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峠のおでん屋

   

853本当にあった怖い名無し2022/01/04(火) 21:45:21.22ID:YIy6MzDo0>>862
35年くらいくらい前、父はある機関区の首席助役だった。
ある日、翌朝始発の気動車のエンジンが不調で、鉄道電話で部品の在庫を調べたところ、隣県の機関区にあることがわかり、夜11時近くになって父がハンドルを握って部下三名とライトバンで取りに行くことになった。
目的地までは1時間。暗い国道ですれ違う車もほとんどなく、落ち葉と小雪が舞っていたという。
とある峠を越えたところに赤提灯のおでん屋が見え、部下の一人が、
「首席、おでん屋で何か買って行きましょう。急いで手ぶらで来ちゃったし。」
─いや、雪が降ってきたし、部品の積み込みに時間を食ったら大変だから急ぐ─と言って、父はおでん屋に寄らなかった。
隣県の機関区では当直が総出で積み込みを手伝ってくれ、ものの数分で積み込みは終わった。
帰り際に「いや助かりました。手ぶらで来てしまって申し訳ない。」と父が切り出すと、先程の部下が、
「○○峠のおでん屋がやってたんですけど積み込みにかかる時間が読めなかったんで急いで来ちまったんですよ。」
というと、一同顔を見合わせて笑ったそうです。
「峠におでん屋なんかありませんよ。」
いや、赤提灯が─と言ったところで父が改めてお礼を述べ、車に乗り込んで来た道を戻ると、峠におでん屋は無かった。
「首席、おでん屋が─」
自宅に遊びに来た部下のみなさんから同様の話をいくつか聞いた。
その父も鬼籍に入ること早十八年。そういう勘が鋭い人だったのかもしれない。

転載元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?365 (5ch.net)

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