ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 21-30 > Part 30 > 心霊スポットの取材 2016/04/21 706 名前:平成維新軍 投稿日:03/03/14 22:21 二十五歳の夏、勤めていた編集プロダクションをクビになり、幡ヶ谷の アパートで悶々としていた。なにしろクーラーがないので暑くて暑くて、 なおさら苛ついた。で、その編集プロダクションをクビになったときの 話をします。長文お付き合い願います。 この編集プロダクションという会社(仕事)は大手出版社から依頼を請 ければ、なんでもやる。本、雑誌、企画物のページ。内容に至ってはフ ァッションからプロレス、グルメなど幅広くやる。で、ある月刊誌から 「これから暑くなるし、そろそろ」ということで心霊スポットの企画8 ページが回ってきた。私もそのうちの2ページをうけもった。雑誌を作 る側に居た分、このテの話の大部分が「やらせ」だということも知って いたし、自分なりには「テキト-にウソでも書いとけばいいか」程度の 気持ちだった。 ⇒ 708 名前:平成維新軍 投稿日:03/03/14 22:24 幸い実家が横浜だったので心霊スポットには事欠かない。 有名なところだとKトンネルとか、廃墟病院とか昔よく行った。 ただ、出尽くしている。そこで、自分が卒業した中学の裏に お化け屋敷があったのを思い出した。「じゃあ、あれにするか」と、 取材を兼ねて実家へと帰ることにした。 このお化け屋敷、当時雑誌でも何回か取り上げられたことがあり、 学校周辺ではちょっと有名だった。住んでいた一家が惨殺され、 その後、庭で女性の首吊り死体が発見されるなど、取材対象として はなかなかの代物だ。私の通ったH中学校のグラウンドから 50メートル位登ったところにあり、体育の時間に 「鎌を持った人が見ていた」とか、下校時に廃屋を覗いたら 「白い着物の女が正座していた」とか話題に事欠かない。 ただ、首吊りは知っていたが、一家惨殺は本当かどうか定かではなかった。 ⇒ 709 名前:平成維新軍 投稿日:03/03/14 22:26 で、私は幽霊を全く信じていないが、中学高校と同じ学校に行った 同級生のYは自称霊感があるらしく、昔、肝試しに行ったとき ここで幽霊を見た。「あそこに何かいるよな、いるよな」と廃屋の2階の 窓を指差し同意を求められたが、私には何も見えなかった。 Yはその後グラウンドまで降りてきてうずくまった。彼曰く 「ねじれた白い人影が、窓から出たり入ったりしていると」 真っ青になって震えていた。そこでYには悪いが、協力してもらい、 彼のインタビューを交えたお手軽記事を書くことにした。 自宅からYに電話をすると、予想に反して簡単に承諾を得られた。 夜9時にファミレスで待合わせをし、小一時間昔話をした。 「卒業してから10年、こんな形でH中学校を訪れるとは思わなかった」 と苦笑いのY、以外とサバサバしていた。 今考えるとこの辺りから変になりだしたのだが、 車に乗り込むとYは妙なことを言い出した「今日行くのやめないか」 「何で」と私は聞き返した。「いや、なんとなく・・・。それにもう あそこ何にもないよ」「はぁ?早く言ってよ」「だって、何にもな いから俺行くんじゃねーか」私がやっていた雑誌取材は比較的 こういうことが多かった。「しょうがないとりあえず行って、 有る事無い事書くしかないか」。 ⇒ 711 名前:平成維新軍 投稿日:03/03/14 22:30 「だって、何にもないから俺行くんじゃねーか」私がやっていた 雑誌取材は比較的こういうことが多かった。「しょうがないとり あえず行って、有る事無い事書くしかないか」。H中の校舎脇に車 を横付けすると、懐中電灯と小さい一眼レフを 持って廃屋に向かった。移動中Yは無言だった。廃屋はYの言う通り 跡形も無く、その周辺は深く掘り返えされて大きな穴が空いていた。 その深さは10メートル位あり、工事用の吊り橋が掛かっていた。 Yは私より少し下がった場所から黙ってその橋を見ていた。 Yの様子が気になったが、仕事だけ済まそうと三脚を用意した。 周辺でシャッターを切りながら、Yに声をかけた。「具合でも 悪くなったか?」「あのさ・・・」「なに」Yは話し出した 「さっきここに乗ってきた車、誰の」「会社のだけど、なんで」 「いや、後で話す。それからあの橋には、近づかないでな・・・」 とYは言った。その顔は真っ青だった。 ⇒ 713 名前:平成維新軍 投稿日:03/03/14 22:32 Yは突然座り込んで、震えだした。そして「吊り橋の方で誰か 呼んでないか」とつぶやいた。「やめろよ」とちょっと怖く なり、辺りを見回した。橋の上には誰もいない。 さすがに気味が悪いので、わたろうとは思わなかったが、 写真を撮っておこうと近づいた。やっぱり誰もいない。ところが、 撮影位置を考えていたら、なぜか橋に一歩踏み入ってしまった。 後悔した。その瞬間、急に空気が冷たくなり、にもかかわらず 汗が吹きだし始めた。なぜか解らないが、とにかく橋の下だけは 見ないで置こうと思った。が、私の目の前、ちょうど吊り橋の真中 くらいに、なにか得体の知れないものが座っているのに気が付いた。 「女がいる・・・」。女はこっちをジーッとみていた。体の自由は 効くのだが、吊り橋の上で動けなくなってしまった。 ⇒ 714 名前:平成維新軍 投稿日:03/03/14 22:33 そのとき「戻って行い」とYが大声を出した。私はこの声で我に還り、 Yの方を振り向き愕然とした。座り込んでいるYの背後に女がいる。 女は白い着物をきていて、Yの顔を見下ろすようににして立っていた。 Yはそれに気付いていない様子で、私は恐怖で全身の毛がさかだった。 とにかく逃げることを考え、吊り橋から地面へとピョンと飛び移った。 その瞬間吊り橋のワイヤーがビーンという音とともに切れた。もし あのまま橋の上にいたら、おそらく転落していただろう。私はもう 恐怖で分けが解らなくなり、ただひたすら車まで走った。Yには 悪かったが見捨てて走ってきてしまった。 ⇒ 716 名前:平成維新軍 投稿日:03/03/14 22:36 後ろから「うわああああ」と雄叫びをあげながらYが追いかけて来た。 その声でまた恐怖がこみ上げてきて、ひたすら走った。私はYと汗だく で車に乗り込むと、直ぐに車を発進させた。そして学校から道路に出た ところで2トントラックと正面衝突した。幸い二人ともケガは無かったが、 会社から借りてきた車は全損だった。 718 名前:平成維新軍 投稿日:03/03/14 22:39 翌日会社には出勤したが、さすがに原稿は書く気になれず、 他の人に書いてもらった。二日後に車を全損させたせいで、 社長にクビを通告された。しばらく東京で仕事を探したが 貯金も底をつき、実家に帰ることにした。 これと前後して不思議なことがあった。当時携帯が出始めた頃で、 充電が切れているにも関わらず、呼び出しが鳴った。直感的に Yじゃないかと思い、コンビニからY宅に電話を入れた。Yの母親が出て、 おとといから連絡がつかないとのこと。その後、これに関係してか否か わからないが、四ヶ月後に、彼の田舎、山梨で無事見つかる。 翌日幡ヶ谷のアパートを引き払い、実家に帰るとデスクから連絡が入った。 「お前のフィルムに変なものが写っているのだが」とのこと。 内容は確認しなかったが「写真はそっちで始末してください」 そそくさと電話を切った。 おしまい B! LINEへ送る - Part 30, 洒落怖