エレベーター
713本当にあった怖い名無し 2008/03/04(火) 03:46:46 ID:klF1fz0o0
働いてる予備校での話。
私は都内の某大手予備校で働くしがない教務バイト3年目。
なんだかんだ、都内の系列校舎のなかではかなりの古校舎になってしまった。
自習室には地震でヒビが入ったりして、老朽化は否めない。
中でも別館と言われている校舎で起こった話を話そうと思う。
『エレベーターって、怖くないですか?』
バイトの後輩からいきなりの質問だった。
模試の準備をしている間は生徒も来ないし単純作業ばかりなので、
楽しいトーキングタイムになることが多い。
『なんで?』
『だって、うちの校舎のEV暗いし、すぐ蛍光灯暗くなるし・・・』
『そんなのどこの校舎でも一緒じゃん?』
『新館はそんなことないじゃないですか!それよりなにより・・・』
『なにより?』
『乗る人も降りる人もいないのにいつも止まるじゃないですか、講師室前で。』
』
『・・・・・・』
714本当にあった怖い名無し 2008/03/04(火) 03:48:01 ID:klF1fz0o0
そうなのだ。
講師室の担当になったことのある女性バイトは一度は通る道。
別館講師室担当。
先生も生徒もほぼ訪れない授業中の時間帯に、
ベルの音と同時にドアが開くのだ。
明らかに誰かのいたずらと思えるのだが、
毎日そんないたずらをする輩がいたら、大学なんぞ落ちてしまえと言いたい。
そして、その誰も乗り降りしないEVが講師室前に止まるのは、
必ずと言って良いほど、先生も生徒もほぼ訪れない夜間授業中の時間帯なのである。
ラッシュ時や、日の高いうちにそんな現象は起こらない。
715本当にあった怖い名無し 2008/03/04(火) 03:49:12 ID:klF1fz0o0
『そういえば古株のH先生が、昔発狂した生徒が7階の窓から飛んだって言ってたなぁ』
『先輩なんでそんな話今するんですかぁ~怖いじゃないですかぁ!!』
『おまえが言い出したくせにww』
こいつはいつも墓穴を掘る傾向にある。
世の中には知らない方が良いことも沢山あるのに。アホなやつめ。
『でも何で飛んだ生徒がEVに関係するんですか』
『なんでも浪人生で、講師室に必ず質問に来る生徒だったらしいぞ』
『あの時間帯に?』
『一番すいてるからな、あの時間帯。昔は先生がよく溜まってたらしいし。』
『じゃあ明らかに目に見えない何かが目の前をスルーしてる可能性大じゃないですか!!』
『あ~・・・そうだね』
『そうだねじゃないですよ!!この後怖くてEV乗って教務に帰れないじゃないですか!』
『大丈夫だ、むしろこの時間はすでにEVの電源切られてるから、
うちらは階段と言うアナログな手段で帰らざるを得ないwww
明日になったら忘れてるって。』
『しかもここ例の7階じゃないですかぁ~!!!』
『泣くなよめんどくさい・・・EVで降りるわけじゃないんだから大丈夫だよ』
『泣きもしますよ!早く作業終わらせて帰りましょうよ!』
716本当にあった怖い名無し 2008/03/04(火) 03:50:17 ID:klF1fz0o0
22時を過ぎるとEVの電源は切られてしまう。
節電だとか言っているが、そんな節電は無意味だと今なお思う。
計画性のない職員が担当の場合、模試の前日にバイトの就業時間22時を過ぎることはよくある話だった。
後輩に泣きつかれて、サクサクと仕事を終わらせた私は、
教室の施錠をしてフロアの電気を消した。
見えるのは非常灯の明かりだけ。
他のフロアももう真っ暗。
そんな中、薄暗い階段を下りるのは私だって嫌だ。
『せんぱーい・・・』
『何』
おびえきっている後輩が今にも消えそうな声で袖を引っ張る
717本当にあった怖い名無し 2008/03/04(火) 03:50:50 ID:klF1fz0o0
『あきらかに今EVが動く音がしてるんですけど』
時刻22時20分
そ ん な わ け は な い
718本当にあった怖い名無し 2008/03/04(火) 03:54:43 ID:klF1fz0o0
『ちょwよりいっそう自分の首を絞めるのはやめたまえよww』
『冗談でそんなこと言うわけないじゃないですか』
後輩がマジ泣きし始めた
そんな雰囲気じゃあ、いくらドSと名高い私でも怖くなるに決まっている
気づかないうちに二人とも声が震えている
信じがたいことに、確かにEV特有のゴォーッという音が聞こえる
着実にあの狭い密閉空間が7階に迫っている
目に見えない何者かが乗っている可能性は、今の状況下だと多分高いんだろう
でも、EVランプは消えている
22時にEVの電源は切られているはずだ
しかも、翌日に備えて、2台あるEVは両方とも1階に下りているはず。
7階にくるはずがない。
ぐるぐるとありえない情報が私の脳内に取り込まれ、
ヤバイという生物的本能が働き始めた。
『早いとこ、おりるよ』
後輩の手をとって階段を駆け下りた。
719本当にあった怖い名無し 2008/03/04(火) 03:55:35 ID:klF1fz0o0
6階に差し掛かったとき、7階フロアからEVのベルとドアが開く音がした。
肌というか、感覚が感じる冷たい空気。
やばい。
二人とも顔が引きつって、半泣き状態で駆け下りた。
絶対振り返っちゃいけない。
今振り返ったら、絶対階段の上の方で目があう。
目、あるのか?
いや、そんなことを考えてる場合じゃない。逃げなきゃ、後輩連れて帰らなきゃ。
『私はチューターでも講師でもありませんので君のお力に離れません!!!』
今考えると、よくわからないことを口走りながら1階までノンストップ一段飛ばしで駆け下りた。
7階で止まったEVは、しまる気配もなく止まっているようだった。
720本当にあった怖い名無し 2008/03/04(火) 03:56:09 ID:klF1fz0o0
本校舎の教務に泣きながら帰ると、
職員さんたちが慣れた雰囲気で
『ああ、EVきたの?』
たまにあるんだよね、たまにね。
もうそろそろ模試のピークだし、質問が溜まってるんだろうね・・・
シャレにならない言葉を残し、帰って行く職員たち。
別館2階の更衣室に着替えに戻らなくてはならないことに気がつき
テンパりながらも、呪われた落し物に気づくことになるのは、この後のお話。
また次回気が向いたら書こうと思います。