洒落怖超まとめ

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分かってるのは

   

544 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/26 21:04
某チェーン店の居酒屋でバイトしてた頃の話。
Mさんという40代の常連がいた。常連といっても、
俺がバイトを始めた頃から店に一人でやってくるように
なったのだが、ほぼ一月ほどは毎晩のように通ってきた。
何でも居酒屋近くのビジネスホテルに滞在しているらしく、
だいたい閉店間際にふらりとやって来て、本人定番のつまみを
注文する。
それでお互い顔を覚えて、いつしか気安く対応する間柄になっていた。
何せ小さな店舗で、オヤジ系居酒屋だったこともあって、カウンター内
で洗い物をしていると良く話し掛けてきた。

546 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/26 21:06
いつものようにモツの煮込みを出すと、Mさんは気味の悪い話を始めた。
若い頃にヘマをしでかし、その筋の方に拉致されて、ダムの工事現場に
連れて行かれた時の話だそうだ。

Mさんは普通の労働者とは違って、飯場のような所に軟禁させていたらしい。
そこには似たような境遇の人たちが十人ほどいたという。
場所は人里離れた山の中。食事の支度は飯炊き女(50代)がまかなっていた
そうだが、当然食材は近くの村から配達してもらったという。

ある夜、工事現場に繋がる唯一の道路が、大雨で不通になってしまった。
復旧の目処がたたないうちに、三日が過ぎたそうだ。
蓄えていた食料も底を尽き、全員パニックに陥ったらしい。
その時みんなが目をつけたのは、飯炊き女が残飯を食べさせていた雑種犬。
Mさんは詳しく話さなかったが、とにかくその犬を食べて飢えをしのいだという。
「それからなんだよ。動物って分かってんのかね?俺を見たらどんな犬も吠えやが
るんだ、睨みつけてよ」

547 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/26 21:08
俺もMさんが裏稼業の人間であることは薄々分かっていた。
相手は店の客だし、深い付き合いにはならないつもりでもいた。
でもMさんは俺のことを気に入ったらしく、仕事が終わったら飲みに行こうと
誘ってくるようになった。
最初は断っていたが、ある夜、すすめられたビールで少し酔った俺は、誘いに応じて
しまった。

「顔の利く店があるから」
Mさんは東南アジアからタレントを連れてくるプロモーターだと自称していたが、
実はブローカーだった。
連れて行かれた店もフィリピンパブ。
かなりきわどい店だったが、貧乏学生だった俺は結構楽しんでしまった。
Mさんは女の子と延々カラオケを歌っていたが、俺はカタコトの英語で
片っ端から女の子を口説いていた。

548 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/26 21:09
一人すごくかわいい女の子がいて、その子にも話し掛けようとした時、
Mさんは突然マイクを置いてテーブルに戻ってきた。
「その子はだめだぞ。俺のお気にだからな」
Mさんの目は笑っていなかった。
ぞっとするくらい凄みがあった。
回りも雰囲気を察して、場はしらけたようになった。
俺も萎縮してすっかり酔いが覚めてしまった。
Mさんは何も無かったように、再びカラオケで歌いだした。
その姿を黙って見ていた俺に、さっきのお気にの女の子がつたない
日本語で耳打ちしてきた。
「店ノ女ノ子、全部アイツ嫌イ」
「何で?」と俺が訊ねると
「ワカラナイ。デモ、ナンカ見エル時アルヨ」
「何が?」
「死ンダ女ノ子ネ。イッパイ見エルヨ」

俺は思った。
Mさん、分かるのは犬だけじゃないみたいだぞ。

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