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東国従リ上ル人、鬼二値フ語

   

607「東国従リ上ル人、鬼ニ値フ語」 sage 2011/08/25(木) 22:14:34.32 ID:uNif5k+g0

今は昔,東国からやって来た人が,瀬田の橋(瀬田の唐橋:当時
東から京都に陸路で行くには,この橋を渡るしかなかった)を
渡ってきたところで日が暮れたので,宿を借りようとしたところ,
近くに人が住んでいない大きな家があった.何故人が住まなくなった
のだろうと思ったが,馬から降りて,皆でここに宿をとることにした.
お供の者は下で馬を繋いでそこに居り,主人は奥で皮を敷いて
独り寝ていたが,人里離れたところなので,眠れずに過ごしていた.

夜も更けた頃,火を微かに灯しながら見ると,そばに大きな鞍櫃のような
物が有ったのだが,人も近づかないのに,音を立てて蓋が開いた.
不審に思い,「もしやここに鬼が居たから人が住まなかったのを,
知らないで泊まってしまったのでは?」
と怖くなり,逃げようと思い出した.さりげなく見ると,その蓋が
最初は小さく開いていたのが,徐々に大きく開くように見えたので,
「これは間違いなく鬼だ!」と思い,「急いで逃げだしたら,
追いかけられて捕まってしまうだろう.しからば,さり気なく逃げよう」
と思って,「馬たちが心配だ,見に行こう」と言って起きた.

608「東国従リ上ル人、鬼ニ値フ語」 sage 2011/08/25(木) 22:15:46.28 ID:uNif5k+g0

こっそりと馬に鞍を置いて,這い登って鞭を打って逃げ出したところ,
鞍櫃の蓋が開いて,何者かが出てきた.極めて恐ろしい声で

「どこへ行こうというのか,私がここに居るのを知らなかったのか?」

と言って追ってくる.馬を奔らせて逃げるながら,振り返って
見たけれども,夜なので,その者の正体は見えない.
ただただ巨大で,言葉にならないほど恐ろしい気配を感じる.

瀬田の橋にさしかかり,どうも逃げられないと思い,馬を捨て,
橋の下の柱辺りに隠れた.「観音よ,お助け下さい!」
と念じて屈んでると,鬼がやって来た.
橋の上で極めて恐ろげな声を挙げて,

 「川の者よ,川の者よ」

と何度も叫んだ.「うまく隠れられた・・・」と思っていたところ,

「おります」

と答えて下から出てくるものがあった.
そこも闇が広がり,何者か分からない・・・

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