洒落怖超まとめ

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ろうそくが消えた時

   

182 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/03/20 22:37
もう5年くらい前だろうか。
俺は怪談話が好きな奴らと百物語をやった。場所はあるアパート。
メンバーのひとりが借りているそのアパートは全部で六世帯の大
きさで、その部屋は2階の真ん中。両隣は空家だったので、少しく
らい騒いでも平気だろうと集まったのである。
メンバーは俺を含めて7人。
午後10時を過ぎた頃から百物語は始まった。
最初のうちこそ半ば面白半分に話を進めていったが、一話一話と怪
談が語られているうちに、部屋には徐々に緊張感が高まっていった。
話が30話を越えたとき、家鳴りがした。よくあることだ。気温の
変化等で家が軋むことは珍しくない。誰もがそう思ったのだろう。
ちょっとびっくりしたことは確かだが、そのまま話は進んでいった。
怪談は、どこかで聞いたことがあるな、といったものも多かったが、
さすがは怪談マニアが集まっただけあって、掛け値なしに背筋が寒く
なるような逸品もあった。
時間は刻々と過ぎて行き、時計の針も0時を回った。

183 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/03/20 22:38
ろうそく百本を持ち込むのはちょっと無理があったので、一人一本
づつ用意し、七話終るごとに一旦消したろうそくに再び火を灯していっ
た。
話はほんの1~2分で終ってしまうものから、10分近くの長さの
ものまでいろいろとあったが、この狂宴もそろそろ大詰めに差し掛か
ろうというとき、小さな齟齬が起きた。
七本のろうそくが消えてたとき、ある者は「これでラスト二話だね」
といい、またある者は「まだ、九話残っている」と言ったのだ。
カーテンの隙間から見える空はかすかに白みはじめていた。
なんか白けた雰囲気になってしまった。それでも、あと二話は話そう
ということになり、二本のろうそくに火が灯された。

184 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/03/20 22:39
一本のろうそくが消え、残り一本となった。
最後の話は、昔、ある村で数人の幼子たちが遊んでいるとき、突然
の山崩れに巻き込まれて子供たち全員が死亡。その後、その村はダム
湖に沈むこととなり、月日が経ったある日、子を亡くした年老いた親
たちが湖を訪れたとき、水面を死んだ子供たちが歩いて渡った、とい
う、恐いというより、物悲しい話であった。
そして、ろうそくが消えた。
その瞬間、俺は何も感じることはなかった。
だが、何人かが一斉に顔をあげて周囲を見回す仕草をした。何か起こっ
たのか?と俺は聞いてみた。
ひとりが、空耳かもしれないが、声が聞こえたと言った。
俺も、俺もだ、と、さらにふたりが口を揃えた。
俺は、ふとした考えから、声が聞こえたと言う奴らに、一斉に何が聞
こえたか言ってみな、と促した。
ちいさく、せーの、という掛け声が掛かったあと、3人は声を揃えた。

「とおりゃんせ、とおりゃんせ・・・」

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