「じいちゃん。もう5時だから、起こさないと風邪ひいちゃうよ」<私・8歳>
「たぶん大丈夫よ子供じゃないんだから」<妹・8歳>
私たちはそのまま10分後には自宅に帰り着き、晩ご飯を食べました。さんまの塩焼きです。
次の日、新聞に小さく、線路で死体が見つかり、たぶん酔ったまま線路に近づき、
列車が来て、驚いて 心臓麻痺を起こし死んだのだろうという記事が載りました。
場所がまさしく例の場所で、発見時間は夕方4時でした。死亡時間は前日の深夜だそうです。
線路沿いのススキの森を散策する人はまずいませんから、発見が遅れたのでしょう。
「ねえ、もう少し早くあそこを通ったら僕たちが一番だったのにね」(私)
と無邪気に騒いだものです。
でも、そのとき胸の奥に締め付けられるような感覚が生じて、無意識のうちに
気がつかなかったことにしよう
という思いが生じました。うまくその時は説明できませんし、自分自身なんで
こんな嫌な感覚が生じて口のなかが酸っぱくなるような引きつった気持ちになるのか
分かりませんでした。
あとで少しずつ鮮明な記憶が蘇ってきて理由がわかりました。
あの時3人でその場を立ち去るとき、なぜ風邪を引くからと起こさなかったのだろう
だって、寝返りうったから
私たちはいったい誰を見たのでしょうか?