ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 31-40 > Part 31 > 火事 2016/04/22 305 名前:1/3 投稿日:03/03/22 01:07 2年前の夏、大学からの帰りでの話。 駅からチャリで自宅に向かっている途中、遠くで黒い煙が 立っているのが見えた。 「火事かな?ちょっと行ってみるか。」 と、野次馬根性まるだしで現場に行くと、かなり火が燃え上がっていた。 まだ消防車は到着していないようで、その家人らしき夫婦と近所の人、 それから通行人らしき人たちが呆然とその様子を眺めていた。 ふと2階に目をやると、窓際に少女がいる。 何か叫んでいるように見えるが、声は聞こえない。 恐怖で声が出ないんだろう。 「取り残されてる!やばい!」と思い、夫婦に声をかけた。 「何やってるんだ!早く助けないと!」 しかし、夫婦はただ呆然と少女を見つめていた。 306 名前:2/3 投稿日:03/03/22 01:07 普段、別段正義感が高いわけではないが、この時は「俺が助けないと」 と思い、周りの人間に「バケツに水汲んでください!それから濡らした手拭も!」 と叫ぶと、近所の人らしき親父が「何をする気だ!?」と言った。 「何するって、助けに行くに決まってるだろ!あんたら、なんで見てるだけで 何もしないんだ!」と俺が言うと、その親父が何ともいえない表情で言った。 「違うんだ…違うんだよ…。」 火事のためか、かなり混乱しているようだった。 「違うって何だよ!!」と俺が言おうとした時、その親父が続けて言った。 「…そのご夫婦に、子供なんていないんだよ…。」 「…え?」 何を言ってるのか、最初はまったく理解できなかった。 307 名前:3/3 投稿日:03/03/22 01:08 先ほどは焦っていてまったく気づかなかったが、改めて少女を見ると、違和感に気づいた。 少女はまったく怖がっていない。あつがっている様子もない。 まったくの無表情で、大きく口をパクパクさせている。 数秒間、少女を見ていると何を言っているのかようやくわかった。 同じ言葉をずっと繰り返していたのだ。 「燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ…」 消防車が到着するまでの間、俺は夫婦や近所の人、それから他の通行人と同じように ただ呆然と眺めているしかなかった。 この火事での死傷者はゼロ。 出火もとの家は全焼し、両隣の家は半焼だった。 B! LINEへ送る - Part 31, 洒落怖