洒落怖超まとめ

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和服の少女

   

678サルベージマン ◆Nwws3JYmzE sage 2007/05/15(火) 20:15:18 ID:NoiKasvK0

162からの救済コピペ4-1

456 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 18:32:47 ID:ovlR3cyf0
 霊体験という訳ではないのだが。まとめを見て面白そうだったので書き込ませてもらいます。ちょっと長くなりそうです
私は十歳のころから霊らしき物を見ることが出来た。
 過去形にしたのは、最近になって酷く曖昧になってしまったからである。
 頭のない犬。人間のような表情をして笑うネコ。能面のような顔をしながら、風呂場の天井でこちらを見下ろしている髪の長い女。
 そして、今私がパソコンを触っている部屋で走り回っている和服の少女。
 よくテレビや本で見る「幽霊」や「おばけ」そのものだった。
 しかし、それが本当に幽霊であったかというと、少し疑わしい。 今になって思えば、麻薬に嵌った人が見るような幻覚のようなものだったかもしれない。

 では本題に移ろうと思う。
 私が丁度、十歳の誕生日を迎える前の日のことである。学校ではある噂話が飛び交っていた。
 その内容は「霊を見る方法」当時、田舎の学校だったため、私のクラスは八人しか居なかった。 当然、そういう噂話は嫌でも私の耳にも飛び込んできた。
 そして、その日の放課後。私の親友のT君が「一緒にやってみぃへん?」と話を持ちかけてきたのだ。
 私は出された宿題のことを気にしながらも、渋々頷いた。今にして思うと、これが私にとっての最初の間違えだったのだろう。

679サルベージマン ◆Nwws3JYmzE sage 2007/05/15(火) 20:16:20 ID:NoiKasvK0

162からの救済コピペ4-2

457 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 18:34:36 ID:ovlR3cyf0
 霊を見る方法を簡単に説明すると
まず笹餅を腰に下げ河原に行って、黄金色になって首を垂れているススキをうちの村に伝わる童歌を歌いながら、一本ずつ折っていくのである。
手が一杯になったら、次にその束を川の水に浸し、それで注連縄を作り、山を登り奉ってある地蔵の前に置く。という、簡素なもの。
 そして、それを実行するのは九歳までの子供という縛りも付け加えられていた。

T君は二月ほど前に誕生日は終えているため、これをすることは出来ない。
 仕方がないので、T君に実家の笹餅を拝借して貰い、私が一人で笹を折ることにした。
 とは言え、石の上で待ってくれているT君が何度も声をかけてくれていたので、不安感はそれほど無かった。
「もし、本当にユーレイ見えたら皆に自慢しよか」
「俺もユーレイ見えたりしたら、どうしよ」
 まあ、そんな他愛の無い話をしているうちに、いつの間にか手いっぱいになっていた。
 次は水に浸して注連縄なのだが、祖父には少ししか教えて貰っていなかったため、不恰好なものになってしまった。
「まあ、ええんと違う? どうせ、噂やし」
 そういって笑うT君の顔は、夕焼けで真っ赤に染まって不気味だったのを今でも覚えている。
 だが、私も流石に夜になるまでには、家に帰りたかった。というより、叱られるのが怖かったのだろう。

680サルベージマン ◆Nwws3JYmzE sage 2007/05/15(火) 20:17:21 ID:NoiKasvK0

162からの救済コピペ4-3

458 名前:本当にあった怖い名無し[sage] 投稿日:2007/05/14(月) 18:35:19 ID:ovlR3cyf0
 私はT君と別れ、急いで件の山に登り、そこに奉ってある地蔵が奉ってある祠の前に、不恰好な注連縄を置いた。
 何処からか、聞いたことの無い歌が聞こえ、そちらに足を進めた。

ここで私の記憶は途切れ、次に目を覚ましたときには、病院の個室だった。
 後で知った話では、その後に私の両親が夜になっても帰ってこない私のことが気になり、警察に電話をしたそうだ。
 そして、五日後になってようやく、その山の中の洞窟の中で眠っている私を見つけたらしい。
 だが、その時に父が暴れた私に腕を噛まれ、凄い力で肉を裂かれたという。
 ちなみにわたしの持っていた注連縄も無く、腰に下げていた笹餅も無くなっていたらしい。

ところで、私がひとつ気になっていることがある。T君の事だ。
 後日、T君の話を聞いたところ、彼はその日は休んでいて一日中、家で寝ていたらしい。
 他のクラスメートも口をそろえて、そう言っていた。では、あの日のT君はいったい誰だったのだろう?
 私の祖母が言うには、ススキで作った注連縄を身に付けるというのは、山の神様に身を捧げるときの儀式だという。
 私が聞いた歌は“山ヌシ”が宴をするときの歌で、あの時のT君は山の神様の使いなのだ、と。 きっと、お前と波長があったのだろうと、そういって微笑んだ。
今でも、その歌のメロディーだけは覚えているため、よく口ずさんでいたりするのだが、不思議と心が安らぐ。

ともあれ、あの日から私の目には、徐々に奇妙なものが映るようになった。
 その第一号が、和服の少女である。彼女には何度も助けられたり、奇跡的な腐れ縁を貰ったのだが、それはまた別の機会に話したい。

684サルベージマン ◆Nwws3JYmzE sage 2007/05/15(火) 20:59:21 ID:veuD3Fns0

162からの救済コピペ4-4

504 名前:456[sage] 投稿日:2007/05/15(火) 18:38:08 ID:rN6o8tgq0
 ようやく、書き終えたので、和服の少女の話を投下しようと思う。


 あのあと、私は目を覚ましてから、一週間の間は病院のベッドで寝ていた。
 脳にも損傷は無いらしく、すぐに退院できるくらいだったらしいが、父の腕から私を引き離す際に少し乱暴に剥がしてしまったらしく、所々骨にひびが入っていたそうだ。
 少女と出会ったのは、私が目を覚ましてから3日目か4日目の夜。ちょうど私の村で、山の神の祭りが始まる時期だったと思う。
 私は母が買ってきてくれた、漫画雑誌を読みながらベッドに横になっていた。

パチン

 そんな音と同時に、部屋が暗くなった。その時は、ただ看護婦さんが電気を消しに来ただけかなー。 などと思っていたのだが、少しおかしい。
 普段なら、10時頃が消灯時間だというのに、今はまだ8時にもなっていないはずだ。
 私は少し怖くなり、ナースコールに手を伸ばそうとしたのだが、腕が動かない。
 冷たい感触が、手首の周りにこびりついた。それは確かに、母に手を握られたときのような感触だった。 氷のような冷たさを覗けば、であるが。
 そして、また「パチン」という音が聞こえ、次は体を思いっきり突き飛ばされたように、ベッドの上から転げ落ちた。
 しかし、不思議と痛みは無かった。痛めているはずの膝も、腕も何の問題も無く動かすことが出来た。
 とはいえ、あんな怖い思いをした直後で、そんなことに疑問を抱いている暇も無い。
 私は、ふらふらとした足取りで、部屋のドアを開けた。

 パチン……パチンパチン

 音は不規則なリズムで、私の後を追うように近づいてくる。
 私は必死になって、震える足で真っ暗な廊下を必死に走り、ようやくトイレから漏れる光が目に入り、安堵の溜息をついた

685サルベージマン ◆Nwws3JYmzE sage 2007/05/15(火) 21:00:53 ID:veuD3Fns0

162からの救済コピペ4-5

505 名前:456[sage] 投稿日:2007/05/15(火) 18:39:35 ID:rN6o8tgq0
 あの音も聞こえない。私は泣きそうになるのを堪え、トイレのほうへ近づいた。
 だが、トイレには一向に近づけない。それどころか、遠ざかっていくかのようにも思える。
私はふと、周りの音が聞こえにくいことに気がついた。思わず耳に当てた手にぬるっとした、いやな感触が伝わった。
 腰が抜けそうになり、泣き叫びそうになったが、その感触はすぐに無くなり、あの音が私のほうから遠ざかっていく。
 普通の思考を持った人間なら、そのままナースステーションに転がり込んで助けを呼ぶのだろうが、どうも私は気でも触れていたのか、その音を追いかけていたのである。
 まるで、友達と鬼ごっこでもするかのように。

 音を追いかけているうちに、いつの間にか私の中の恐怖心は消えていた。 私は、その鬼ごっこが今まで生きてきた中で、一番楽しい時間だったのだと思う。
 時計を気にすることなく、先生や親に怒られもしない。とても、楽しい時間だった。
 何時間経っただろうか、私はその音をようやく捕まえた。あの冷たい感覚が手を伝ってくるが、今度は気にもならなかった。
 そこで私の記憶がすっぽりと抜け落ちている。

 目が覚めたときには、私は病院の外の庭で寝ていた。
 医者は「どうも、君は夢遊病か記憶喪失のケがあるのかな」と目を細めて笑っていた。
 きっと、あの医者は見えていなかったのだろう。その部屋の周りを、青い鞠をつきながら遊びまわる少女の姿を。
 それから、毎夜というくらい私が寝て数十分すると、胸の上にネコくらいの重さのものが圧し掛かってくるのである。

 綺麗な空色と、桜色が散りばめられた着物を着ながら、パチンパチンと両手を鳴らして。

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