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旨いトンカツ屋

   

75 名前:2/2 投稿日:03/11/23 20:36

ある青年が、K県に行った時のこと。

空腹になったので、一軒のトンカツ屋に入った。
夫婦者でやっているらしい、小さく古びた店だった。
奥の座敷は住まいになっているようで、
子供がテレビを見ている姿がチラリと見える。
夫も妻も、無愛想で心持顔色が悪い。他に客はいなかった。
しかしここのトンカツ、食ってみるとものすごく旨い。
あっという間平らげ、青年は満足した。

会計を済ませ、帰り際。店主が『来年も、またどうぞ』と。
変わった挨拶もあるものだ、と青年は思ったが、
トンカツは本当に旨かったので、また機会があったら是非立ち寄ろう、
と思い、店を後にした。

それから一年…

76 名前:1/2 投稿日:03/11/23 20:37

再びK県に赴いた青年は、あのトンカツ屋に行ってみることにした。
しかし、探せども探せども店は見つからない。
おかしい…住所は合ってるし、近隣の風景はそのままだし。
まさかこの一年で潰れた…とか?いやあんなに旨い店なのに。
仕方がないので、住民に聞くことにした。するとあの老人が、

「ああ、あの店ね。あそこは11年前に火事で全焼してね。
家族3人だったけど、皆焼け死んでしまって…」

そんな…青年があの店に入ったのは去年のことだ。
戸惑う青年をよそに、老人は続けた。

「毎年、火事で店が全焼した日、つまり家族の命日にだけ、
その店が開店する…って話がある。入った客も何人かいるようだが…。
あんた、去年入ったの?」

『来年も、またどうぞ』

帰り際の店主のあの変わった挨拶。
あれはつまり、来年の命日にもまた店に来いと、
そういうことだったのだろうか…。
恐慌をきたしながらも青年は、家族の命日だけは確認した。
案の定、去年青年が店に入った、その日だった…。

……その話を青年から聞いた友人は、
「そんなバカなことあるかよ。お前ホントにトンカツ食ったの?」と。
青年は答えた。
「本当に食った!あんな旨いトンカツ初めてだったし、それに子供が
奥の部屋で見てたテレビ番組、ルパン三世の曲だってことも憶えてる」

しかし青年は、しばらく考え込んでから呟いた。
「そう言えば、子供の首が無かった気がする…」

77 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/11/23 20:57>>76
すっげぇトンカツ食いたくなった。。

78 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/11/23 21:01>77
そういう感想かい!

79 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/11/23 21:11

> 「そう言えば、子供の首が無かった気がする…」

首が無かった事がうろ覚えなのかよ...なんで見てたって思ったんだよ...でも話はなかなか!

85 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/11/23 22:57

>>79
> 「そう言えば、子供の首が無かった気がする…」

むしろ、最後の一行でゾッとした。
一年も前に見てたはずなのに、今気づいたって感じが
何かにその青年の感覚を捻られてたっていうようで。

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