車が揺れているのか自分が震えているのか分からなくなった頃に
信号が青に変わりました。私は急いでアクセルを踏むと、
そのT字路を左へ曲がりました。曲がりながら再びバックミラーを見ると、
ワゴンはまっすぐ進んで行きました。
しかし、それは変です。
先程も書きましたが、この道はT字路で、直進したらそこにあるのは民家の壁です。
「え?」と思ったときには手遅れでした。
ワゴンは向かいの壁へ恐ろしい勢いで追突しました。
私は急いで車を止め、降りてワゴンへ走りました。
赤信号で止まっている車の運転手さん達も急いで降りてきて皆でワゴンに駆け寄りました。
運転席を覗き込んだ私は、その時あまりの恐怖に声が出ませんでした。
ワゴンの中には、一人しか乗っていなかったのです。
乗っていたのは、赤い服を着た髪の長い女の人でした。ワゴンは左ハンドルだったのです。
そして、助手席となる右側の座席には、誰も乗っていませんでした。
女の人が実在し、何も感じなかった男の人こそが幽霊だったのでしょうか。
その時は本当に目の前のことが信じられず、体がガクガク震えました。
そして最後に、気付かなければ良かったのにと思うことに気付いてしまいました。
女の人は鏡の中で見た通り赤い服を着ていたのですが、その服は
血の色で赤く染まっていました。元々は白い服だったのです。その証拠に
服の背中や腹の辺りはまだ白いままです。きっと壁にぶつかる前はまだ真っ白だったはずなんです。
思い出すと今でも恐ろしいです。