芥川龍之介の死の謎
芥川は、ドッペルゲンガー(もう1人の自分)を見ていたらしい。
雑誌の対談などでも、それについての話を何度もしている。
芥川は、未発表で未完の小説を書いていた。タイトルは、
『人を殺したかしら』
青年が人を殺す夢を見る。だが、その事件は翌朝になると実際に起こっている。
しかも夢で殺した被害者と、実際の殺人事件の被害者はとても良く似ている。
しかも事件は、全て自分の近辺で起こっている。
青年は「もしかしたら、本当に自分が殺しているのかも」と、悩み苦しむようになる。
そしてそれは「もう1人の自分がいるのかも・・」という悩みへ変わっていく。
まるで、ドッペルゲンガーに悩む自分を題材にしたような小説。
芥川の死の前日の夜、連載していた小説の原稿を取りに、編集者が芥川家を訪れた。
まだ出来あがっていないため、編集者は、芥川の後ろに座って待っていた。
そして彼は机の上に置いてある、書きかけの小説を見つける。
『人を殺したかしら』である。
「新作ですか?ちょっと拝見してもよろしいですか?」
彼が原稿に手を伸ばそうとした時、
「それに触るな!!それは失敗作だ!!」と芥川はなぜか突然叫びながら
その原稿を取り上げ、赤ペンで自分の名前をグチャグチャに塗りつぶし、
本文に大きな×印を殴り書きし、原稿の全てをビリビリに破いて廊下に捨ててしまったという。
芥川のあまりの気迫に驚いた編集者は、その日は帰る事にした。
翌日の朝、再び編集者が芥川家を訪ねると、
多量の睡眠薬を飲み布団の上で死んでいる芥川がいた。
そして、芥川が狂ったように赤ペンで塗りつぶし、破り捨てたはずの
『人を殺したかしら』の原稿が、なぜか完全な形で机上にキチンと置かれてあったという。