ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 31-40 > Part 39 > 月夜 2016/04/30 539 名前:ランナー ◆s0OFdFGjbw 投稿日:03/05/28 19:28 私は夜に良くランニングをするのですが、 そのコースというのが田舎町なので田んぼと田んぼに挟まれた、 たまに野ウサギなんかも飛び出てくるような田舎道なんですね。 当然街灯も点々としか無く、道明かりは月影と近くの町の灯に頼るような、 そんな寂しい道なんですよ。 ある秋の日、 その日はまさに中秋の名月と言うべき綺麗な月に恵まれて、 ほんとにまるで夜空に電気を付けたような明るさの中、 いつもより楽しい気分で走っていました。 当然頃は秋だったので道の両端に広がる田んぼには 刈り終わった稲を円筒型に組んで干してあるんですよ。 でそんな景色の中を走ってたんです。 でも、その日に限って何か様子が違うんです。 540 名前:ランナー ◆s0OFdFGjbw 投稿日:03/05/28 19:29 空気が違うと言うか雰囲気が違うのか…。 何が違うのかなぁなんて考えてたその時。 「はぁぁ…」 と大きな溜め息が聞こえたんです。 おかしいです。 自分一人しか走ってない道で溜め息など聞こえていいわけない。 「お?空耳」 わざとらしく心の中でつぶやき少し足を速めました。 しかしまたしばらくすると 「あぁーあ…」 「…そ」 「…なこと」 今度は鳥肌が立ちました。 自分一人しかいないその道で誰かと誰かが話している。 そんな事あっていいわけがない。 冷たい汗がだらだらと垂れ流しになりながら かなり速く足を進めました。 何者が何処で何を話し合っているのだ こんな月夜にこんな場所で。 だいいち自分は走っている。 同一の二人の会話などいつまでも聞こえていようがない。 541 名前:ランナー ◆s0OFdFGjbw 投稿日:03/05/28 19:30 そう思ったとき不意にふと田んぼの中に目をやりました。 そして次の瞬間、 もう殆ど全速力で半泣きになりながら走りました。 その目線の先に決して見てはならない光景があったからです。 私がそれまで稲を重ねて作った円筒だと思っていた物が 全ていつの間にか装束を着た大男になっていたのです。 名月を愛でながら話し込む大男達。 私は絶対に気付かれてはならない。 恐怖に足を捕られながらも近くの町まで全速力で走りました。 そして友人の家に駆け込み事情を説明して 車で家まで送って貰いました。 当然友達も家族も誰も信じてくれませんでしたが、 昔おばあちゃんが言ってた 「田ぁの神さん」 の話を思い出しました…。 次の朝、 農家の人が何事もなかったかのように 稲を組み直していました。 B! LINEへ送る - Part 39, 洒落怖