洒落怖超まとめ

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古いお寺

   

884 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/02/07 21:17
僕がまだ六歳ぐらいのときの話。

それまで市街地に住んでたんだけど、小学校へあがる春に
緑の多い郊外に引っ越したんだ。
近所には田圃や畑があって、兼業農家をやってる地元の人が多い。
そんなのどかな環境の町はずれにある新興住宅に、僕ら家族は移ってきた。
慣れないこともあったけど、僕は小学校へあがってすぐに友達ができて、
二ヶ月もたった頃には、もうすっかりその町に馴染んだつもりになってた。
ある日曜日、昼ご飯を食べてから友達三人と学校の近くにある
田圃のあぜ道で、遊びがてら、おたまじゃくしをとっていた。
ビンに入れて家に持って帰って、カエルになるのを見たかったからだ。
用水路のなかに手を突っ込んでたら、いきなり小便がしたくなってきた。
僕は何匹かつかまえていたし、もう帰ってもよかったんだけど、
友達は、もっとつかまえるつもりでいた。
時刻は五時半ぐらいだったと思う。そろそろ日が暮れどきで、
空はうっすらと陰り始めていた。

885 名前:884 投稿日:03/02/07 21:19
僕は友達を置いて、ちょっと小便しにいってくると駆けだした。
家まで帰る気はなくて、そこらで適当なところを探してた。
ちょっと離れたところに、まだ行ったことのない古いお寺があって、
歩いていた道からそこに飛び込むと、トイレを探すのが面倒だったから、
寺の横手のほうにある低い木の茂みですませた。
はやく友達のところへ帰りたかったけれど、なにを間違えたのか、
僕は道とは反対の、寺の裏側へ歩いていってしまった。
間違ったとわかって引き返そうとしたとき、小さくカチャカチャと音がした。
何だろうと思って振り返ったら、暗い寺のなかからボンヤリと黄色い光が
漏れてる。そっちに行くと、雨戸と障子が開け放してあって、
ふと見れば、薄暗い60W電球を吊った下で、四人家族がご飯を食べてた。
住職らしい丸禿の男と、痩せた奥さんと、まだ小さい子供が二人、
ちゃぶ台のまわりに正座して、それぞれに茶碗を持ってる。
カチャカチャっていうのは、お箸が茶碗に当たる音だった。
その光景に、僕はなんとなく寒々しい違和感を覚えた。
誰も何も言わずに、黙々と食べながら、裏庭に立っている僕のほうを
ジッと見ているんだけど、誰もが無表情で、何も話さないんだ。
静まり返った食卓に、ただカチャカチャとお箸の音がするだけ。
僕も何も言わず、その場から立ち去ろうとした。
そしたら、奥さんが小さな声で、「あんた、どこの子?これ食べていく?」と。

886 名前:884 投稿日:03/02/07 21:25
振り向いたら、奥さんのそばにあった「おひつ」から、ご飯を茶碗に
よそってくれてる。
「はい、お食べよ」って、茶碗を出してくれたその白い腕が、
こちらへ、異様に長くニュルッと伸びてきたように感じた。
そして、そのご飯を見たとき、僕はビックリどころか、
心臓がとまりそうになった。
ご飯に色がついていて、赤飯かと一瞬思ったけど、
あきらかにそれは血だったんだ!
ご飯粒が血で真っ赤になっていたんだ!
はっと顔をあげたら、もくもくと無表情で食べている四人家族の口も
血だらけになっていて、胸などにも口からぽろぽろこぼれたご飯粒が
点々と赤くくっついている!
それでも、住職も二人の子供たちも、一様にカチャカチャ箸を動かして
血まみれのご飯を口にかき込んでいて・・・・

887 名前:884 投稿日:03/02/07 21:26
急に生臭い匂いが漂ってきて吐きそうになった。
奥さんの差し出している茶碗に背を向けると、走り出した。
あまりの怖さに膝ががくがくしていたけど、なんとかかんとか
友達のところまで戻れた。
それで、寺で見たことを泣きながら話したら、
ずっと地元に住んでる友達が、真っ青になって震えながら言ったんだ。
「あの寺、今は誰も住んでないよ。だって、みんな死んだから」
聞けば、前の住職は何かの事情でノイローゼのようになって、
家族が寝ているときに包丁を持ち出して無理心中をはかり、
奥さんと子供たちを刺し殺したあとは、自分も首の動脈を切って
自殺したということだった。二年前に・・・・

僕らは怖くなってそれぞれ走って家に帰った。
寺で見たことを親に話したけれど、あまり真剣にとりあってくれなかった。
その夜から二日続けて高熱がでて、きっと体調が悪かったからそんな幻を
見たんだろう、ということにされてしまった。

今でも、その寺はある。すっかり寂れて荒れ果てているが。
住職一家の供養はされているはずだということだが、
あの寺の裏手に行けば、今もぼんやりと黄色い光が見えるような気がして
大学の休みに帰省しても、僕は絶対にあそこには近寄らないようにしている。

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