洒落怖超まとめ

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消えた友人

   

598本当にあった怖い名無し2022/02/10(木) 23:01:45.60ID:h61ypfIX0
私の地元には物凄く大きなお寺があって、小さい頃からそのお寺で遊んでいました。田舎の山奥なので開発もされておらず、その寺を中心に昔ながらの街並みが広がっています。境内のつくりですが、最初は縦に長く門をいくつかくぐると本堂に着き、本堂の周りは円状に広がっています。公園も並置されており、ぼろぼろの遊具を子供たちが楽しく使っていました。私の地元の象徴とも呼べるお寺です。私も小学生のときはその寺で暗くなるまで遊んでいたものです。

 しかし小学5年生のときにある事件が起きました。同級生のYが失踪したのです。Yとは私も仲が良く、Yの家で遊んだこともあり、このニュースは衝撃でした。クラス内で話題になると友達のAが「YのやつBと○○さん(寺の愛称)で遊んでたらしいよ」Bは今日欠席していて先生は風邪で休みといっていたので私は食いつき、「おいまじか放課後Bに話を聞きに行こうぜ」などと子どもだったのでデリカシーが無かった私たちは友人のCもつれてBの家に行きました。Bのお母さんは、なぜか出かけていたらしくインターホンにはBが出ました。Bは呆れた様子で「お前らか入っていいよ」と答えました。
私たち3人はリビングにランドセルを置くと「おいYと昨日遊んだんだろう!」とAが節操なく切り出しました。「うーんそうなんだけど」Bは風邪と偽って休むぐらいだからもっと落ち込んでいるものだと考えていましたが実際はそこまで落ち込んでおらず何か困惑しているといった雰囲気でした。

599本当にあった怖い名無し2022/02/10(木) 23:02:31.45ID:h61ypfIX0
「なんだよてかそんなんなら学校これたじゃん」Cもデリカシーのない奴なので踏み入って話をしました。
「いや今日さ警察に話さなきゃだったから休んだんだけど全然信じてもらえないんだよね」
「何が」
「いや昨日さYと○○さんの裏側のさ、盛り上がった山のとこにお堂があるじゃん」
 お寺の裏にはお地蔵さんが何体も並んでおり、その地蔵の横の小さな橋を渡ると盛り上がった小山がありその小山の階段を上ると本殿よりは小さいが何かを祀っているお堂がたっています。そのあたりは雑多な木々が生い茂って昼でも薄暗く不気味な雰囲気が漂っています。
「そこにさ夜12時くらいに遊びに行ったんだよ」
「えっ怖いだろ」
「てかなんで?」私とAが交互に言うとBは首を傾げ頭を掻きながら申し訳なさそうに言いました。

600本当にあった怖い名無し2022/02/10(木) 23:03:17.98ID:h61ypfIX0
「いやさ、兄貴のさ、ガス銃があるんだけどそれでお堂から遠くのお地蔵さんを撃ってたんだよ」ものすごい罰当たりな答えに私は驚愕しました。
「なにやってんだよ」
「いやさ意外と音がうるさいし昼間は学校だったからYもさ、最近兄貴がハマってるらしくてじゃあとりあえず○○さん集合でってなってそれで・・」
「空き缶とかでよかったじゃん」
「持ってくるの忘れてさ、お金もなかったから。お堂の近くに立ってるとわかるんだけどお地蔵さんの近くに電灯があって、しかも距離も近すぎず遠すぎずだったから丁度良かったんだよね」Bは分かるでしょ?と訴えるような目で私たちを見ていました。
「それで?」
「で撃ったらたまにお地蔵さんの頭に当たったりしてチンッって意外と高い音がしてYとゲラゲラ笑ってたんだよ、それでしばらくして喉渇いちゃって水道のとこ行ったんだ」
 
お地蔵さんの横にある橋とは別にもっと大きめ橋があります。お堂の山の周りは堀になっていて水に囲まれていて、昼間に橋から水面を見るとアメンボだったり鯉だったり小さな魚など多様な生物であふれていて小学校の自由研究をそこで済ませている人もいました。大きめの橋を渡ると公園に繋がっていて公園には夜でも点いている電灯があってその下に、どこの公園にもあるような上に出るタイプと普通の蛇口の2つが合わさった水飲み場がありました。
601本当にあった怖い名無し2022/02/10(木) 23:04:12.81ID:h61ypfIX0
「でさ、水飲んでたんだよ。ほんとに誰もいなくてめちゃくちゃ静かだったんだけど、先にYが水飲み終わって後から水飲んでたんだけどYがまだ俺が飲み終わってないのに、またお堂のほうに駆け足でいっちゃんだよ。せっかちだなって思って少ししてからお堂に行ったんだけどあいついなくて・・・」
私はこの時点で不気味さを感じていました。肩がこわばっていくのが分かりました。
「Yの名前を呼んだんだけど返事が無くてどうしようって思ったんだけど耳をすますとなんかぶつぶつ声が聞こえたからそっち行ったんだよ。そしたらさお堂の階段があるのと反対側に山の中に入る形で祠があったんだよね。俺それまで知らなかったんだけど」

お堂のある山の周りをぐるっと1周する形で土の道があるのですが、お堂までの階段がある場所からさらに半周分、反対側に祠があるというのです。私は鬼ごっこなどで昼間にその小山の地形を利用していたので裏側も見たことがあるのですが祠のようなものがあったとは気づきませんでした。

602本当にあった怖い名無し2022/02/10(木) 23:05:05.91ID:h61ypfIX0
「そんなのあるんだ」
「俺も初めて知ったんだけどその祠が結構山を削るようにできてて道から3メートル近く奥に祠があったんだよね。雨降ってたら雨宿りできるくらい」
「それでYがさ祠をじっと見つめてるの、ぶつぶつ言ってるんだけど聞き取れなくて。もう帰ろうぜって言ったんだけど無視してきて、ねえ!って強く言ったら謎の呪文みたいなのをを唱えながらおでこを強く地面にぶつけて何度も祈り始めたんだよ」
そういうとBはYの真似をし始めて、膝を地面につき上半身を投げ出すようにして祈りを捧げました。手が前方に延び額が地面にぶつかるとゴンッと鈍い音がしました。4回ほどBがその動作をするとAはもういいからと強く言いました。
「で俺怖くなってYを置いて逃げてきて、一睡もしないでゲームをして気を紛らわせて今」
私は何も言えませんでした。Bは震えながらも恐怖より困惑しているといった感じで、私たちとその話を共有することによって恐怖を薄めようとしているのだと思いました。
「警察には?」私同様あまりしゃべらなかったCが質問すると

603本当にあった怖い名無し2022/02/10(木) 23:05:41.33ID:h61ypfIX0
「今日言ったんだけどねほとんど信じてくれなかった。一応お堂の周りを調べるとは言ってたけど」
「それじゃあ今からそこ行こうぜ」Aは多少怖がりながらもそう言いました。
「土曜に行こうよ!今からじゃ着くころには薄暗くなってるって」めちゃくちゃイヤそうな顔を私とBはしました。私は怖いのもあったのですがYが不良だったのもあり、きっと先輩の家にでも泊ってるのではないかとも思いました。
「それじゃあ、あと3日もかかるじゃん。それにYをすぐに見つけなくていいのか!」とAが怒鳴るので仕方なくついていくことにしました。しかしBはどうしても怖いからいかないというので私とAで向かいました。CはBが残ってくれと懇願したので家で一緒にゲームをやってるから行ってきてと言いました。お寺には20分ほどで着きましたがもう5時を回っていたので薄暗く、祭事の時でもないので参拝客は少なく、その代わり何人か警察の方が居ました。しかしもう帰る支度をしているみたいで

604本当にあった怖い名無し2022/02/10(木) 23:06:24.48ID:h61ypfIX0
「すいません、Yはいましたか?」
「友達かな?ごめんまだ見つかってないよ。ところでY君はどういう子だったかな」
「いや、まあ不良ですけどいいやつです」私は正直に言ったがそれがよくなかったのか
「そろそろ帰ってくるんじゃねえのか」ともう一人の警察官にぼやいていました。
「家に帰らないことは何度かあったの?」
「まあ何度か」今度はAが答えました。
警察はそのまま自転車でいなくなってしまい、私たちはお堂まで行きました。お地蔵さん側からお堂を見上げると本当に暗く木々が揺らいで大きな生物のように思えました。

605本当にあった怖い名無し2022/02/10(木) 23:07:05.67ID:h61ypfIX0
「おっ」Aが突然声を出したのでビクッとなりました。
「これじゃね」Aが持っていたのはBB弾で、よく見るとお地蔵さんの周りにいくつも転がっていました。急にB君の話が現実味を帯びてきて鳥肌が立ちました。しかしどうしても祠を確認したかったのです。私とAは恐る恐るお堂のある小山の周りを確認しました。しかし山に入り込む形で作られている祠なんていうものは全くありませんでした。おそらくBが言っていた祠があるとされていた場所で一応数メートル下の水面を確認してみたのですがY君が転落している様子も何もなく、とにかく早く帰りたかった私はAをつれてBの家に帰りました。Bの家に帰るとBが彼の父親に怒られていました。
「警察にまで嘘をつくんじゃない!Y君の居場所を知ってるんだろ」
「マジで知らないって」
その横でCは気まずそうな顔をしていました。
Bの家の前で私たちはさっきの報告をして、祠なんてなかったことや警察も帰ってしまったことなどを話し、Aが
「BB弾も落ちてたけどよく考えたら昔からあの辺でエアガン撃ってる奴いたからな」
とこぼしました。
Bは「おれの幻覚だったのかな・・だとしたら怖すぎるけど」と言ってお別れしましたが別れ際に
「公園側から逃げたとき振り返ったんだけどあの暗い夜のお堂の周りにさ、いっぱい人影が見えた気がしたんだよね」と不気味なことを言っていました。
その後私の予想が外れYが姿を現すことはありませんでした。

606本当にあった怖い名無し2022/02/10(木) 23:08:20.33ID:h61ypfIX0
先日図書館でこんなことを知りました。私たちの地元では洪水が多かったので江戸時代中期まで人身御供として水神に身を捧げていたらしいのです。あの寺は、もともと神聖な祭事が行われていた場所に後から作られたらしく神仏習合だった日本ならではだなと思います。Yと関係あるかは分かりませんがあのお堂は本来水神を祭る場所だったのかもしれません。今度Yの10周忌に参拝でもしてこようかと思います。

607本当にあった怖い名無し2022/02/10(木) 23:09:52.61ID:h61ypfIX0
追記
久しぶりにAから連絡があり、ある記事が送られてきました。私の地元の川で小学生が度胸試しに泳いでたら溺れて亡くなってしまったということでした。しかし溺れた当初は見つからず3ヵ月後に何故か○○さんのお堂周りの堀に白骨死体が浮いていたようです。伸びた木の陰に隠れて見つかりにくくなっていたようですが野球のボールを取りに行った小学生が発見したようです。あの堀は○○さんより標高の高いところを流れてる川からの水を用水路を伝って入れており水門を小さい体が通り抜けて入り込んでしまったと書かれていました。また発見時の遺体の様子も書かれており、何度か用水路でぶつかったせいか額の骨が陥没していたそうです。

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