ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 11-20 > Part 13 > 沈没船の死体 2016/03/28 847 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:02/05/16 23:48 うーむ、さっき吉村昭の「海の柩」を読んだのだが怖かった・・・。 後書きから考えて、実際にあった話だと思う。 太平洋戦争末期、北海道の漁村に、ある日たくさんの日本兵の水死体が流れ着いた。 数は500体近く。どうやら兵士を満載した輸送船がアメリカの潜水艦に攻撃され、沖合い で沈没したらしい。死体の中に将校のものは無かった。将校たちは救命艇で脱出できたらしい。 死体を収容していた漁師たちは、奇妙なことに気づいた。腕のない死体がかなり混じって いるのだ。手首の欠けているものもあれば、上膊部から失われているものもある。海水に 洗われて血はにじみ出ていなかったが、鋭利なもので断ち切られたように断面は平らだった。 中には片腕がない上に、顔面に深々と裂傷の刻まれているものもある。船から海中に飛びこんだ 折に出来た傷かとも思えたが、死体の半ば以上が腕を切り落とされていることは異様だった。 ・・・・・さてクイズです。なぜ死体には腕が無かったのでしょう? 849 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:02/05/16 23:51 兵士たちは、将校の乗る救命艇にしがみついたが、沈没をおそれた将校たちに 軍刀で手を切り払われた。ってのはありきたりか? 854 名前:847 投稿日:02/05/17 00:01 >849 あら、いきなり答えが出てしまった。この話知ってましたかね?ちょっとヒント を出しすぎたかなあ。 -------------------------------------------------------------- (筆者が生き残りのKから話を聞くシーン) 「切りましたか?」 私はたずねた。 「なにをですか?」 かれは、いぶかしそうに私を見つめた。 「兵士の腕です」 男は、一瞬放心したような眼をした。徐ろに視線を落としたが、あげた顔には 妙な笑いが薄くただよっていた。 「私は、切りませんよ。暗号書を抱いて舟艇の真中に座っていたのですから・・・。 かれの微笑は深まった。 「切った将校もいたのですね」 と、私。 「いました」 と、彼。 「船につかまってくるからですか」 と、私。 856 名前:847 投稿日:02/05/17 00:10 「船べりに手が重なってきました。三角波にくわえて周囲から手で押されるので、 舟艇は激しくゆれました。乗ってくれば沈むということよりも、船べりをおおった 手が、恐ろしくてなりませんでした。海面は兵の体でうずまり、その中に三隻の 舟艇がはさまってました。他の舟艇で、将校が一斉に軍刀をぬき、私の乗っていた 船でも、軍刀がぬかれました。手に対する恐怖感が、軍刀をふるわせたのです。 切っても切っても、また新たな手がつかまってきました」 「あなたは、なにもなさらなかったのですか?」 「靴で蹴っただけです」 男は、かすかに眉をしかめた。 「腕を切られた兵士は、沈んでいきましたか」 「そうです。しかし、そのまま泳いでいる者もいました。 「兵士たちは、なにか言いましたか?」 私は、たずねた。 男は、口をつぐんだ。微笑がこわばった。フィルターつきの煙草を手にした が、火はつけなかった。 男が、口を開いた。 「天皇陛下万歳、と叫んでいました」 私は、ノートをとる手をとめて、男の顔を見つめたが、窓の外に視線をそらせた。 857 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:02/05/17 00:21 後書きによると、その後この事件についてNHK・ドキュメンタリーが企画され、 吉村氏はプロデューサーからK氏の住所と名前を教えて欲しいと何度も懇願さ れたが、口をつぐみ続けたらしい。取材のため老漁師に話を聞いたときも、終戦 から25年もたっているのに、憲兵に口止めされているからといってなかなかしゃべって くれなかったそうだ・・・ 吉村昭では、他に「総員起シ」もおすすめ。戦争中、瀬戸内海で訓練中の潜水艦が沈没、 102人が死んだ。9年後に潜水艦を引き上げたのだが、艦内には水の進入を免れた区画が あり、当時のままの姿で保存されていたのだ・・・。 B! LINEへ送る - Part 13, 洒落怖