洒落怖超まとめ

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浮かぶ顔

   

378グースカ 2011/02/21(月) 21:27:34.80 ID:VMH9WjG00

どうもです。読みたくない方はとばしちゃって下さいな。
怖い話がないよりはいいでしょうという感じで投下。

大学に入った年に初めて行った心霊スポットの話。
僕はホント行きたくなかった。行ってもいいことないでしょ?
取り憑かれたことなんてないけど、もしあったらどうすんの。
僕の心の声は叫んでも彼に届きはしない。彼とは、体験入学で出会った変態な男のことだ。
僕は師匠とか尊敬する先輩みたいな気持ちはなかったが
僕の知らない世界を知る彼に惹かれてしまっていたのは事実だと思う。
入学してコソコソ生活していたが、見つかってから僕は取り憑かれた。

名前は敦さんといい、見た目は色白で身長は日本人て感じ。
髪型は、肩に掛からない程度に伸ばしたミディアムヘアー。
顔は実際男から見てまぁまぁな人だ。
そんな人と絡む回数が以上に多くて諦めかけてきたころだ。

「お前溜まり場に行ったことないのか。オカルト好きとしてそれはいかんな。」
アイスティーを飲んでいた僕はなんとか避けてきた話題を振られた。
敦さんは、心霊スポットを溜まり場と呼んでいた。
彼曰く、霊も人間も集まるから溜まり場らしい。
このファミレスも溜まり場と言うからよく分からなくなる。

379グースカ 2011/02/21(月) 21:28:49.74 ID:VMH9WjG00

「行っても意味ないですよ。行きたくないという理由は理由じゃないですか?」
何回も伝えた言葉をまた繰り返した。
「理由にはならないな。いわゆる食わず嫌いってやつだな。
楽しいテーマパークだったらどうすんだ?」
笑えないことを言うこの人は本気で言っていた。

「深夜にそんなとこに行く人の方が頭おかしいんですよ。
変態しか近寄りませんよ。」
遠回しに敦さんのことを変態と言ったが伝わっただろうか。
「誰が夜に行けって言ったよ。ビギナーは明るいときに行けばいいんだよ。」
少し口調が強くなったから伝わったらしい。
というか昼でもいいの??
心霊スポットってたいがい皆さん夜に行きません??
「別にいいんだよ。昼はあいつらの活動停止時間て誰が決めたんだ。
最初から一人ってのはな。俺も鬼じゃないから付き合ってやる。」
最初からとか付き合ってやるとか気になるワードだらけだが、明るいのか。
明るいなら大丈夫かな。だって暗いから怖いんだもんね。
なんて安直な考えでオーケーしてしまったのが、僕の運の尽きであった。

380グースカ 2011/02/21(月) 21:30:26.26 ID:VMH9WjG00

しかし、人が来ている痕跡はある。入り口からびっしり落書きがあったり
【入るな危険】は【入れたら勝ち】に書き換えられていた。
「工事中に事故死する人が多数出たと言われて有名になった場所だ。
こういう場所は出るって有名になりやすいわな。」
入り口を見つめながら言う。
怖い話をするとき、突然表情がなくなるから僕は怖かった。
トンネルに対しては多少怖さはあるが
うん、大丈夫。何より光があるから。人間光が大事。

とりあえず行けよみたいな親指がトンネルに向いたため歩き始めた。
僕の身長の三倍くらいの高さで、田舎にありそうなトンネルだ。
壁は煉瓦で固められ、よく石をこんな丸められるなと思うほどきれいな曲線をえがく。
近付いてみると、結構迫力がある。空気の通る音だろうか。
時折、ゴオオと低い呻き声をあげる。チキンハートな僕はすぐに帰りたくなった。
後ろを振り返ると顎で進めと指示を出される。
後ろから付いてきてくれてはいるが、見えないんじゃ意味はない。
目の前に続くのは闇への道だ。
だんだんと光が届かなくなってきた。手に持った懐中電灯を付ける。
闇を照らす楕円の光は、散らかるゴミを映し出した。
恐怖がお腹から上がってくる。背中に冷気を感じる。
僕の血の気が引いているのか、中に行くほど気温が下がっていくのか分からない。
入り口の光はもう遠くにある。もうダメだ。帰ろう。振り返ろうとしたとき


382グースカ 2011/02/21(月) 21:31:42.64 ID:VMH9WjG00

「おい、あれを見てみろ。」
声に驚いたが、敦さんは真顔で天井を指差す。僕はとっさに光を指差す方へ向けた。
トンネルの壁は汚れており、コケやら埃やらで黒と緑が混ざったような色をしている。
特に何もない。ただの煉瓦で出来た石の塊達だ。
「よく見てみろ。じっと見れば分かる。」
ささやくような声で僕に言う。僕は言われるがままに眺めた。

あれは…顔だ。男か女か分からないが顔が浮かんでいる。
眉・眼球のない眼・鼻・口、黒く塗り固められた壁に浮かんでいた。
あれはただの汚れが顔に見えるだけだろと少し安心した。

しかし、よく見ると立体的だ。平面に出来た顔ではなく浮き上がっている。
汚れが浮き上がるなんてありえない。それはまさしく人の顔の形をしていた。
黒いだけの眼窩に無表情で見つめられている。
胃酸が沸々と胃の中を焼く。と同時に強い吐き気に襲われた。
他は照らせなかった。無数に顔がある気がして。
クラクラとして倒れそうになる僕を何かが支えた。
敦さんだ。僕を支えてくれている。

383グースカ 2011/02/21(月) 21:32:43.02 ID:VMH9WjG00

「ちょっとどいてろ。」と言って僕の前に立つ敦さんがかっこよく見えた。
次の瞬間、「おぉい!!うるせぇんだよ!!!近付いて来いやコラァ!!!」
トンネル中に声が響き渡り、何人もの敦さんが同じ事を繰り返していた。
僕は腰を抜かしそうになった。心霊スポットで大声って御法度じゃないの??
もう泣きそうになりながら敦さんの背中を見つめた。
「来いや!!おぉい!!!」また叫ぶ。
僕は恐怖が頂点に達し、遠くの光に向かって全力疾走した。
光だけを見る!周りは見ない!
それでもいくつもの視線を感じた気がした。

ゼーゼーと呼吸を繰り返す。トンネルからの風の音が大きくなった。
敦さんの姿が見えてきた。ゆっくりと歩いてくる。
まるで森林浴で周りの景色を楽しんでいるかのようにこちらに向かってくる。
少し離れた所で中腰になっている僕をニタニタしながら見つめていた。
「ああいうのは、こういうトンネルには普通にいるもんだ。
ここで人は死んでない。人が死んだらあんな顔は見えやしない。
強力なやつがいたら、顔は出せないのさ。人の噂が人の霊を呼ぶんだ。」
聞いてもいないのに解説が始まった。
「突然…叫ばなくたっていいじゃないですか…。」
「知ってるか?霊も恐怖を感じているんだぜ。あいつら俺にびびって逃げたよ。」

さっ、帰るぞ。とスタスタと来た道を戻って行った。
もう二度と行くもんかと誓ったが、この先何度も溜まり場に顔を出す。
それに気付くのはそんなに遠くはなかった。


長文失礼。お邪魔しました。

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