洒落怖超まとめ

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奴さん

   

420 名前:自転車操業 投稿日:03/04/21 19:08
私の幼なじみSの話です。

それはSが小学生だった頃・・・
Sは早くに父を亡くし、母と二人で暮らしていた。
その頃母には新しい恋人ができており、
たびたびSの家に来ていた。
母はSが学校から帰ってくると、千円札を渡し、
「暗くなったら帰ってきなさい」と言い、
家を追い出してしまった。
そんな事が何度か続いた。
Sはそれがたまらなく嫌だったそうだ。

Sの母親の噂は町内に広まっており、
毎日昼から男を連れ込んでいるといった内容だった。
そのせいかSは小学校では「淫売の娘」と言われ虐められていた。
私も言葉の意味は分からなかったが、周りが言っているので
同じように虐めていた。

421 名前:自転車操業 投稿日:03/04/21 19:09
そんな時Sは、本当の父の墓の前で、
千代紙を折って遊んでいたそうだ。
Sは千代紙に母や、母の新しい恋人、
学校でいじめるイヤなヤツの名前を書き、
それを奴さんの形に折り、
手の部分を破ったり、マッチで火をつけて燃やす
といった遊びをしていた、ささやかな復讐だ。
その遊びをしている時は、不思議と心が落ち着いたという。

やがてSの母親はその恋人と再婚した。
二人は新しい子供を作らず、Sを可愛がってくれた。
「今はあの頃が嘘のように幸せ」Sはそう言って私に笑った。

その一年後、Sの両親が交通事故に遭って亡くなった。
見晴らしの良い幹線道路で、大型車と正面衝突だったらしい。
即死だったそうだ。

422 名前:自転車操業 投稿日:03/04/21 19:09
しばらくSが学校に出てこなかったので、家も近いと言うこともあり
私は様子を見に行った。
Sは薄暗い部屋、両親の遺影に向かい、「ごめんなさい、ごめんなさい」と
泣きながら謝り続けていた。

私はSに「何故謝るの?事故なんだから仕方ないじゃない」と言うと、
Sは「私が殺したの、子供の頃、お父さんのお墓の前で・・・」と言った
「あの千代紙で奴さんをつくってって話?バカバカしい」私がそう言うと、
「本当にそう思うの?!あなたの名前も書いたのよ!」と叫ぶと、
家を飛び出していってしまった。
私はそのままにもしておけず、Sを追いかけた
Sは町内の共同墓地に向かっているようだった。
墓地に入り、ある墓の前でSは立ちすくんでいる。
近づいた私は、Sの立っているあたりの異様な光景に
愕然とした。

423 名前:自転車操業 投稿日:03/04/21 19:10
おびただしい数の千代紙で折られた奴さんが散乱していた
金や銀の千代紙に夕日が反射して、キラキラと光っていた。
奴さんの一つ一つは手がなかったり、まっぷたつに破かれたりしていて、
一つもまともな形のものはなかった。
Sはゆっくりこちらを振り向き、口を開いた。
目を見開き、まともな精神状態であるとは思えなかった。
「もう全部おしまい、終わりなの、私も、あなたも」
Sは足下に散乱している奴さんの一つ(これは頭の部分が切り取られていた)を
手に取り、広げて私に渡した。
そこには・・・私の名前がかかれていた。
私は恐ろしくなってしまい、「バカバカしい!」と一喝し、
家に帰った。

次の日、Sが実父の墓の前で首を吊って死んでいた。

それが三日前の話。


451 名前:自転車操業 投稿日:03/04/21 23:25
続き

Sの死体はそれは酷かったらしぃ。
彼女の父の墓の側に大きな桜の氣があるのだが、
自分の腹を裂き、梯子で気に登って一気に飛び降りたので、
体内の臓物がずるりと傷口からたれさがり、
大きく揺れたので奴さんに体液だの血液だのが
メチャクチャに飛び散っていたそうだ。
その日の夕方、学校から帰ると母と、警察の人が
待っていた。
墓の管理人の方が、Sと私が墓にいるのを見たので
事情を聞きにきたそうだ。
私はあった事をそのまま話したが、警察の人は何か2、3行メモをとって。
「ありがとうございました」と言い行ってしまった。
母も、「もうSちゃんの事は忘れなさい」そう言っただけだった。

翌日の放課後、私はSの父の墓を訪れた。
思い出したくもないのに、何故か足がそこに向かっていた。
まるでなにかに導かれるように・・・
現場はテープが張り巡らされおり、立ち入り禁止と書いてあった。
おびただしい数の奴さんはもう片づけられていた。
生々しい血の跡と、それを囲む白いチョークの印だけがそこにあった

452 名前:自転車操業 投稿日:03/04/21 23:26
ふと、なにかおかしい事に気づいた。
ちょうどSがぶら下がっていた真下あたりに、大きな黒い染みがある。
明らかに他の血痕とは違うし、白いチョークの印もついていない。
まるでその部分だけ雨が降ったように、地面が黒くなっている。
その黒い染みは、ちょうど頭のない人の形に見えた。
その真ん中、胸のあたりくらいに、金色の千代紙の切れ端が
夕日を反射してちらちら光っていた。

私はテープの中に入り
それをつまみ上げた。
ちょうどTの時になった。金色の奴さんだ(あのときSが私に見せたものだ)。
それを開いてみる(予感はしていた)
そこには私の名前と、そしてさらに書き加えてあった。
「次はあなた」

これが昨日の話。


455 名前:自転車操業 投稿日:03/04/22 00:11
私は寒気を覚えた。「Sも私のこと呪ってたんだ。」
それを知って恐くなってしまい。走って家に帰った。
「もう全部おしまい、終わりなの、私も、あなたも」
あのときのSの言葉が頭の中で何度も繰り返される。

部屋に帰り、押入からダンボール箱を取り出した。
庭に持っていき、灯油をかけて箱ごと燃やした。
ダンボール箱いっぱいにつまった奴さんが、チリチリと
音を立てて燃えていく。

ちょうどその頃、墓地の火葬場から煙りがもくもくとあがっていた。
夕焼けに照らされて、赤く染まった煙が。
「次はあなた」
その言葉が私の頭から離れない。

これでおわり。

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