ホーム > 洒落怖 > Part 1-100 > Part 21-30 > Part 25 > 古いお寺 2016/04/16 884 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/02/07 21:17 僕がまだ六歳ぐらいのときの話。 それまで市街地に住んでたんだけど、小学校へあがる春に 緑の多い郊外に引っ越したんだ。 近所には田圃や畑があって、兼業農家をやってる地元の人が多い。 そんなのどかな環境の町はずれにある新興住宅に、僕ら家族は移ってきた。 慣れないこともあったけど、僕は小学校へあがってすぐに友達ができて、 二ヶ月もたった頃には、もうすっかりその町に馴染んだつもりになってた。 ある日曜日、昼ご飯を食べてから友達三人と学校の近くにある 田圃のあぜ道で、遊びがてら、おたまじゃくしをとっていた。 ビンに入れて家に持って帰って、カエルになるのを見たかったからだ。 用水路のなかに手を突っ込んでたら、いきなり小便がしたくなってきた。 僕は何匹かつかまえていたし、もう帰ってもよかったんだけど、 友達は、もっとつかまえるつもりでいた。 時刻は五時半ぐらいだったと思う。そろそろ日が暮れどきで、 空はうっすらと陰り始めていた。 885 名前:884 投稿日:03/02/07 21:19 僕は友達を置いて、ちょっと小便しにいってくると駆けだした。 家まで帰る気はなくて、そこらで適当なところを探してた。 ちょっと離れたところに、まだ行ったことのない古いお寺があって、 歩いていた道からそこに飛び込むと、トイレを探すのが面倒だったから、 寺の横手のほうにある低い木の茂みですませた。 はやく友達のところへ帰りたかったけれど、なにを間違えたのか、 僕は道とは反対の、寺の裏側へ歩いていってしまった。 間違ったとわかって引き返そうとしたとき、小さくカチャカチャと音がした。 何だろうと思って振り返ったら、暗い寺のなかからボンヤリと黄色い光が 漏れてる。そっちに行くと、雨戸と障子が開け放してあって、 ふと見れば、薄暗い60W電球を吊った下で、四人家族がご飯を食べてた。 住職らしい丸禿の男と、痩せた奥さんと、まだ小さい子供が二人、 ちゃぶ台のまわりに正座して、それぞれに茶碗を持ってる。 カチャカチャっていうのは、お箸が茶碗に当たる音だった。 その光景に、僕はなんとなく寒々しい違和感を覚えた。 誰も何も言わずに、黙々と食べながら、裏庭に立っている僕のほうを ジッと見ているんだけど、誰もが無表情で、何も話さないんだ。 静まり返った食卓に、ただカチャカチャとお箸の音がするだけ。 僕も何も言わず、その場から立ち去ろうとした。 そしたら、奥さんが小さな声で、「あんた、どこの子?これ食べていく?」と。 886 名前:884 投稿日:03/02/07 21:25 振り向いたら、奥さんのそばにあった「おひつ」から、ご飯を茶碗に よそってくれてる。 「はい、お食べよ」って、茶碗を出してくれたその白い腕が、 こちらへ、異様に長くニュルッと伸びてきたように感じた。 そして、そのご飯を見たとき、僕はビックリどころか、 心臓がとまりそうになった。 ご飯に色がついていて、赤飯かと一瞬思ったけど、 あきらかにそれは血だったんだ! ご飯粒が血で真っ赤になっていたんだ! はっと顔をあげたら、もくもくと無表情で食べている四人家族の口も 血だらけになっていて、胸などにも口からぽろぽろこぼれたご飯粒が 点々と赤くくっついている! それでも、住職も二人の子供たちも、一様にカチャカチャ箸を動かして 血まみれのご飯を口にかき込んでいて・・・・ 887 名前:884 投稿日:03/02/07 21:26 急に生臭い匂いが漂ってきて吐きそうになった。 奥さんの差し出している茶碗に背を向けると、走り出した。 あまりの怖さに膝ががくがくしていたけど、なんとかかんとか 友達のところまで戻れた。 それで、寺で見たことを泣きながら話したら、 ずっと地元に住んでる友達が、真っ青になって震えながら言ったんだ。 「あの寺、今は誰も住んでないよ。だって、みんな死んだから」 聞けば、前の住職は何かの事情でノイローゼのようになって、 家族が寝ているときに包丁を持ち出して無理心中をはかり、 奥さんと子供たちを刺し殺したあとは、自分も首の動脈を切って 自殺したということだった。二年前に・・・・ 僕らは怖くなってそれぞれ走って家に帰った。 寺で見たことを親に話したけれど、あまり真剣にとりあってくれなかった。 その夜から二日続けて高熱がでて、きっと体調が悪かったからそんな幻を 見たんだろう、ということにされてしまった。 今でも、その寺はある。すっかり寂れて荒れ果てているが。 住職一家の供養はされているはずだということだが、 あの寺の裏手に行けば、今もぼんやりと黄色い光が見えるような気がして 大学の休みに帰省しても、僕は絶対にあそこには近寄らないようにしている。 B! LINEへ送る - Part 25, 洒落怖