ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 1-10 > Part 8 > 鏡の中の女 2016/03/22 83 名前:ドラ 投稿日:01/09/07 18:00 大学時代の話。サークルの誰かがゴミ捨て場から鏡を拾ってきた。 幾分大きすぎたので、欠けて歪な形になっていた端の部分を押し割って、 部室の二つの窓の間に吊るすことになった。 翌日、部室に入ると同期の男が鏡の前で首を傾げている。 「こんなヒビ、あったっけ?」見ると、赤く錆びたようなヒビが一筋、 右下の隅から中央に向かって引かれていた。「割ったときにできたんじゃない?」 初めて鏡を見た私が言うと、裏側には何の傷もなかったにもかかわらず、それで皆、 納得してしまった。それが一日目。 85 名前:ドラ 投稿日:01/09/07 18:04 翌日は雨。昼下がりの部室にしては珍しく無人。ドアを開けてすぐに、 真っ黒い四角が目に飛び込んできた。それはジジ、ジジ・・・と 音を立て、ザワザワと形を変えていた。締め切った窓と窓の間に 密集して蠢いているものは、小さな羽虫の固まりだった。 私は思わず叫んだらしい。有り難いことに、隣のドアから顔を出した 数人の知人と一緒に部室に入り、窓を開けて、虫を追い払った。 「うわ!」虫の波を見ても笑っていた一人が声を上げた。「鏡か。 びっくりした。人がいるのかと思った」虫が集っていたのは これだったのかと改めて鏡を見ると、赤錆びの線が二本引かれていた。 昨日よりも、一本増えていた。それが二日目。 87 名前:ドラ 投稿日:01/09/07 18:07 三日目になると、霊感少女の新入生が、鏡の中を横切る女を見たと 言い出した。他に目撃者もいなかったので、「自分じゃねえの。 思い込みすぎだよ、それ」で終わったのだが、さすがに「ちょっと 気味悪いね」ということにはなって、鏡を誰かが裏返しにした。 部員は多かったので、誰かがその後で元に戻したのかもしれない。 とにかく、次の日には鏡は正面を向いていた。赤い線は三本に増えて、 爪を立てて中から傷つけたようにも見えた。 結局その日、鏡を処分する事に決まった。それが最終日。 90 名前:ドラ 投稿日:01/09/07 18:11 誰が捨てに行くかで、くじ引きをして、最悪な事に私と霊感少女が 当たってしまった。そもそも拾ってきた人間が捨てるのが筋だと 猛抗議したら、誰が拾ってきたのか誰も知らないということが判明して、 ますます鬱になった。結局、女2人に任せるのは気が引けたのか、 同期の男が3人加勢してくれて、5人で学校の廃品置場に向かった。 廃品置場は運動場横の並木道の奥にあって、部室からは距離があった。 男3人は2人ずつ交代で鏡を運び、辿り着いた時には夏の日も 暮れかけていた。雑多なゴミ置き場の端に鏡をそっと置いて、 その場を離れようとしたときに「ああああ」と、霊感少女が 情けない声を出した。また脅かそうとしてる。「おまえ、いい加減に」 言いながら振り向いた同期が、私の足元に尻餅をついた。 驚いて振り返ると、霊感少女が両手を前に突き出して泣いている。 その腰に、白い手が絡みついていた。目にしたのは一瞬だったと思う。 でも、腰を締め上げるように絡みついたその両方の腕に血が流れていた こと、両の手首がパックリ開いていたこと、今でもはっきりと 目に浮かぶのだ。私達は必死になって、霊感少女を引っ張って 鏡から出ているらしい腕を引き離し、腰を抜かした同期を引きずって、 その場から逃げ延びた。部室に帰り着いて、全員で泣いた。 今からもう十二年前のことです。 B! LINEへ送る - Part 8, 洒落怖