ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 21-30 > Part 24 > 分かってるのは 2016/04/15 544 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/26 21:04 某チェーン店の居酒屋でバイトしてた頃の話。 Mさんという40代の常連がいた。常連といっても、 俺がバイトを始めた頃から店に一人でやってくるように なったのだが、ほぼ一月ほどは毎晩のように通ってきた。 何でも居酒屋近くのビジネスホテルに滞在しているらしく、 だいたい閉店間際にふらりとやって来て、本人定番のつまみを 注文する。 それでお互い顔を覚えて、いつしか気安く対応する間柄になっていた。 何せ小さな店舗で、オヤジ系居酒屋だったこともあって、カウンター内 で洗い物をしていると良く話し掛けてきた。 546 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/26 21:06 いつものようにモツの煮込みを出すと、Mさんは気味の悪い話を始めた。 若い頃にヘマをしでかし、その筋の方に拉致されて、ダムの工事現場に 連れて行かれた時の話だそうだ。 Mさんは普通の労働者とは違って、飯場のような所に軟禁させていたらしい。 そこには似たような境遇の人たちが十人ほどいたという。 場所は人里離れた山の中。食事の支度は飯炊き女(50代)がまかなっていた そうだが、当然食材は近くの村から配達してもらったという。 ある夜、工事現場に繋がる唯一の道路が、大雨で不通になってしまった。 復旧の目処がたたないうちに、三日が過ぎたそうだ。 蓄えていた食料も底を尽き、全員パニックに陥ったらしい。 その時みんなが目をつけたのは、飯炊き女が残飯を食べさせていた雑種犬。 Mさんは詳しく話さなかったが、とにかくその犬を食べて飢えをしのいだという。 「それからなんだよ。動物って分かってんのかね?俺を見たらどんな犬も吠えやが るんだ、睨みつけてよ」 547 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/26 21:08 俺もMさんが裏稼業の人間であることは薄々分かっていた。 相手は店の客だし、深い付き合いにはならないつもりでもいた。 でもMさんは俺のことを気に入ったらしく、仕事が終わったら飲みに行こうと 誘ってくるようになった。 最初は断っていたが、ある夜、すすめられたビールで少し酔った俺は、誘いに応じて しまった。 「顔の利く店があるから」 Mさんは東南アジアからタレントを連れてくるプロモーターだと自称していたが、 実はブローカーだった。 連れて行かれた店もフィリピンパブ。 かなりきわどい店だったが、貧乏学生だった俺は結構楽しんでしまった。 Mさんは女の子と延々カラオケを歌っていたが、俺はカタコトの英語で 片っ端から女の子を口説いていた。 548 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/01/26 21:09 一人すごくかわいい女の子がいて、その子にも話し掛けようとした時、 Mさんは突然マイクを置いてテーブルに戻ってきた。 「その子はだめだぞ。俺のお気にだからな」 Mさんの目は笑っていなかった。 ぞっとするくらい凄みがあった。 回りも雰囲気を察して、場はしらけたようになった。 俺も萎縮してすっかり酔いが覚めてしまった。 Mさんは何も無かったように、再びカラオケで歌いだした。 その姿を黙って見ていた俺に、さっきのお気にの女の子がつたない 日本語で耳打ちしてきた。 「店ノ女ノ子、全部アイツ嫌イ」 「何で?」と俺が訊ねると 「ワカラナイ。デモ、ナンカ見エル時アルヨ」 「何が?」 「死ンダ女ノ子ネ。イッパイ見エルヨ」 俺は思った。 Mさん、分かるのは犬だけじゃないみたいだぞ。 B! LINEへ送る - Part 24, 洒落怖