最後の叫び声を合図に、Kに窓叩いてもらう予定でした。
決行の日は、小雨が降ってました。ハッキリ言って悪い予感しました。だって考えてた話とあんまりそっくりじゃないですか。これも話とそっくりなんだけど、俺は必死になって止めました。でもKのやつ物凄い乗り気で。止めきれなかったんです。
仕方なくYの家に行って、俺は怪談を始めました。前持って考えてたやつ。シトシト雨が降ってて気持ち悪いぐらい静かな夕方でした。
計画通り、話し始めました。案の定Yのやつは物凄く恐がって、聞かない聞かないって耳塞いじゃったんだけど、それでも大声で聞かせました。
そして最後大声で合図をして。
胸が痛いぐらい鳴って、時間が流れるのが長過ぎるように感じました。そうして5分ぐらい経った後。
ドサ!
大きな荷物を投げるような重たい音がして。もちろんその音がなんなのか、俺には分かってました。でも体が固まったみたいになって動かなかった。
Yが窓際に行って、外を覗いて。
「ヒッ」
って変な声出して、その後おぼつかない足取りで慌てて下に走って行きました。そのあいだも俺は全く動けなくて。
救急車が来て。警察が来て。考えてあった話となにもかもソックリで。
警察からの帰り道。
ずっと考えてました。冷たいって思われるかもしれないけど、悲しさよりも先に恐怖心が立って、出るな出るなって思ってました。
でも真っ暗な人気の無い道を通りかかったとき。
ズルズルって、這いずるような音が聞こえてきたんです。這いずるにしても、手だけで動いてるような。大きな音。
振り返ることも出来なくて、でも足がガクガクいって、早足にもなれなくて。咽がカラカラに引きつれたような感じになって、叫ぶことも出来ません。
そうやってトロトロしてると、ガシッって足を掴まれました。凄い強い力で、たちまちの内に引き倒されてしまって、何かが俺の上に圧し掛かって来ました。分かってたんです。というより信じ込んでました。きっとそれは
やっぱりそれはKでした。
肉がめくれあがって、原型をとどめない無残な顔が俺の顔のすぐ側にありました。でも4年越しの友人の顔を見間違えるわけありません。それは確かにKでした。
俺は必死な声で「ごめん!俺が悪かった!もっと止めればきっとお前が死なずにすんだのは分かってたんだ!本当にごめん!」そう叫びました。
しかし、Kは肉の削げた顔でキョトンとした表情を作ったあと、口元をニタァと歪ませて、俺をどんどん暗がりへと引っ張っていきました。
このままでは本当に命が危ないと思った俺は、無我夢中で手を振りました。それがKの顔に当たり、ほんの僅かに力が緩んだ隙をついてなんとか逃げ出せました。
そして今ここで、こうしてその恐怖を書き留めています。Kはどうなったか?
今でも居ますよ。俺の背中に拠り掛かっています。