どこかにあった「クラクションを鳴らす霊柩車(?)」に似た話
深夜、窓の外に気配を感じて女は目を覚ました。
部屋は2階で、外から侵入できるような階段やベランダなどはないのだが…
不審に思いつつ彼女は窓を開けてみる。
見下ろすと家の前の道に一台の霊柩車が停まっていて、運転手らしい黒服の男がその傍らに立っている。
この近所で葬式が?誰かが死んだという話も聞かないが…
黒服の男が彼女を見上げて言った。
「あと一人乗れますよ」
ぞっとした彼女はあわてて窓を閉める。
不吉なものを見た気がして、朝までベッドの中で震えていた。
朝になると、霊柩車も黒服の男も現実ではなく夢に過ぎなかったのだろうと思える。
事実、一階に寝起きする両親も夜中に車の気配など感じなかったという。
だが彼女はその夜も次の夜も続けて同じ夢を見る。
夜中に目を覚ますたび、また見てしまう…そうわかっていながら同じように窓を開け、
同じように黒服の男が繰り返すのを聞いてしまう。
「あと一人……」