ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 21-30 > Part 24 > カツラ 2016/04/15 151 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/18 12:34 祖父の七回忌だったと思う。 実家は海に近い田舎町。近くには漁港があり、 潮の流れが速くて海水浴はできなかったが、 景色のいい砂浜もあった。 さて、法事は朝から坊さんが来て始まり、午後は親戚一同で 酒を飲みながらの食事になった。 大人たちは盛り上がっていたが、僕はすぐに退屈した。 それで、年の近いいとこと2人、海の方へ散歩することにした。 母親には夕方家に帰るから、遅くならないうちに戻るよう言われた。 153 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/18 12:35 僕らは砂浜をぶらぶら歩くのにすぐ退屈して、漂着した木片とボールを 使ってバッティングをやり出した。 小学六年生のいとこが海を背にしてボールを投げ、僕がそれを打った。 ボールは波が押し返すのだが、当たりがよくて沖に流されたりもした。 砂浜に落ちているボールにも限りがあって、それを探すのも一苦労だった。 2人してボールになりそうなものを探していると、いとこが僕のことを呼んだ。 変なもの見つけたと言う。 それは女性物のカツラだった。 いとこはそれを手にとり、笑いながら振り回したり、足で蹴ったりした。 やめろよ、気持ち悪いから。それよりボール探そうぜ。 僕は相手にしなかった。 すると従兄弟はふざけて、そのカツラをかぶってみせた。 ちょっと気味が悪かった。 その幼い顔つきが、カツラのせいでなんだか急に大人びて見えた。 154 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/18 12:36 いい加減にしろ。もう帰るよ。 海は夕日でオレンジ色に照り返していた。 波の音が大きくなったような気がした。 この時の胸騒ぎが、後に的中することになった。 祖母の家に戻ると、何人かの親戚はすでに帰っていた。 うちも母親が車を運転するので、その日のうちに帰る予定だった。 従兄弟の家族は一泊するとのこと。 僕は母親にせかされ、仏壇に手を合わせた。 なぜか従兄弟も後についた。 それからちょっとして、僕は先に車に乗り込んだ。 カーラジオを聞いていると、母親がやってきた。 あんた、○○くんと何か食べたの? さっき突然気分が悪くなって、吐いちゃったのよ。 155 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/18 12:36 そこから大変だった。 母親とおばさん夫婦は車で従兄弟を病院に連れて行った。 僕は何があったか聞かれたのだが、見当もつかない。 その様子を傍で見ていた近所のおばあさんが、何事か祖母と話している。 不安が募っていた。従兄弟は真っ青になり、ガタガタと震えていたし、 大人たちはアレルギーショックについて深刻そうに話していた。 その時だった。 仏壇の前の花瓶が前触れも無く倒れた。 その場に居合わせた全員が驚いた。 「実は、・・・・・」 僕は喉まで出かかっていた言葉を口にした。 砂浜に落ちていたカツラのことだ。 大人の男性は眉をしかめたが、近所のおばあさんや他の女性は熱心に聞いていた。 そのカツラを今すぐお寺に持って行った方がいいと言ったのは、 そのおばあさんだった。 156 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/18 12:39 おばあさんが電話すると、ちょっとヤンキーぽい若者二人がやって来た。 高校生の孫と彼の友人だった。 事情を聞くと、砂浜まで一緒に行ってくれるとのこと。 日は暮れてすでに暗かった。 原付とバイクに乗って、僕らは砂浜へ向かった。 港の灯台が微かに見えるだけで、辺りは真っ暗だった。 バイクを止めて松林を通り抜ける途中、その高校生達は話し始めた。 どうやら一年近く前、浜に死体が流れ着いたらしい。 身元不明、多分国籍も不明、救命具を付けた上半身だけだったという。 下半身はフカや魚に食べられ、顔の肉もほとんどなかったらしい。 「あれは男だから、そのカツラは関係ないだろう」としゃべっていた。 僕は激しく後悔した。逃げ帰りたかった。 懐中電燈を持つ手は震え、集中してカツラを探す余裕はなかった。 157 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/18 12:40 「ここらへんだと思う」 本当は暗くて全然分からなかった。 二人は探索に熱中して、あまり怖がっていないみたいだった。 僕は彼らについて歩きながら、背後が気になってしょうがない。 「おい、これじゃねえのか?」 友人の方がカツラを見つけた。 発泡スチロールやビニールなどの合間に、それは転がっていた。 まるで干からびた海藻のように見えた。 安堵して早く戻ろうと急ぎ足になった時だ。 突然、海の方から悲鳴のようなものが聞こえた。 三人驚いて振り返ると、月明かりの下、波打ち際に真っ暗な人影があった。 二百メートルくらい先に立っていて、手招いているように見える。 僕らは声を上げて走り出した。 バイクを止めた道路わきまで来て、おばあさんの孫が言った。 「やばかったな。ありゃ幽霊だったよ」 片方の高校生が腕をさすりながら答える。 「鳥肌立ってる。・・・・近寄ったら海に引きずり込まれてたな」 158 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/18 12:41 おばあさんの指示に従い、僕らはカツラをあるお寺に持っていった。 そみには親戚のおばさん、祖母、あのおばあさんは待機していた。 すぐに住職が仏壇にカツラを供え、読経を始めた。 同じ頃、従兄弟は緊急治療室にいて、チアノーゼ?みたいな症状を起こし、 体温が危険な状態まで落ちていたそうだ。 結局、真夜中になって従兄弟の病状は回復した。 後日、祖母から伝え聞いた住職の話では、浮かばれない無縁仏の霊が、 一族の賑やかな法事に嫉妬したのだろう、ということだった。 おわり B! LINEへ送る - Part 24, 洒落怖