洒落怖超まとめ

厳選じゃない、完全網羅のまとめサイトを目指しています

井戸の中

   

8261/6 2007/08/20(月) 13:08:58 ID:toPP0x3N0

20年くらい前、俺が体験した話。
当時小学生だった俺は、夏休みになると田舎のばあちゃんのところに遊びに行っていた。
ばあちゃんの家の側にはそれほど有名ではない城があって、
夜になると俺や兄貴はよく肝試しに行っていた。

肝試しのコースは、家から出て城に行き、正門を通って城の中庭にある井戸まで行き、
裏門を通って家まで帰ってくる、というコース。
当然夜なので城の中には入れないが、正門と裏門は常に開いていた。
今考えると、井戸なんてやばいものの所までよく行ったと思う。
映画「リング」とか見た今は絶対に行けない。

8272/6 2007/08/20(月) 13:09:33 ID:toPP0x3N0

その日、例年通り肝試しに行くことになった。
メンバーは俺と兄貴と従姉妹のお姉さんの3人。
これも毎年やってることだが、肝試し中は、ずっとビデオカメラで撮影している。
カメラ係りは俺。VHSの大きなビデオカメラだが、その重みが逆に落ち着く。
もちろんレンズを覗きながら歩くのは危ないから、ずっと前方を向けて歩いてるだけだったが。

暗い夜道を懐中電灯一本の明かりを頼りに進む。
俺と兄貴は毎年行ってることもあり、あまり恐怖心はなかったが、
その年初参加の従姉はすっかり怖がっていた。
なので、従姉を間に挟み、3人で手を繋いで歩いていった。

8283/6 2007/08/20(月) 13:10:54 ID:toPP0x3N0

特に何もなく、井戸まで到着。
井戸には落下防止のため蓋がしてあったが、これがガラスの蓋で、中が見えるようになっている。
さすがに俺らもこの井戸を覗き込む勇気はなく、毎年やってる通り、
カメラを井戸の底に向けてしばらく撮影し(当然レンズは覗かない)、
裏門を通って帰ることにした。帰り道も行きと同じように、お姉さんの右に俺、
左に兄貴が立ち、手を繋いで帰っていった。

やがて家に到着。何もなかった。
・・・と思っていた。

8294/6 2007/08/20(月) 13:12:30 ID:toPP0x3N0

家に入り、いつも通り俺らが撮ってきたビデオを見た。
大人達は宴会をしており、すっかり酔っ払ってほとんどが寝ていたので、
行ってきた3人と、下戸な従姉妹の叔父さんの4人だけで見た。

井戸までの道は何もなかった。
しかし井戸を遠くから撮ってるところから、異常を感じた。
井戸がぼんやり光っているように見えた。明かりなんてなかったのに。
笑いながら見ていた俺らだったが、言葉を失った。カメラはそのまま井戸に近づいていく。
井戸は光っている訳ではなく、何か白い“もや”が掛かっているようだった。

8305/6 2007/08/20(月) 13:13:16 ID:toPP0x3N0

俺は焦った。
このカメラは、この後井戸の中を撮影している。
そこに何が映ってるかなんて、考えたくもなく、見たくもなかった。
でも、目をそらすことができなかった。俺らは凝視していた。

いつもは何も映ってない。一時停止してじっくり見るくらい余裕がある。
でもその年は違った。絶対に何かいる。
カメラが井戸の前まで来た。そして、中を・・・
というところで、叔父さんがビデオを止めた。そしてこう言った。
「これはここまで。これ以上は見たらいかん。いいな?」

8316/6 2007/08/20(月) 13:14:13 ID:toPP0x3N0

異論を唱えるものなんて居なかった。
そのビデオテープは翌日、叔父さんがお寺に持って行った。
お祓いして、お寺に預けてきたらしい。

俺らは安心して、怖かったな~よく無事に戻って来れたな~、なんて話していた。
帰り道もずっと手を繋いでたからね~、なんて俺が言うと、従姉妹はこんなことを言った。
「え?帰り道は<俺>君とは手を繋いでないよね?」

俺は震え上がった。そして思い出した。
帰り道、従姉妹は右手に懐中電灯を持っていた事を。
でも、俺は確かに手を繋いでいた。誰かと。

それ以来、肝試しは中止になった。

 - Part 172, 洒落怖