマの中は再び大混乱です。女の子たちは声を限りに泣き叫び、
A男は叫び声とともに天井に頭を激しくぶつけ、B男はクラクションを鳴らし続けました。
しかし4人はなんとかトンネルを通りぬけ、Mちゃん宅まで戻ってきました。
とりあえず全員クルマを降ります。無言が続きます。
「あっ」と誰かが小さく叫びました。Mちゃんはこれが誰だったのか覚えていません。
見るとクルマのフロントウインドウがこなごなに真っ白く割れていました。

663 トンネル 後日談 sage 2005/08/23(火) 05:11:38 ID:g9oL9ruw0

後日談です。

フロントウインドウが壊れたクルマは後日、
B男とクルマ屋に勤めるその友人がローダーで引き上げていきました。
その1ヶ月後くらいのことです。
MちゃんとA男、B男、クルマ屋の友人+他男性1名がファミレスでメシを食ってました。
その時、他1名が
「B男。昨日大宮バイパス走ってたろ?
オレ、何度もハザード出したり、クラクション鳴らしたのになんで無視したんだよ」
とB男を詰問しました。
その時、人間の顔がホントに青くなるのをMちゃんは初めて見たと言ってます。
「なんだよそれ……走ってねえよ!」とB男。
「だから昨日の夜中よ。1時くらいかな。大宮バイパス走ってたろ。
オレ後ろからナンバー確認したもの。それにあのウイングここらではお前だけだろ?」
「だから走ってねえって言ってるだろ!」
なぜかB男は逆ギレです。見ると隣のクルマ屋は下を向いてます。
「ありえねえんだよ! な!」とB男が隣のクルマ屋に同意を求めます。
「あんな、こいつのクルマ、1週間前に潰したんだよ、事故って」とクルマ屋。
「お前ら何口裏合わせてんだよ」と他1名。
仲間うちで喧嘩になりそうになり、A男がその場を収め、
あのおばけトンネルでの出来事に話しが遡ったときには
全員が無口になってしまっていたそうです。

聞いた話しはこれで全部です。
長々とお付き合いありがとうでした。

 - Part 107, 洒落怖 ,