洒落怖超まとめ

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宝探し

   

685 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 17:55:50 ID:3SXxK8bF
一週間も前かな? そんなに前じゃなかったかも。
兎に角暑い日だったなぁ。蝉がミンミン鳴いていて、
木陰にいてもとても暑かったんだ。

「なぁ、たっくん。実は良いとこ見つけたんだ」

亮は垂れたアイスがついた指をしゃぶりながら僕に言った。

「いいとこ?」

「そっ、いいとこ。 でもさ、一人じゃ駄目なんだってさ」

亮はアイスのバーに当たりと書いてなかった事に腹を立てたのか、
バーをぼきりと折ると、思いっきり投げつけた。

「なんかさ、スッゴイお宝があるらしいんだよ。
 でもさ、絶対に二人じゃないと手に入らないんだって」

亮は僕の目を下から覗いた。
僕に一緒に行って欲しいって言っているんだ。

僕と亮はどんな時も、二人一緒だ。
喧嘩したって、次の日には笑って仲直りできるんだ。

686 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 17:56:21 ID:3SXxK8bF
「んじゃさ、僕と行こうよ」
そう言うと、亮は満面の笑みを浮かべた。

「もっちろんさ。だからたっくんにしか言ってないもん」

「よし、どうせ今日は面白いテレビもないからさ、これから行こうよ」

ホントは五時から始まるアニメが見たかったけど、
クラスメイトの誰かがきっとビデオにとっているはずだ。
それよりもこの好奇心そそられる冒険の事で頭が一杯だった。

「南の山の麓の森あるじゃん? そこにさ、古い洋館があるんだよ」

亮の詳しい説明によると、森の大分奥まった所に、誰も住んでいない
洋館があるらしい。南の山って言うのは、松茸だか何かが取れるとかで、
一般の人は立入禁止になってるんだ。
だからここら辺の人は絶対に入っちゃいけないことになってる。

「でもさぁ…。南の山に入ってもいいのかなぁ?」

「大丈夫、大丈夫。怒られたら俺の所為にしていいから」
亮は良くこの台詞を使う。
でも、実際亮の所為にしても、結局僕も怒られちゃうんだ。

「でも…」

「ぐずぐずしてたら、他の誰かにお宝取られちゃうよ!!」
亮がだだをこねだしたら、もう少しで怒り出すサインだ。

「わかったよ、行くよ、行く。二人じゃないと駄目なんだし」

687 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 17:56:52 ID:3SXxK8bF
森はひんやりとしていて、今日みたいな日には心地よかった。
迷いそうでちょっと心配だったけど、亮はズンズン先へと進んでいった。
亮がいるから安心だ。亮は野生児って感じだもんな。
亮は途中何度かポケットから紙屑を出すと、道ばたに落としていった。

「ねぇ、何してるの?」

「これはね、帰りに迷ったりしないように標し残してるんだよ」

なるほど。これなら暗くなってもこれを辿れば迷わないな。

一時間も歩いただろうか。開けた所に出た。
目の前には何とも言えない雰囲気の洋館がそびえていた。

「たっくん…、別に無理して入らなくてもいいんだぜ?」

ここまで来て何を言ってるんだろうと思ったよ。
亮は腕っ節は強いし、青大将だって素手で捕まえられるけど、
幽霊とかお化け屋敷とか、そう言うのは大の苦手なんだ。
僕はそう言うのは全然平気。むしろ大好きさ。

「なんだよ、亮ちゃん。怖くなったのか?」

ちょっとバカにした様に言うと、亮はむきになって怒りだした。

「何言ってるんだよ!! 怖いもんか!! 行くぞ…」

大きな玄関前に行くと、ドアになにやら書かれている事に気づいた。

688 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 17:57:27 ID:3SXxK8bF
『二人ずつお入り下さい』

本当に二人で入らないと駄目なんだ。
実際こんな所があるなんて、ちょっと信じられない感じだった。
誰が、何のためにここを用意したのか判らないけれど、
入ってはいけない所で無いのは判った。

「よしっ…行くぞ、たっくん」
「うん」

ぎぃぃ。きしむような嫌な音を立ててドアが開いた。
中は森の中以上にひんやりとしていて、寒気すら感じた。
なんとも言えない埃とカビの匂いが鼻をついた。
流石の僕もちょっと帰りたくなった。

「暗いね…ホントにお宝あるのかなぁ?」

「た、たっくん、怖いんじゃないのか?」

今度は僕がバカにされた様な気がした。
でも、本当は亮の方が怖がっているって事はわかっていた。

「大丈夫だよ、亮ちゃんと一緒だからね」
いつもの亮に戻ってくれないと、僕も不安になってくる。
僕は亮に頼ってる様に感じさせて、亮の気持ちを盛り上げた。
それはとても上手くいった様だった。

「そうだよね。二人一緒だもんね」
亮が力強く歩き出した。

691 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:00:07 ID:3SXxK8bF
館の中は本当に薄気味悪かった。
至る所に蜘蛛の巣が張っていて、それにかかる度に
気持ち悪くて悲鳴をあげたくなった。
でも、悲鳴をあげてしまえば、二人とも挫けてしまいそうだと思い、
精一杯我慢したんだ。亮も多分同じだったと思う。

所々の壁に掛けてある絵も、何だかよくわからない絵で、
紫や、赤や黒が混じったような、気持ちの悪い物だった。
僕等は出来るだけそれが目に入らないように前だけ向いて歩いた。

途中のドアを何度か開けたけど、何も見つからなかった。
ほとんどの部屋はがらんどうで、塵と蜘蛛の巣しかなかった。
そろそろ諦め様かとしていた時、その部屋についた。

これまでの部屋と違い、そこには色んな物が置いてあった。
本棚、机、ベッド。壁には世界地図が掛かっていた。

「ねぇ、亮ちゃん。この部屋、何かあるかもよ」
興奮した口調で僕は言った。

「よしっ、お宝見つけよう!! 手分けして探そうぜ」

亮は机。僕は本棚を探すことにした。
ホントはベッドの上に乗ってる物を調べろっていわれたけど、
本棚の方が何かありそうだからと断った。
でも、ホントは違うんだ。ベッドの上のものは何か恐ろしげで
近づきたく無かったんだ。

692 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:00:39 ID:3SXxK8bF
二人とも黙々と調べたけど、大した物は見つからなかった。
本棚に一杯ある本も、なんだか判らない言葉で書いてあって、
大人達は喜びそうだけど、僕等にとっては何の価値も無かった。

結局部屋中調べたけど、何も見つからなかった。
残すはベッドだけだった。亮も嫌な雰囲気がしてるのは気づいてる様だった。

ベットの上にかかったピカピカ光った青のベルベット。
それは奇妙に盛り上がっていて、その下に何かあるのは判っていた。

「イチニのサンで、この布を引っ張ろう」 と亮が言った。

「うん。僕こっち端持つから、亮ちゃんそっち持って」

僕は逃げ出す準備をしていた。その下に何があるか、大体予想はついていた。

イチニのサン。

その瞬間、力一杯布を引くのと同時に、目を堅くつぶり顔を背けた。
亮の悲鳴が聞こえた。僕は目をつぶったまま、ドアまで駆けていた。

パニックになった亮がわぁわぁと叫ぶ。
ふと、その叫び声が止まる。次の瞬間…

「宝だ!! 宝を見つけたぞっ!!」

しまった!! 臆病な所を見せたばっかりに、
亮に先にお宝を見つけられてしまった。
僕は勇気を振り絞ると、ベッドへと目を向けた。

693 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:01:15 ID:3SXxK8bF
想像した通り、ベッドの上には死体が転がっていた。
しかし、思ったより大した事はなかったんだ。
前に何かの本でみた、ミイラみたいだった。
それはどうやら僕等と同じ年くらいの子供の様だった。
その首にはきらきらと金色に輝き、目の部分に、真っ赤な宝石が埋め込まれた
鷲の形のペンダントがかかっていた。

「た、たっくん。あのペンダント取ってよ」

亮が震えた声で言った。亮はこう言うのが苦手だからなぁ。
でも、僕だってそんなの嫌だよ。

「亮ちゃんが見つけたんだろ? 亮ちゃん取れよ」

「ふ、二人で協力しなきゃ駄目なんだよ」

確か、二人で協力しないと宝は取れないって話だったな。
でも、これなら別に一人で取っても取れるじゃないか。
よぉし、それなら僕が取って、僕の物にすればいいんだ。

僕はおもむろに手を伸ばし、鷲のペンダントを掴んだ。
弾みで死体の少年がこちらを向いた。
心臓が口から飛び出しそうになった。
でも、震える手で掴んだ宝は決して離さなかった。
慎重に、慎重に、死体に触れないようにそれをはぎ取った。

「やった!! やったぞ!! お宝ゲットだぜっ!!」

手にした途端、さっきの怖さなんて吹き飛んで嬉しさ一杯になった。
高々とペンダントを掲げ、跳ね回った。
まるで、僕一人しか居ないかの様に、有頂天になってしまった。

694 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:02:01 ID:3SXxK8bF
そんな僕を見て、亮が怒りを顕わにした。

「俺が最初に見つけたんだ、俺によこせっ!!」

「そんなのおかしいよ!! 実際取ったのは僕じゃないかっ!!」

僕は亮の理不尽な言い分に心底頭にきたんだ。
だってそうでしょ? アイツは口先ばっかりでなんにもしなかったんだ。
びびって何にも出来なかったくせに、美味しいとこだけ持っていくつもりなんだ。

「実際取ったからってなんだよ…。大体ここ行こうって言ったのも俺だぞ」

普段大人しい僕が、怒鳴ったりしたもんで亮はビックリした様子だった。
でも、腕っ節に自信がある亮は、僕相手には引こうとしなかった。
あんなに怖がっていたくせにだ。

「よこせよっ!!」

亮は僕の手に握られたペンダントをむしり取ろうと力一杯引っ張った。
嫌だと口では言わずに、僕も精一杯力を入れた。
その時亮の左手が弧を描いた。光の筋がパッと描かれたと思うと
僕の腕から力が抜けていた。 次の瞬間、鋭い痛みが襲ってきた。
亮は隠し持っていたカッターナイフで僕の腕を斬りつけたんだ。

「痛っ!! 酷いよ…酷いよ亮ちゃん」

亮が呆然と僕を見つめていた。

「ご、ごめん…。本気じゃなかったんだよ…」

695 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:03:46 ID:3SXxK8bF
亮の目は何処か怯えている様だった。
どうやらチョット脅かしてやろうってくらいの気持ちだったらしい。

「でも、たっくんが悪いんだぞ。素直に渡さないからっ!!」

亮は僕の所為にした。僕は全然悪くないのに。
悲しかったけど、泣かなかった。泣いたら負けだから。
痛くて、悔しくて、情けなかった。

でも、この時ペンダントなんてどうでもよくなったんだ。
亮は僕を傷つけてまでこれを欲しがってる。
僕はこんな物の為に人を傷つける気なんてさらさらない。
おかしいのは亮だけど、こんな物要らない。
僕が辛い思いをしたのも、怪我したのもペンダントの所為だもの。

「いいよ…そんなに欲しいんだったら、そんな物くれてやるよ…」

僕は釈然としない所はあったものの、潔くそう言った。

「ほ、ホント? ホントにホント?」

亮は少しビックリしてる様だった。
失敗しただった知れないな。亮が、自分が悪いと思ってる今なら、
何とか巧く僕の物に出来たかもしれなかった。

「いいよっ!! 何回も言わせないでよ!!」
「あ…ありがとう…」

亮はばつの悪そうな顔で僕の目を上目遣いで見ていた。

「その代わり…。今度何か見つけたら僕にくれよ」
「うんっ、うんっ、約束するよっ!!」

696 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:04:16 ID:3SXxK8bF
亮がにっこりと笑った。
こんな約束、コイツは明日になったら忘れるんだ。
だけど僕は忘れない。そしたらその時言ってやるんだ。
あの時、ペンダントを譲ったじゃないかって。
僕に怪我させた事をみんなにばらしてやるぞって。

その後、また奥へと向かった。
亮は上機嫌だった。途中何度も振り返っては、
僕に良い奴だの、今度おごってくれるだのと、機嫌を取っていた。
僕はそんな亮の態度をまるで人ごとの様に流す。
僕のそんな態度に気づかない亮が鬱陶しく思えた。

あんな事があった後だから、何もかも色あせて見えた。
蜘蛛の巣が顔にかかってもなんて事はないし、
壁に掛かった絵だって、別に動き出す訳でもない、ただの絵だ。

何もかもつまらなくなって、今はただ帰りたかった。
早く帰ってテレビが見たいなぁ。
今日の夕ご飯はなんだろうなぁ。
適当に亮の後をついて行くだけ。

と、前を行く亮が大声を上げた。

「おぉいっ!! あった、あったぞ、お宝!!」

飛び込んできた声に、急に現実に戻された。
現金なもんだよね。でも、お宝って聞けば機嫌も治るよ。

パッと駆け出し、亮に追いつく。

697 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:05:38 ID:3SXxK8bF
「あ、駄目だよ!! 気をつけて!!」

ふと足下を見ると、そこにはぽっかりと大穴が開いていた。
お宝はその奥の壁に掛けてあった。

鈍い光を放つ、赤銅色の蛙のペンダント。
目の部分には黒光りする石がはめ込まれていた。
黒曜石とか言うやつだろうか。

「…よかったじゃんか。ほら、お宝見つけたよ」

どう考えても、鷲と蛙じゃ釣り合いがとれそうもない。
亮もそれは判っている様だった。
鷲はちゃっかり自分の物にして、僕には蛙でお茶を濁そうって事か。

「うん…でも…」

でも、あんな蛙なんか入らない。全然ピカピカじゃないし、
目だって赤い宝石じゃないし、それに蛙だ。
僕は鷲が欲しいんだ。

698 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:06:09 ID:3SXxK8bF
「そ、そっか、あれを取るのは骨が折れそうだもんね」

亮はあからさまに話を逸らそうとしてる。

蛙がかかっている壁には、下から梯子がかかっている。
穴は大きくて、どう考えても、底におりない限りは梯子に手は掛からない様だ。
しかし、ご丁寧に穴の手前に太いロープが置いてあった。
これで穴の底におりて、あちらの梯子を登れって事だろう。

「これは…協力しないと取れないよね」

亮が不安げに僕の顔を見る。

「そうだね」

その時の僕はきっと無表情だったろうな。
協力? さっき僕に斬りつけたばっかりなのに?

「僕がロープをこっちで引っ張るから、たっくん取ってきなよ」

絶対そう言うと思ったね。
自分で降りるとは、絶対言わないと思っていた。
何時も嫌な事は僕にやらせようとするんだよな。

「うん、わかったよ…。しっかり持っててよ、亮ちゃん」

僕はそう言うと亮の顔を正面から見据えた。

699 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:06:43 ID:3SXxK8bF
「もちろんさ!! たっくんがお宝手にする番だもん」

亮がにっこりと笑った。

「ねぇ…お守りの代わりに、僕に鷲のペンダント貸してよ」

「え…い、いいけど…蛙取ったらちゃんと返してね?」

僕は鷲のペンダントを首にかけた。
それだけで勇気がわいてきて、何でも出来るように思えた。

簡単だと思った。亮の背中を押せばそれでお終いだ。

「うわぁ、高ぇ…下が全然見えないよ。ホラ、たっくんも…」

亮がこっちを振り返ろうとした時、足を滑らせた。
そう、滑らせたんだ。 僕は何もしていない。
ちょっとぶつかったかもしれないけど、わざとじゃない。
ちょっと、脅かしてやろうと思っただけだ。
亮がカッターナイフで僕を傷つけたように。

鈍い音が穴のそこで響いた。
亮の声は聞こえては来なかった。

兎に角早くここは離れてしまいたい。
ここを出て、早く何もかも忘れてしまいたい。

でも、このペンダントを見て、思い出さないでいられるだろうか?
暗い気持ちを見透かした様に、鷲の目が僕を見ていた。
そんな訳ないのに、ペンダントが僕を見る訳なんてないのに。
僕は恐ろしい想像が膨らまないようにと、息が切れる程思い切り走った。
出口へ。早く出口へ行かなきゃ。

700 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:07:19 ID:3SXxK8bF
出口だ!! 必死に走り、途中で何度も転んだけど、
奥へと辿り着く時間の半分もかからずに出口までやって来れた。

やっと出られる。僕は手をかけ、力一杯そのドアを開こうとした。
その時の僕の目は血走っていたと思う。
だけど、どんなに力を込めてもそのドアが開くことは無かった。
どうやら閉じこめられてしまったらしい。

「どうしよう、亮ちゃ…」

言いかけた時、僕には頼れる相棒がいないのだと思いだした。
一人で何とかしなくては。アイツの事は忘れて…。
何度も蹴ったり、体当たりをしたり、叫んだりしてみた。
だけど、結局ドアは開かなかった。
何も考える事が出来ず、ただただ懺悔するより他なかった。

ごめんなさい、ごめんなさい、亮ちゃん。
やっぱり戻ってきてよ。こんなペンダントなんてあげるから。
神様、どうかこの僕を許してください。
そして、亮ちゃんを戻してください。
良い子になります、ちゃんと勉強もします。
ペンダントも亮ちゃんにあげます。
僕はドアに手をかけたまま、泣きながら崩れ堕ちた。

701 本当にあった怖い名無し sage 04/11/08 18:07:49 ID:3SXxK8bF
その時だった。ドアにかけた手が滑り落ちるうちに、
妙な窪みにに触れたのだった。
目を凝らし、その窪みを眺めると、何処かで見た形にそっくりだった。
そう。それは今僕が首にかけている、鷲のペンダントの形だった。

そうかっ!! ここにペンダントをはめ込めば良いんだ!!
神様が僕を許してくれたんだ。
ペンダントをここに置いて行けば、許してくれるんだ。
亮ちゃん…ペンダントはここに置いていくよ…。
だから、亮ちゃんも許してね。

僕はペンダントをその窪みに押し当てた。
カチリと音がした。鍵が外れたんだ。
今度こそ家に帰れるんだ。勢い良く僕はドアを開けた。

そのドアの先、僕の目の前には…ドアがあった。
愕然とした僕の目に飛び込んだのは、蛙の形をした窪みだった。

鷲と蛙。二つが揃っていないと、外には出れないんだ。
でも、蛙のペンダントはもう手に入らない。
僕一人しかいないから。

ペンダントは二つで一つ。友情の証だったんだ。

あの、鷲のペンダントを首にかけた少年は僕だった。
愚かにも、親友を裏切り、ここで息絶える事になった僕だったんだ。

僕は次にくる誰かが、無事に出られます様にと祈り、
ドアから鷲のペンダントを取ると首にかけたんだ。

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