ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 31-40 > Part 31 > ろうそくが消えた時 2016/04/22 182 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/03/20 22:37 もう5年くらい前だろうか。 俺は怪談話が好きな奴らと百物語をやった。場所はあるアパート。 メンバーのひとりが借りているそのアパートは全部で六世帯の大 きさで、その部屋は2階の真ん中。両隣は空家だったので、少しく らい騒いでも平気だろうと集まったのである。 メンバーは俺を含めて7人。 午後10時を過ぎた頃から百物語は始まった。 最初のうちこそ半ば面白半分に話を進めていったが、一話一話と怪 談が語られているうちに、部屋には徐々に緊張感が高まっていった。 話が30話を越えたとき、家鳴りがした。よくあることだ。気温の 変化等で家が軋むことは珍しくない。誰もがそう思ったのだろう。 ちょっとびっくりしたことは確かだが、そのまま話は進んでいった。 怪談は、どこかで聞いたことがあるな、といったものも多かったが、 さすがは怪談マニアが集まっただけあって、掛け値なしに背筋が寒く なるような逸品もあった。 時間は刻々と過ぎて行き、時計の針も0時を回った。 183 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/03/20 22:38 ろうそく百本を持ち込むのはちょっと無理があったので、一人一本 づつ用意し、七話終るごとに一旦消したろうそくに再び火を灯していっ た。 話はほんの1~2分で終ってしまうものから、10分近くの長さの ものまでいろいろとあったが、この狂宴もそろそろ大詰めに差し掛か ろうというとき、小さな齟齬が起きた。 七本のろうそくが消えてたとき、ある者は「これでラスト二話だね」 といい、またある者は「まだ、九話残っている」と言ったのだ。 カーテンの隙間から見える空はかすかに白みはじめていた。 なんか白けた雰囲気になってしまった。それでも、あと二話は話そう ということになり、二本のろうそくに火が灯された。 184 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/03/20 22:39 一本のろうそくが消え、残り一本となった。 最後の話は、昔、ある村で数人の幼子たちが遊んでいるとき、突然 の山崩れに巻き込まれて子供たち全員が死亡。その後、その村はダム 湖に沈むこととなり、月日が経ったある日、子を亡くした年老いた親 たちが湖を訪れたとき、水面を死んだ子供たちが歩いて渡った、とい う、恐いというより、物悲しい話であった。 そして、ろうそくが消えた。 その瞬間、俺は何も感じることはなかった。 だが、何人かが一斉に顔をあげて周囲を見回す仕草をした。何か起こっ たのか?と俺は聞いてみた。 ひとりが、空耳かもしれないが、声が聞こえたと言った。 俺も、俺もだ、と、さらにふたりが口を揃えた。 俺は、ふとした考えから、声が聞こえたと言う奴らに、一斉に何が聞 こえたか言ってみな、と促した。 ちいさく、せーの、という掛け声が掛かったあと、3人は声を揃えた。 「とおりゃんせ、とおりゃんせ・・・」 B! LINEへ送る - Part 31, 洒落怖